目的: 本研究の目的は, これまで見解の一致をみていない血清脂質が冠動脈リモデリングの規定因子となり得るかという仮説を検証することである.
方法: 対象は, 当院において心臓カテーテル検査·治療を受けた連続200人の200冠動脈責任病変. 血管内超音波検査(intravascular ultrasound; IVUS)にて冠動脈をイメージングし, 血管断面積(external elastic membrane cross sectional area; EEM CSA), 内腔面積(Lumen CSA), 最大および最小プラーク厚を病変部と近位および遠位対照部位にて計測した. 冠動脈リモデリングの指標として, リモデリング·インデックス(remodeling index; RI); 病変部EEM CSA/〔(近位対照部位EEM CSA+遠位対照部位EEM CSA)/2〕を, また, 病変部位の偏心性の指標としてEccentricity Index(EI); 〔(最大プラーク+中膜厚)−(最小プラーク+中膜厚)〕/(最大プラーク+中膜厚)を算出した. 冠動脈リモデリングの規定因子を明らかにするためにリモデリング·インデックスを従属変数として単回帰および重回帰分析を実施した.
結果: 単回帰分析では, RIは年齢, LDLコレステロール(low density lipoprotein cholesterol; LDL-C)とは相関を示さなかったが, 急性冠症候群(acute coronary syndrome; ACS)(p<0.01), HbA
1c(p=0.03), LDL-C/HDLコレステロール(HDL-C)比(p=0.03), プラーク面積(p<0.01)とは有意な正の相関を, HDL-C(p<0.01), ACE-I/ ARB内服(p=0.03), EI(p=0.04)とは有意な負の相関を示した. 重回帰分析では, RIはプラーク面積(p<0.01), LDL-C(p=0.03)とは有意な正の相関を, また, EI(p=0.03), HDL-C(p=0.03)とは有意な負の相関を認めた.
結論: プラーク面積, 病変部の偏心性, 血清LDL-CおよびHDL-Cは冠動脈リモデリングの独立した規定因子であり, 特に, 血清脂質に関しては, LDL-C値はポジティブ·リモデリングと, HDL-C値はネガティブ·リモデリングと関連していた.
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