一級建築士として多くの酒蔵の設計にたずさわり,さらに「幻の日本酒を飲む会」の主催者として,吟醸酒の普及に貢献した著者から,日本酒の需要開発に関する提言を寄稿いただいた。商品自体が情報伝達手段であること,飲食店での酒パーティーの開催方法など,著者独自の視点からの具体的な内容が盛り込まれている。
清酒酵母の育種方法として,変異株の取得がよく行われるが,その他の方法として交配育種がある。酵母の交配のためには,胞子を形成させて一倍体を取得しなければならないが,清酒酵母では胞子形成率・胞子発芽率がともに低いため,一倍体の取得には大変な手間がかかる。清酒酵母の低胞子形成の原因としては,以前から胞子形成の転写因子Ime1が発現しないことが知られていた。筆者らは,それに加えて,清酒酵母では減数分裂における染色体組換えに異常があり,その結果,胞子形成率と胞子発芽率が低下することを明らかにした。さらに,染色体組換え欠損の原因が,染色体の二重鎖切断を引き起こす酵素をコードするSPO11の変異であることを解明した。
本年はコロナ禍の影響からか,報告数が大幅に減少した。国内の研究報告数は継続して減少傾向にあるが,国外の研究報告数も減少傾向にあるものの基盤的な研究から応用的な研究まで万遍なく見られた。
沖縄に伝わる伝統的な古酒育成方法である「仕次ぎ」された古酒を対象とした「泡盛仕次古酒・秘蔵酒コンクール」を開催し,仕次古酒を調査した。
3回の開催により,仕次古酒170点及び仕次していない秘蔵酒101点の出品があり,QDA法を用いた品質評価により仕次古酒の香味特性を明らかにした。
仕次ぎにより「バニラ」や「甘い香味」の特性が増強される可能性と,甕貯蔵により「刺激感」が低減され「カラメル様」が付与される可能性が示唆された。
酒造好適米生産現場における玄米の長期貯蔵の影響を調査するため,酒総研で温度を変えて玄米貯蔵し現地の貯蔵試料と比較した。
強制劣化条件である30℃貯蔵では,貯蔵開始6ヶ月以降,精米特性の低下,カリウムの米粒内部への移行や粘度特性試験において粘性の上昇,吸水性の低下が確認されたのに対し,酒造好適米生産地における現地貯蔵では2年貯蔵後においても4℃,10℃貯蔵と同様に貯蔵による顕著な変化は認められなかった。4℃と10℃貯蔵や現地貯蔵を比較してもほぼ同等な結果であったことから,温度を極端に低下させることなく10~15℃程度の貯蔵温度で水分を増加させないように貯蔵できれば新米時の酒造適性をある程度維持できることが明らかとなった。
泡盛鑑評会出品酒(古酒32点及び一般酒11点)を試料としてQDA法による官能評価を行った。 古酒は一般酒と比較して,「ドライフルーツ」,「カラメル様」,「バニラ」,「甘い風味」の特性が高く,「キノコ様」の特性が低かった。
また,甕貯蔵された古酒は「カラメル様」の特性が高かった。
「刺激感」については,古酒と一般酒の間で有意差は認められず,刺激感の強弱には貯蔵期間の影響を受けにくい別の要因が関与していることが示唆された。
QDA法により,泡盛古酒と一般酒の香味の特徴の違いが明らかとなった。