心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
43 巻, 1 号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
Open HEART
HEART’s Selection (iPS細胞の循環器疾患への応用)
HEART’s Original
臨床研究
  • 岩谷 佳美, 加賀 勇治, 芳賀 喜裕, 荒井 剛, 山田 文夫
    2011 年 43 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    当院の冠動脈造影(coronary angiography; CAG)と経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)の年間総数は約7,000件であり, 循環器医師17名が左橈骨動脈アプローチで施行している. そのため, 術者個人の年間件数が多く, 被曝線量の増加が懸念される. そこで, 術者個人の被曝線量と件数から被曝状況を分析し, 問題点および防護対策について検討した. その結果, 個人の年間平均件数はCAG 280件, PCI 80件, 平均年間被曝線量は3.5mSvで, 被曝線量は件数に依存しなかった. 被曝線量の多かった術者は, 年間27.0mSvで, 職業被曝線量限度を超える危険性が生じた. この術者の被曝状況を分析した結果, 個人線量計を防護衣の前ポケット(布製)に入れていたため被曝したことがわかった. そこで, 正しく防護衣の内側に装着した場合の被曝線量をファントム実験で算定した結果, 被曝線量は3.7mSv/年と推定された. 術者は個人被曝線量計を正しい位置に装着する, きちんと防護用具を使用するなど, 常に被曝防護を意識し, 実践することが重要である.
Editorial Comment
症例
  • —緊急血行再建における1断面での評価
    田中 新一郎, 野田 俊之, 瀬川 知則, 岩間 眞, 皆川 太郎, 渡辺 佐知郎, 湊口 信也
    原稿種別: HEART’ Original
    2011 年 43 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    目的: 急性冠症候群におけるステント留置を行う際, ストラットより組織が浸潤するプロラプス(tissue prolapse within stent struts; TP)は, 臨床上問題点が多い. Integrated backscatter intravascular ultrasound(IB-IVUS)により, 血行再建における心筋酵素の逸脱の予測が可能とされるが, 容積の評価など時間と手間, また血栓の判別が難しいなど問題点も多い. 最近の報告で−55dBの閾値で, コレステロールと微小石灰化による関与する領域が示された. われわれは, この−55dBを閾値に加えることで, TPの予測がIB-IVUSでの1断面の評価で可能ではないかと考え検討をした.
    方法: 対象は, 当院にて急性冠症候群にてIB-IVUSを施行し, 緊急ステント留置を行った連続23例である. 手技終了時のIVUSでTPを認める群TP(+)と, 認めない群TP(−)に分けた. IB-IVUSの測定は最も狭窄の強い1断面を指定し, calcification(red), dense fibrosis(yellow), fibrosis(green)のほか, lipid poolの領域を従来のblueと−55dB以下(purple)の領域を設定, 比較した.
    結果: IB-IVUS測定部位でのプラーク面積, 面積率に差はなかった. lipid poolを示唆する領域(blue+purple)はTP(+)が有意に多く〔TP(+): 55.5+/−13.7%, TP(−): 41.4+/−16.7%, p=0.043〕, その傾向はpurpleで顕著であった(TP(+): 29.7+/−11.6%, TP(−): 18.6+/−10.6%, p=0.027). ROC曲線はpurpleとblueの比はAUC 0.78であり, カットオフ値1.1で感度55.6%, 特異度92.9%であった.
    結語: 本検討にてIB-IVUSは1断面でもTPの予測できる可能性が示唆された.
Editorial Comment
症例
  • 下窪 徹, 迫田 耕一朗
    原稿種別: HEART’ Original
    2011 年 43 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    92歳, 女性. 呼吸困難のため入院した. 心不全の診断で利尿薬, 非侵襲的陽圧換気療法(noninvasive positive pressure ventilation; NPPV)などによる治療を開始したが, 呼吸状態が悪化したため, 一時的に挿管下の人工呼吸管理を必要とした. その後, 内服薬の調整により小康状態が得られたが, 摂食障害のため, 胃瘻造設術を施行した. 心エコーでは, 壁肥厚や心尖部肥大型心筋症の所見は認められなかったが, 心電図にてストレインパターンが認められるようになった. 新たに出現した心電図上のストレインパターンは心血管リスクもしくは突然死のリスク増大との関連が報告されているが, 血中NT-proBNPは, 43,540pg/mLから5,097pg/mLへ減少し, 心不全症状は改善していた. 心電図所見と心不全マーカーや臨床経過との間に解離を生じた理由として, 治療による胸水減少などの関与が考えられた. 複数の心血管リスクを予測する因子の経過が解離した場合, 結果の解釈には注意を要する.
Editorial Comment
症例
  • 末松 保憲, 村里 嘉信, 津田 泰任, 手島 進, 中野 盛夫, 齊藤 太郎
    原稿種別: HEART’ Original
    2011 年 43 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 女性. 8年前から閉塞性肥大型心筋症(hypertrophic obstructive cardiomyopathy; HOCM) に対して内服加療中であったが, 自己判断で内服を中断したため心不全の増悪を認め入院した. 薬物加療に抵抗性で, 安静時最大左室流出路圧較差120mmHgあり経皮的心室中隔焼灼術を施行, 第1中隔枝にエタノールを計3mL注入した. 術後9時間後に心室頻拍, 完全房室ブロック出現し, 急速な右心不全が進行し心肺停止となった. 経皮的心肺補助装置・大動脈内バルーンポンプの挿入を行うも反応せず, 術後4日目に死亡した. 剖検にて梗塞範囲が心室中隔にとどまらず右室乳頭筋にまで及んでおり, 同筋の急性不全による急速な右心不全を併発したと考えられた. 同術の施行により右室乳頭筋不全をきたした報告はなく, エタノール注入量とともにその注入する分枝の解剖学的走行に十分留意する必要がある.
Editorial Comment
症例
  • 坪井 宏樹, 伊藤 一貴, 長尾 強志, 井出 雄一郎, 柚ノ原 順正, 鶴山 幸喜
    2011 年 43 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    症例は, 56歳, 男性. 特発性巨大結腸症に対して4年前に上行および横行結腸を切除されている. 2カ月前より眼瞼や下腿の浮腫, 5日前より安静時呼吸困難が出現し, それらが増悪するため当院を救急受診した. 冠動脈造影では, 左右冠動脈に狭窄病変は認められなかったが, 左室造影では左室は拡大し, び漫性の高度な低収縮が認められ, 左室駆出率は32%で, 拡張型心筋症が示唆された. 消化管吸収障害による頻回の下痢により脱水や電解質異常が生じた. 本症例では, 巨大結腸症による横隔膜の高度な挙上による肺の拘束障害に加え, 無呼吸症候群を合併することにより重篤な低換気を生じていたが, 非侵襲的陽圧換気療法の導入により呼吸不全は改善した. 本症例では, 消化器症状, 慢性心不全の急性増悪, II型呼吸不全など多彩な合併が認められたが, 特発性巨大結腸症に拡張型心筋症の病態を合併した病態は非常に稀と考えられ報告する.
症例
  • 斧田 尚樹, 野並 有紗, 宮川 和也, 近藤 史明, 矢部 敏和, 土居 義典, 池淵 正彦, 入江 博之
    原稿種別: HEART’ Original
    2011 年 43 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    高血圧加療中の66歳, 男性. 3年前より食後15分後に始まる腹痛, 軟便とそれによる食欲低下が出現し, 2カ月半前より増悪した. 上部・下部消化管内視鏡検査など消化器系検査では原因となる異常は認めなかった. 造影CT検査および血管撮影検査所見にて, 腹腔動脈および上・下腸間膜動脈の3本の起始部完全閉塞が確認され慢性腸間膜動脈閉塞症による腸管虚血が原因と考えられ, 大動脈—総肝動脈バイパス術および大動脈—上腸間膜動脈直接吻合を施行した. その後, 腹痛および軟便は消失し食欲も回復した.
症例
  • 藤田 修一, 寺崎 文生, 寺本 邦洋, 大塚 薫, 片嶋 隆, 神裕 美子, 伊藤 隆英, 宗宮 浩一, 北浦 泰, 長門谷 克之, 井上 ...
    原稿種別: HEART’ Original
    2011 年 43 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 男性. 左冠動脈前下行枝seg.6の閉塞による急性心筋梗塞を起こした後, 重症心不全による入退院を繰り返すようになった. 内科的治療が限界となったため, 当院心臓血管外科にて左室形成術〔(septal anterior ventricular exclusion; SAVE)手術〕, 僧帽弁形成術, 三尖弁形成術が施行された. 術後の経過は順調であり, 利尿薬, 強心薬などの内服による外来通院が可能となった. しかし, 術後6カ月で再度心不全症状が増悪, 利尿薬, カテコラミンなどによる加療を行ったが, 十分な尿量が得られず, 週3回の体外限局濾過法(extracorporeal ultrafiltration method; ECUM)を開始した. その後, 肺うっ血などの心不全症状は改善し, 強心薬を漸減, 内服薬へと切り替えることができた. しかし, ECUM開始後も低心拍出量のため尿量が不十分であり, 血液維持透析を導入した. その後経過は良好で退院したが, 退院から数日後, 心室頻拍(ventricular tachycardia; VT)による心肺停止状態となり, 救急車内で電気的除細動が行われた後, 当院に搬送された. 病歴と経過より植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator; ICD)の適応であると考え, ICDの植え込みを行った. 2007年7月に内科的治療が限界となって以来, SAVE手術, 僧帽弁および三尖弁形成術, 血液透析導入, ICD植え込み術などの集学的治療により2年6カ月以上QOLを維持して, 日常生活を行っている重症慢性心不全の1例を報告する.
症例
  • 鈴木 敬麿, 幕内 晴朗, 小林 俊也, 小野 裕國, 永田 徳一郎, 安藤 敬, 村上 浩, 近田 正英, 永渕 裕子, 尾崎 承一
    原稿種別: HEART’ Original
    2011 年 43 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    症例は78歳, 女性. 発熱, 貧血, 著しい体重減少および労作時息切れにて入院. 心エコー上, 2尖弁による大動脈弁狭窄症のほか, 僧帽弁前尖に疣贅のような索状組織を認めたため, 感染性心内膜炎疑いで長期抗生物質治療を続けたが, C反応性蛋白(C-reactive protein; CRP)は陰性化しなかった. 第112病日, 大動脈弁置換術を施行. 心臓は心膜と全周性に癒着し, 僧帽弁の索状組織は疣贅ではなく, 断裂した僧帽弁腱索の一部であった. 上行大動脈は, 拡大(最大短径48mm)かつ壁が全体的に肥厚しており, さらに後壁の一部は菲薄化していた. 上行大動脈壁の病理検査にて巨細胞性動脈炎と診断された. 術後にステロイド療法を開始したところ, 速やかに炎症反応は陰性化し, 術後35日目に軽快退院となった. 典型的な症状を呈さない巨細胞性動脈炎の診断は病理検査が決め手となるが, 特に大型血管炎では生検そのものが困難なため, 今回のように診断に難渋する場合が少なくない. 今後, 生検しないでも効率的に診断できるような新たな画像診断の発展が待たれる.
症例
  • 竜 美幸, 飯塚 卓夫, 中神 隆弘, 杉山 祐公, 片柳 智之, 藤井 毅郎, 徳弘 圭一, 野池 博文
    原稿種別: HEART’ Original
    2011 年 43 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    症例は, 生来健康な30歳, 女性. 背部痛, 呼吸困難, 発熱を主訴に来院. 血圧83/53mmHg, 脈拍115/分, 体温37.7°C. 採血では白血球25,530/µL, CRP 33.0mg/dLと著明な炎症反応の上昇を認めた. 心電図上, I, II, III, aVF, V2~6誘導での広範なST上昇, 胸部X線では心胸郭比は62%, 胸部CTで多量の心液の貯留を認めた. 心臓超音波検査では全周性に, やや輝度の高い心液の貯留がみられ, 細菌性心膜炎による心タンポナーデと判断し, 心膜開窓術を施行した. 白黄色膿状の心液を約1,000mL吸引し, 心タンポナーデは解除され血圧の上昇を認めた. 血液培養および心液培養からは, インフルエンザ桿菌が検出された. 術後, 心ドレナージおよび抗生物質の使用により軽快. 第25病日, 退院となった. 今回, 若年女性に発症し, 早期の外科的処置により良好な経過をたどった急性細菌性心膜炎の1例を経験したので報告する.
症例
  • 藤岡 研佐, 林 研至, 多田 隼人, 坂元 裕一郎, 坪川 俊成, 舛田 英一, 内山 勝晴, 川尻 剛照, 藤野 陽, 井野 秀一, 山 ...
    原稿種別: HEART’ Original
    2011 年 43 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    症例は76歳, 男性. 肥大型心筋症, 発作性心房細動と診断され, 近医で発作性心房細動に対してシベンゾリン150mg/日を投与されていた. 某日, 全身脱力感が出現し, 座位不能となったため前医に救急搬送されたが, 完全左脚ブロック型心電図を呈したショック状態であり, 当院へ転院搬送となった. 救急車内にて心肺停止となり, 心肺蘇生が開始された. 当院到着時は無脈性電気活動を呈しており, 心肺蘇生継続により心拍再開, その直後の心電図で完全左脚ブロックとQT・QTc時間の延長, 心エコーで著明な左室内非同期運動が認められ, 低血圧が遷延した. 来院時のシベンゾリン血漿中濃度は1,466ng/mLと中毒域であったが, 薬剤中止による血漿中濃度低下とともに次第にQRS幅, QT・QTc時間は短縮した. また, 心エコー上の左室内非同期運動は改善し, 血圧の正常化が得られた. シベンゾリン中毒により心肺停止にいたったものと考えられ, 蘇生後の経過を観察し得た症例として興味深い.
Editorial Comment
Meet the History
  • —北村惣一郎先生に聞く(1)
    北村 惣一郎, 落 雅美
    原稿種別: Meet the History
    2011 年 43 巻 1 号 p. 95-104
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/09/20
    ジャーナル フリー
    わが国の心臓外科のパイオニアであり, 川崎病という日本で発見された冠動脈に影響を及ぼす重要な疾患において, 患児の外科治療を世界に先駆けて行われ, 現在までに数多くの症例を経験されていらっしゃる北村惣一郎先生. 今回は, 北村先生をゲストに, またホストには現在第一線で心臓血管外科治療を行っている落 雅美先生を迎え, 川崎病のバイパス手術を中心に, その外科治療の歴史を, さまざまなエピソードを交えてお話しいただきました.
feedback
Top