直鎖と分枝飽和アルコールで処理したシリカゲルと直鎖飽和アルコール (炭素数8以上), 不飽和アルコール, 二価アルコール, 芳香族アルコール, フェノールまたはその誘導体のヘキサンまたはアセトン溶液で処理したシリカゲルの赤外線吸収スペクトルと示差熱・熱重量分析曲線を測定した。赤外線吸収スペクトルの測定結果から (1) 表面処理シリカゲルの赤外線吸収スペクトルは処理に用いたアルコールのアルキル基に特有なC-H伸縮変角振動に帰属される吸収を示す。特にフェノール処理のものは環炭素骨格振動及び1置換o-, m-, p-置換特有のCH面外振動に帰属される吸収を示す。これから付着基は処理に使用したアルコールのアルキル基あるいはフェノキシ基を含むと認められた。 (2) 未処理シリカゲルの950cm
-1の吸収は>Si-OHの変角振動に帰属される。これをヘキサン, アセトンで処理したものでは, 950cm
-1の吸収が他の吸収と共に未処理シリカゲルのそれと同じであるが, 表面処理シリカゲルではこの吸収は消失またはその強度が減少する。これから付着基は単なる吸着アルコールとは異なり, 反応により付着していると認められる。しかし3級アルコール処理のものの赤外線吸収スペクトルは未処理のものと変わらないから, 3級アルコールはシラノールとは反応しないと考えられる。また950cm
-1の吸収の検討から, フェノール類は反応しているか否かについては, なお疑の余地がある。示差熱・熱重量分析測定結果から示差熱分析曲線は未処理シリカゲルと処理シリカゲルとは異なった形を示し, 後者では使用したアルコールにより特徴のある形を示す。これらの示差熱・熱重量分析曲線は, (1) 未処理シリカゲルでは200℃以下での吸熱部分と200℃以上のシラノールの脱水と認められる高温での脱水部分とに分けられる。 (2) 表面処理シリカゲルでは200℃以下の脱水による吸熱部分, 200℃以上での付着基の熱分解酸化による第1発熱領域と析出炭素の燃焼が支配的となる大きな第2発熱部分とが認められる。 (3) 付着基の分解酸化はメタノール処理のものでは250℃, それ以外の直鎖, 分枝飽和アルゴール処理のものでは200~220℃, 二価アルコール処理のもので270~305℃, 不飽和アルコールで265~285℃, 芳香族アルコール処理のもので220℃, フェノール類処理のもので250~300℃で始まる。この発熱部分では付着基の熱分解酸化と不完全燃焼による炭素析出が起こる。 (4) 400~600℃での著しい発熱部分は析出炭素の燃焼によるもので, 芳香族アルコール処理試料で顕著である。 (5) 3級アルコール処理シリカゲルは未処理シリカゲルと同じ示差熱・熱重量分析曲線を与える。従って3級アルコールはシラノールと反応しないと認められる。 (6) 付着基の分解が沸点より高い温度で発熱反応として認められるのであるから, 付着基は吸着アルコールではなく反応により化学結合していると認められた。
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