心臓
Online ISSN : 2186-3016
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42 巻, 6 号
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Open HEART
HEART's Selection(糖尿病性血管病変の基礎と臨床)
HEART's Original
臨床研究
  • —15年間の観察から
    菅野 恵, 緑川 博文, 渡邊 晃佑, 高野 隆志, 島津 勇三
    原稿種別: HEART' Original
    2010 年 42 巻 6 号 p. 725-730
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
    循環器領域疾患(外科系)における喫煙の影響を調査した.
    方法と対象:当施設における過去15年間の病歴から正確な喫煙歴が聴取され,かつ手術歴あるいは集中治療室に入院歴のある722例を抽出し検討した.喫煙と関連のない心臓弁手術症例を対象とした.
    結果:喫煙とは関連がないと思われる弁膜症での喫煙歴が50.8%であったのに対し,ほかのすべての疾患で有意に高い喫煙歴を認めた.急性大動脈解離症例においても男女ともに有意に高い喫煙歴を認めた(解離例の喫煙歴:対照群の喫煙歴;男性96.0 vs 80%:p<0.05,女性 52.9 vs 14.3%:p<0.001).
     結語:動脈硬化性疾患での喫煙の関与の高さが再認識され,さらに近年指摘されてきている急性大動脈解離と喫煙の関連も今回の検討で確認された.比較的若年発症の急性大動脈解離例は現喫煙者が多くを占めることが判明した.
臨床研究
  • 藤野 晋, 馬渕 智仁, 野路 善博, 山口 正人, 青山 隆彦
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 6 号 p. 731-740
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
    背景:薬剤溶出性ステント留置後の外科手術の危険性は十分知られていない.
    方法と結果:2004年8月から2008年8月に当院で施行した入院手術で,薬剤溶出性ステント留置後の症例32症例,40手術を対象とした.年齢は70±8歳で男性が24症例であった.全症例が日本人と在日韓国人であった.26症例がシロリムス溶出性ステント,3症例がパクリタクセル溶出性ステント,3症例で両者が使用されていた.手術は薬剤溶出性ステント留置394±301(6~1,093)日後に施行された.40手術の内訳は8手術が腹部一般外科,7手術が歯科口腔外科,6手術が冠動脈以外の血管内インターベンション治療,4手術が心臓手術,4手術が眼科手術,3手術が血管手術,そのほか8手術であった.2種抗血小板薬は低リスク群の手術においては21手術中16手術で周術期に継続投与されていたが,中リスク以上の手術では1例を除いて少なくとも5日前に両者とも中断されていた.これらの手術では抗血小板薬投与の代わりに19手術中13手術で持続ヘパリン投与が術前まで施行されていた.いずれのリスク群でも周術期の心臓関連の合併症は認めなかった.中リスク以上の手術において2手術で過剰出血のため予定外の輸血を必要とした.
    結論:今回検討した症例群は多くないが,薬剤溶出性ステント留置後の周術期の合併症は必ずしも高くないことが判明した.
Editorial Comment
臨床研究
  • 安田 英明, 今村 啓史, 後藤 孝司, 橋ノ口 由美子, 坪井 英之, 武川 博昭, 森島 逸郎, 上杉 道伯, 曽根 孝仁
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 6 号 p. 743-749
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
    左室心筋緻密化障害は,過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を形態的特徴とする稀な先天性の心筋疾患とされてきた.しかし,近年疾患概念の普及と超音波診断装置の画質向上により,成人での発見も増えてきており,それほど稀ではないことがわかってきた.当院においても2006年7月から2008年10月までに成人例だけで24例経験したので,その特徴的所見を心エコー所見を中心に検討した.発見の契機は心不全としての検査が11例.拡張型心筋症としての検査が7例.陳旧性心筋梗塞の経過観察中が2例.透析患者の心機能検査が2例.心電図異常の精査が2例であった.超音波所見は,23例で,び漫性の壁運動低下を認めた.陳旧性心筋梗塞の症例においても,梗塞部位が同定できないほど,び漫性に低下していた.左室拡張末期径は49~88mm,平均65.1±9.4mmと拡大していた.左室駆出率は15~53%,平均32.5±9.1%と低下していた.左室内径短縮率は7~28%,平均16.4±5.7%と低下していた.肉中の高さに対する緻密化層の比は0.23~0.38,平均0.316±0.041であった.左室内血栓および血栓症は,5例に認めた.BNPは57~4,146pg/mL,平均987.08±956.67pg/mLと上昇していた.
    以上,左室心筋緻密化障害成人例の肉中形成以外の特徴は,び漫性の壁運動低下,左室の拡大および収縮不全であった.
Editorial Comment
Editorial Comment
臨床研究
  • 齋藤 文子, 小島 重子, 森脇 佳美, 竹松 百合子, 長谷部 ゆかり, 中山 奈津紀, 宮下 照美, 柴山 健三
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 6 号 p. 754-761
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,ACC/AHA心不全治療ガイドライン2005の4ステージ間(ステージA~D群間)のQOL(quality of life)を健康関連QOL測定のための包括尺度であるMOS 36-Item Short-Form Health Survey SF36 v2(SF-36)を用いて評価し比較すること,各ステージのQOLと心機能マーカー(LVEF,BNP,CTR)との関連を明らかにすることを研究目的とした.今回,循環器疾患患者958名(回収率72.9%)を対象に以下の結果を得た.ACC/AHA心不全治療ガイドラインに基づいたQOLは,ステージBよりステージD群でQOLが著明に低値であること,さらに,ステージA・B群のQOLは心機能マーカーに強く影響されているが,ステージC・D群のQOLは,心機能マーカーとの関連は弱いことが認められた.
Editorial Comment
症例
  • 渋川 武志, 林 秀樹, 平岩 康之, 木下 妙子, 岩井 宏治, 前川 昭次, 菊地 克久, 今井 晋二, 松本 鉄也, 堀江 稔
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 6 号 p. 764-770
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
    心室細動 (ventricular fibrillation; VF) を発生後に自動体外式除細動器 (automated external defibrillator; AED) より救命された重症心疾患例が下肢血行障害を合併し下肢を切断したが,心臓リハビリテーションを工夫して施行したことによって家庭に退院できるまでの日常生活動作 (activities of daily living; ADL) が獲得できた2症例を報告する.
    症例1:74歳,男性.心筋虚血による心室細動 (VF) に対して,体育館に設置してあった自動体外式除細動器 (AED) が使用された.心不全に対して大動脈バルーンパンピング (IABP) が使用された.下肢の血行障害を生じて,右下腿切断を施行された.下腿装具を装着し,心臓リハビリテーションを実施しADLが向上した.致死性不整脈の再発はなく,家庭復帰した.
    症例2:16歳,男性.心筋炎によると考えられるVFの発作を繰り返した.初回のVFに対して,学校に設置してあったAEDが使用された.心不全に対して経皮的心肺補助装置 (PCPS) が使用された.下腿の血行障害による壊死を生じたため,下腿切断を施行された.下腿装具を作製し,心臓リハビリテーションを行った.VFを繰り返したため植込み型除細動器 (implantable cardioverter defibrillator; ICD) を植え込み,その後も心臓リハビリテーションを行い,家庭復帰と復学が可能となった.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 木村 義隆, 尾上 紀子, 清水 亨, 田中 光昭, 石塚 豪, 馬場 恵夫, 篠崎 毅
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 6 号 p. 774-779
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
    アナフィラキシーが冠動脈攣縮を引き起こすことはすでに知られている.われわれは,ニコランジルがアナフィラキシーと冠動脈攣縮を引き起こしたと考えられる症例を経験した.このような報告は海外も含めていまだないため,ここに報告する.
    症例は59歳,男性.2008年9月下旬,労作時胸痛とトロポニンIの上昇のため緊急冠動脈造影施行.
    しかし,ニトログリセリン冠注1分後,顔面紅潮,息苦しさ,血圧低下あり,ニトログリセリンによるアレルギー反応と考え,これを中止した.代わってニコランジルの冠注を行い,左冠動脈#6,7にステントを留置後3日間ニコランジルの持続点滴を行ったが,著変は認めなかった.10月上旬,ステント留置後の冠動脈造影施行時,ニコランジル冠注1分後,胸痛,息苦しさ,咳,顔面紅潮が出現し,収縮期血圧は58mmHgまで低下した.末梢は暖かかった.同時にV3~6で著明なST上昇と#7のステント遠位部,および,左回旋枝#13,14の90%以上の狭窄を認めた.アナフィラキシーショックを疑いエピネフリン0.2mg静注した.その後,徐々に症状は消失し,STも基線に復帰した.再度造影したところ,冠動脈攣縮も消失していた.血中IgE濃度は著明に上昇していたが,リンパ球刺激試験は陰性であった.臨床経過からニコランジルがアナフィラキシーと冠攣縮の原因として強く疑われた.血管拡張薬がI型アレルギーを介して冠動脈攣縮をきたすことがあり得る.
Editorial Comment
症例
  • 渡邊 容子, 山上 伸一郎, 増田 洋史, 大木 勇一, 代田 浩之
    原稿種別: HEART' Orijinal
    2010 年 42 巻 6 号 p. 781-786
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.2005年4月に急性心筋梗塞を発症し,左前下行枝にステント留置術を施行した.この時,胸部CT上に縦隔および右肺門部リンパ節腫大を認め,同年7月に縦隔リンパ節生検で,呼吸器系サルコイドーシスと診断された.2006年10月,労作時のめまいが出現し,運動負荷心電図で2:1房室ブロックを認めた.冠動脈造影では有意狭窄は認めなかった.房室ブロック,完全右脚ブロックの存在,心エコーでび漫性の壁肥厚,心筋シンチグラフィでの灌流異常などより心臓サルコイドーシスと診断した.電気生理学的検査におけるWenckebach型房室ブロック出現拍数(Wenckebach rate)は125/分であった.ステロイド治療開始1カ月後,労作時のめまいは消失し,運動負荷心電図で房室ブロックは認めなかった.治療後のWenckebach rateは150/分以上と改善を認めた.労作により顕在化した房室ブロックに対してステロイドが有効であった,心臓サルコイドーシスの1例を経験したので報告する.
Editorial Comment
症例
  • 布田 典子, 尾上 紀子, 池田 尚平, 田丸 貴規, 清水 亨, 田中 光昭, 石塚 豪, 馬場 恵夫, 篠崎 毅
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 6 号 p. 789-796
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.77歳時に慢性肺血栓塞栓症と診断し,ベラプロスト120µg/日とワルファリンが投与された.しかし,内服薬の自己中断後に心不全が増悪し再入院となった.入院時,NT-proBNP 5,438pg/mL,三尖弁逆流圧較差(TRPG) 63mmHg,肺高血圧機能分類class IV度,肺血管抵抗1,003dyne・秒・cm−5であった.ベラプロストとワルファリンを再開したが,NT-proBNP 2,482pg/mL,TRPG 58mmHgと肺高血圧改善効果が不十分であると判断した.ボセンタンを併用した結果,7カ月後にはNT-proBNPは943pg/mLへ,TRPGは39mmHgへ低下し,肺高血圧機能分類class II度まで改善した.本邦において,慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症に対してエンドセリン受容体拮抗薬であるボセンタンの臨床的有効性を示した報告は少ない.慢性肺血栓塞栓症による肺高血圧症に対してボセンタンが新たな選択肢となる可能性がある.
Editorial Comment
症例
  • 大石 千尋, 岩坂 潤二, 高橋 朋子, 上山 敬直, 朴 幸男, 山本 克浩, 大谷 肇, 岩坂 壽二
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 6 号 p. 798-803
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代,男性.7カ月前より全身倦怠感,8kgの体重減少を認め近医を受診.精査目的に上部・下部内視鏡検査を施行したが,特記すべき所見は認めなかった.しかし心電図上II・III・aVF・V5, 6でT波平坦化を認め精査目的に3カ月前に他院へ紹介となった.アデノシン負荷心筋シンチでは心筋虚血陰性であり,X線上心拡大や肺うっ血像などの心不全所見は認めず,そのほか異常所見は認めず退院となっていた.しかし,全身倦怠感は持続しており,うつ状態が疑われ当院心療内科に入院となった.心電図でII・III・aVF・V5, 6でT波の平坦化・全誘導で低電位化を認め当科に紹介受診となる.心精査目的の心臓超音波検査で左室心筋内にgranular sparklingを伴う著明な左室肥大を認め,心アミロイドーシスが疑われた.心筋生検の結果,心筋細胞間にアミロイド沈着を認め心アミロイドーシスと診断.尿検査でBence-Jones蛋白が検出され,多発性骨髄腫に合併したAL型アミロイドーシスが疑われた.経過で心不全が顕性化し,当科に転科となる.しかし,心不全は治療抵抗性であり,全身状態から骨髄穿刺は施行できなかった.後に行った病理解剖で骨髄に形質細胞が認められ,多発性骨髄腫に合併したAL型アミロイドーシスと診断した.今回,心不全発症から約2週間で死亡にいたっており,急速に進行した心アミロイドーシスを経験したので報告する.
Editorial Comment
Editorial Comment
症例
  • 名取 俊介, 小川 晋平, 野村 智昭, 芳賀 智顕, 羽根田 俊, ターリブ アリー, 坂本 央, 竹内 利治, 長谷部 直幸
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 6 号 p. 807-812
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.高血圧,高尿酸血症にて近医通院中だったが内服中のカルシウム拮抗薬を数日間自己中断していた.2009年3月上旬,12時30分ころから前胸部痛が出現し近医を受診した.13時ころ心電図記録中にST上昇とともに心肺停止状態となり,そばに付き添っていた元看護師の妻が心臓マッサージを開始,救急隊到着時の意識状態はJCS III-300,自発呼吸はなかった.自動体外除細動器で心室細動を確認しDC360J×1回で除細動され心拍再開後,前医に搬送された.13時20分,前医到着時は意識清明,自発呼吸も回復しており,心電図のST上昇も消失していた.冠攣縮性狭心症,致死性不整脈疑いで当院に再搬送された.硝酸薬の点滴,カルシウム拮抗薬再開で入院経過中に胸痛発作はなく不整脈も出現しなかった.内服継続下での冠動脈造影,アセチルコリン負荷試験,心室頻拍誘発試験はいずれも陰性であり,植込み型除細動器の植え込みは見送った.冠攣縮自然発作の心電図記録直後に心肺停止となり,bystander(救急現場に居合わせた人)による心肺蘇生と,救急隊による除細動の連携により合併症なく,心室細動から蘇生した稀な症例である.
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