心臓
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34 巻, 12 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 樫田 光夫
    2002 年 34 巻 12 号 p. 941-946
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 松崎 浩史, 松元 崇, 松井 完治, 久保 俊彦, 福山 尚哉
    2002 年 34 巻 12 号 p. 947-951
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ワルファリンによる抗凝固療法を行う場合,消炎剤であるブコローム(グレラン製薬)を併用してワルファリンの抗凝固作用を増強させる方法がある.今回,我々は,ワルファリン服用量が多いためにワルファリン,ブコローム併用療法を行った10例を対象に,ブコローム開始前後のワルファリン量と凝固能の関係を調査し,ブコローム開始後のワルファリン減量のプロトコールを検討した.対象となった10例は全例弁置換術後であった.術後1カ月以内に本法を開始したのは3例で,そのうち1例にはブコローム開始直後に予想外の凝固能低下が見られた.術後1カ月以上を経過しブコロームを開始したのは7例で,外来通院例では凝固能が安定するのに数週間を要し,入院例では凝固能検査を頻回に行いつつ,ワルファリン服用量を初期維持量から漸減することで数日後には至適な凝固能に到達していた.これらの症例の遠隔期のワルファリン維持量は6例で1-1.5mg,4例で2-2.5mgであった.以上のことから,術後早期にワルファリン,ブコローム併用療法を行う場合には慎重な凝固能管理が必要であり,術後1カ月を経過してブコロームを開始する場合のワルファリン服用量は,初期維持量から数日後に1.5mgになるように漸減するのがよいと思われた.ただし,最終的なワルファリン維持量は,個々の症例で調節する必要がある.
  • 一瀬 博之, 治田 精一, 河野 浩貴, 筒井 洋, 池田 修一
    2002 年 34 巻 12 号 p. 952-957
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    原発性心アミロイドーシスは進行性の予後不良な疾患で,心不全発症からの平均予後は約6カ月との報告がある.今回我々は,原発性心アミロイドーシスの心不全に対してメルファラン・プレドニゾロン療法が有効であった症例を経験したので報告する.
    症例は74歳の男性.心不全で入院し,心エコーで左室のび漫性壁肥厚,壁運動低下と左室拡張障害を認め,心筋生検所見,血清および尿免疫電気泳動検査からIgAラムダ型の原発性心アミロイドーシスと診断した.心不全のコントロールが不良のためメルファラン・プレドニゾロン療法を施行したところ,心不全の著明な改善とドップラー心エコーで左室拡張障害の改善に認めた.メルファラン・プレドニゾロン療法が予後改善の有効であったとの報告はあるが,心不全に対する急性期の効果を検討した報告はされていない.
  • 鈴木 宏昌
    2002 年 34 巻 12 号 p. 958-962
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 拡張型心筋症か,不整脈源性右室心筋症か?
    松井 宏樹, 瀬川 郁夫, 田中 由紀子, 荒川 直志, 山崎 琢也, 堀田 一彦, 平盛 勝彦
    2002 年 34 巻 12 号 p. 963-967
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は39歳男性.心室頻拍による意識消失発作で入院.心電図はI,aVL,V5,6にQ波,II,III,V5,6に陰性T波,V1はRSr'で,加算心電図でlatepotential陽性.胸部X線で心陰影拡大(CTR61%),心エコー図で両心室拡張と左室駆出率低下および心尖部に可動性血栓を認めた.右室造影で右室拡張と肉柱形成,造影剤の流出遅延があった.超高速CTとMRIで右室自由壁は凹凸不整で,右室壁と心室中隔および左室側壁の脂肪沈着を認めた.99mテトラホスミン心筋シンチグラムで左室前壁側壁と心室中隔に欠損像を呈した.右室心筋生検では心筋細胞は肥大し,間質に線維化と著明な脂肪浸潤を認めた.左室内血栓に由来すると思われる腎動脈血栓塞栓症を併発した.心室頻拍はβ遮断薬とアミオダロン投与後は出現せず,電気生理学検査でも誘発されなかった.以上より,左室病変を伴った不整脈源性右室心筋症(ARVC)あるいは不整脈源性右室異形成(ARVD)を伴った拡張型心筋症(DCM)と考えられた.心筋症分類の問題点について若干の考察を加え,報告した.
  • 川崎 信吾, 坂谷 知彦, 肌勢 光芳, 川崎 達也, 神谷 匡昭, 杉原 洋樹
    2002 年 34 巻 12 号 p. 968-972
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は30歳女性.平成12年8月他院にて微小変化型ネフローゼ症候群と診断され,ステロイド治療にて寛解.しかし同年12月より再発し,平成13年3月転居により当院へ紹介入院となった.入院時尿蛋白は9.7g/日で,血中総蛋白3.1g/dl,アルブミン1.1g/dl/と著明に低下していた.メチルプレドニゾロン1000mg/日のパルス療法2日目に突然呼吸困難を発症し,SpO2も88%へ低下した.造影CTにて右肺動脈主幹部に血栓像を認め,肺塞栓症と診断.緊急肺動脈造影では右肺動脈は主幹部で完全閉塞.カテーテルによる再疎通操作とウロキナーゼ24万単位を併用し,右肺動脈は上葉枝を除き再疎通した.以後,スワンガンツカテーテルを留置しウロキナーゼ計96万単位の投与と,ヘパリン1.5万単位/日の持続投与により,臨床症状は漸次改善.遠隔期肺動脈造影ではほぼ正常化した.
    本例はネフローゼ症候群による血栓準備状態にステロイドパルス療法の一過性過凝固状態が加わり発症した可能性が推察された.本例はネフローゼ症候群の治療上留意すべき点を含んでいると考えられ報告した.
  • 木田 寛
    2002 年 34 巻 12 号 p. 973-975
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 太田 教隆, 坂本 喜三郎, 角 三和子, 西岡 雅彦, 藤本 欣史, 上原 京勲, 塚下 将樹, 横田 通夫
    2002 年 34 巻 12 号 p. 976-978
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠状静脈洞開口部閉鎖症はまれな疾患であるが,それ単独で血行動態に影響を及ぼすことは少ない.しかしながら,先天性心疾患と合併した場合にはその限りではない.
    今回,左心低形成症候群に合併した先天性冠状静脈洞開口部閉鎖症に対する外科的解除症例を経験したので報告する.生後8カ月時,完全右心バイパス術終了後心不全が進行し,カテーテル検査にて同疾患合併が初めて診断され,手術にて左上大静脈に還流していた冠状静脈を心房側に開口させた.同疾患に対し外科的解除術を行った例は本邦ではまだないと思われる.
  • 上村 秀樹
    2002 年 34 巻 12 号 p. 979-982
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 金 勝慶
    2002 年 34 巻 12 号 p. 985-993
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心不全患者ではレニンーアンジオテンシン系(RA系)が賦活化されており,それが心不全の進展に重要な役割を演じている.ACE阻害薬が心不全の治療薬として確固たる地位を築いているが,もう一つのRA系阻害薬として,AT1受容体ブロッカー(ARB)が臨床応用され,ACE阻害薬とは異なる薬理作用を持つ点や副作用が少ない点で注目されている.最近,ARBのバルサルタンがアメリカで心不全治療薬として承認され,ARBもようやく心不全治療薬として認められつつある.ACE阻害薬とARBは薬理学的には異なる特性を持つ薬剤であるが,これまでに報告された基礎成績と臨床成績を総合すると降圧作用および心保護作用はACE阻害薬とARB間でほぼ同等といえる.すなわち,理論的な薬理作用の違いが本当に実際の臨床効果の差としてどの程度現れるのかどうかは現在のところ不明である.今後,両薬剤の相違点として重要と考えられているAT2受容体,キマーゼ,プラジキニンが各種病態において実際にどの程度関与しているかを解明する必要がある.一方で,ACE阻害薬とARBの併用が心不全の治療法として有効である可能性があるが,その点については来年発表予定のCHARM試験の結果によりさらに明らかになることが期待される.
  • 松原 弘明
    2002 年 34 巻 12 号 p. 994-1001
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    血管生物学・血管作動性物質の研究が進み,高血圧症を遺伝学的素因から解析する手法に加え,これまで体質素因が重要と思われていた高血圧を血圧だけでなく臓器合併症に注目し,個々の病態に合わせて治療する流れにある.この中でも,実際の高血圧医療に最も貢献の大きいのはンニンーアンジオテンシン系の領域であり,ACE阻害薬が質的降圧療法の基本となりつつある.最近本邦でも臨床応用が始まったアンジオテンシン(AngII)受容体拮抗薬はAngII作用を阻害する点ではACE阻害薬と一致するものの,薬理作用や副作用の発現に大きな違いがある.AngII受容体拮抗薬の使用時には血中AngII濃度が上昇し残された2型受容体(AT2受容体)を選択的に刺激することになり,ACE阻害薬とは異なった薬理作用が発揮される.AT2受容体シグナルを介した血管弛緩作用が明らかになり,この機序としてAT2受容体刺激は細胞内酸性化によるキニン産生酵素の活性化により,プラジキニン分泌を亢進させる.分泌されたプラジキニンは血管内皮に存在するプラジキニン受容体を刺激し, その下流でNO/cGMP系を介して血管を拡張することにより,AT1受容体による血管収縮に拮抗する.AT2受容体ノックアウトマウスでの基礎血圧上昇・AngII投与後の血圧過剰上昇はNO/cGMP系を介したAT2受容体依存性血管拡張作用が消失したために引き起こされたものと考えられた.AT2受容体シグナルはチロシンフォスファターゼを活性化し,AT1受容体による増殖キナーゼ系を抑制して抗細胞増殖活性や抗線維化作用を発揮する.しかし,AT2受容体からフォスファターゼまでの介在分子は明らかになっていない.血圧調節に重要な末梢細血管や不全心筋にはAT2受容体が発現する.AT1受容体拮抗薬の投与時には選択的にAT2受容体が刺激されることを考えると,AT2受容体シグナルによる心血管作用の解明は重要である.
  • 松森 昭
    2002 年 34 巻 12 号 p. 1002-1009
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ほとんどすべての心疾患は心機能障害をきたし心不全の直接の原因となるが,心不全は心機能障害のみならず,その結果生じる末梢循環や神経体液性因子の反応に基づくことが多い.また,最近の研究により,サイトカインや免疫系因子によって心筋細胞が障害を受けることが明らかになった.一方,強心薬にサイトカイン産生抑制など免疫応答調節作用のあることがわかり,心不全に対する効果との関連が注目されている.本稿では,強心薬の免疫調節作用を中心に述べる.
  • 松崎 益徳
    2002 年 34 巻 12 号 p. 1010-1014
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    近年,中等症から重症の慢性心不全患者を対象としたβブロッカー療法に関する多くの大規模臨床試験の結果が報告され,その有効性は確立したと言える.しかし,その作用機序の詳細や有効例と無効例の予測など,いまだ不明な点が多く,循環器病学の中で大きな研究テーマとなっている.考えられる機序の一つとして,心拍数,収縮性を低下させることで心筋酵素消費量を軽減し,心筋細胞の修復過程を促進することが考えられている.以前より,βブロッカーの長期投与により心筋細胞内筋小胞体(SR)のCa2+取り込み蛋白であるCa2+ATPase(SERCA)のupregulationや,メタロプロテアーゼ活性の抑制などが示されている.これらの作用は,心筋細胞内のCa2+過負荷の是正や左室再構築(remodeling)の抑制を介して左室機能を改善する.一方,β 受容体への作用機序として,βアドレナリン受容体リン酸化酵素(BARK)の抑制によりβ 受容体のリン酸化を抑え,細胞内シグナル伝達を改善し心機能を改善することも報告されている.今回,SR内Ca2+放出蛋白であるリアノジン受容体機能に注目し,その心不全時における機能不全とβブロッカー療法によるいかなる変化がもたらされるかを最近の自験データを中心に述べ,心不全治療法としてのリアノジン受容体機能安定化の重要性について解説する.
  • 堀 正二
    2002 年 34 巻 12 号 p. 1015-1020
    発行日: 2002/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    慢性心不全の第一選択薬として利尿薬,ACE阻害薬,ジギタリスの他にβ遮断薬が注目されている.β遮断薬の有効性の機序は単に陰性変力・変時作用による心筋酸素需要の抑制のみならず,(1)β受容体以下の細胞内情報伝達の障害(β受容体の減少,β受容体キナーゼの増加,β受容体とG蛋白の脱共役など)の改善,(2)酸化ストレスによる心筋障害(マトリックス・メタロプロテアーゼの活性化,CaATPaseの不活性化,アポトーシスの誘導など)の抑制,(3)Caホメオスタシスに関与するCa制御蛋白(SERCA,フォスファランバン,Na+/Ca2+ 交換系,筋小胞体Ca遊離チャネルなど)の変化の修復,(4) 拡張期特性の障害の是正,(5)心突然死の抑制など多面的であり,その複合効果として心機能や生命予後を改善する.これまでの大規模臨床試験の結果から,β遮断薬はそのクラス効果として有効であると考えられるが,抗酸化作用など薬剤による相違も存在する可能性がある.今後,ACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬など他の抗心不全薬との併用効果や至適投与量などが詳細に検討されるであろう.
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