目的: 急性冠症候群におけるステント留置を行う際, ストラットより組織が浸潤するプロラプス(tissue prolapse within stent struts; TP)は, 臨床上問題点が多い. Integrated backscatter intravascular ultrasound(IB-IVUS)により, 血行再建における心筋酵素の逸脱の予測が可能とされるが, 容積の評価など時間と手間, また血栓の判別が難しいなど問題点も多い. 最近の報告で−55dBの閾値で, コレステロールと微小石灰化による関与する領域が示された. われわれは, この−55dBを閾値に加えることで, TPの予測がIB-IVUSでの1断面の評価で可能ではないかと考え検討をした.
方法: 対象は, 当院にて急性冠症候群にてIB-IVUSを施行し, 緊急ステント留置を行った連続23例である. 手技終了時のIVUSでTPを認める群TP(+)と, 認めない群TP(−)に分けた. IB-IVUSの測定は最も狭窄の強い1断面を指定し, calcification(red), dense fibrosis(yellow), fibrosis(green)のほか, lipid poolの領域を従来のblueと−55dB以下(purple)の領域を設定, 比較した.
結果: IB-IVUS測定部位でのプラーク面積, 面積率に差はなかった. lipid poolを示唆する領域(blue+purple)はTP(+)が有意に多く〔TP(+): 55.5+/−13.7%, TP(−): 41.4+/−16.7%, p=0.043〕, その傾向はpurpleで顕著であった(TP(+): 29.7+/−11.6%, TP(−): 18.6+/−10.6%, p=0.027). ROC曲線はpurpleとblueの比はAUC 0.78であり, カットオフ値1.1で感度55.6%, 特異度92.9%であった.
結語: 本検討にてIB-IVUSは1断面でもTPの予測できる可能性が示唆された.
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