慢性心不全の第一選択薬として利尿薬,ACE阻害薬,ジギタリスの他にβ遮断薬が注目されている.β遮断薬の有効性の機序は単に陰性変力・変時作用による心筋酸素需要の抑制のみならず,(1)β受容体以下の細胞内情報伝達の障害(β受容体の減少,β受容体キナーゼの増加,β受容体とG蛋白の脱共役など)の改善,(2)酸化ストレスによる心筋障害(マトリックス・メタロプロテアーゼの活性化,CaATPaseの不活性化,アポトーシスの誘導など)の抑制,(3)Caホメオスタシスに関与するCa制御蛋白(SERCA,フォスファランバン,Na+/Ca2+ 交換系,筋小胞体Ca遊離チャネルなど)の変化の修復,(4) 拡張期特性の障害の是正,(5)心突然死の抑制など多面的であり,その複合効果として心機能や生命予後を改善する.これまでの大規模臨床試験の結果から,β遮断薬はそのクラス効果として有効であると考えられるが,抗酸化作用など薬剤による相違も存在する可能性がある.今後,ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬など他の抗心不全薬との併用効果や至適投与量などが詳細に検討されるであろう.
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