色材協会誌
Online ISSN : 1883-2199
Print ISSN : 0010-180X
ISSN-L : 0010-180X
88 巻, 11 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
研究論文
  • 林 怡宏, 村上 穂高, 河野 芳海, 柴田 雅史
    2015 年 88 巻 11 号 p. 371-377
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    アントシアニジン色素(アントシアニン色素のアグリコン)と中性条件下で合成したHMS型メソポーラスシリカの複合体の調製方法と,その赤色顔料としての性能を検討した。
    合成段階でAlを含有したメソポーラスシリカ(Al-HMS)はアントシアニジン色素を吸着しやすく,Al/Si=0.05以下では鮮やかな赤色の複合体が得られた。しかしながらAl含有量が増加するにつれて,複合体の色は赤から紫にシフトするという問題が見られた。これは強塩基性条件下で合成したAl含有MCM-41型メソポーラスシリカではみられない現象であった。希薄なNaOH水溶液でAl-HMSを洗浄することで,複合体シリカ骨格の外部に存在すると思われるAlを除去したところ,得られた複合体はAl濃度が高い場合であっても,鮮やかな赤色とすることができた。
    得られた赤色のAl-HMS複合体は,色素が水へと溶出しにくく,光照射に対して高い安定性を示した。
解説
  • 権谷(佐藤) 佐織, 松本 真哉
    2015 年 88 巻 11 号 p. 378-382
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    感熱記録は熱によって画像を得る記録方式であり,フルオラン色素の発色反応を利用している。その簡便さからさまざまな場面で使用され,私たちの日常生活に身近な技術の一つとなっている。色素の発色に欠かせない顕色剤は,発色反応のプロトン源として働くとともに,発色感度や画像の安定性にも影響を与える重要な材料である。本稿では,いくつかの顕色剤について,その分子構造と顕色能力を,おもに単結晶X線構造解析を用いて検討した最近の研究を紹介する。
総説
耐久・防食講座(第14講)
光と色彩講座(第2講)
  • 坂田 勝亮
    2015 年 88 巻 11 号 p. 395-400
    発行日: 2015/11/20
    公開日: 2016/02/20
    ジャーナル フリー
    色は物質の性質でも電磁波の光学現象でもなく,人間の感覚という心理現象である。このため光と色は異なることがあるが,これは決して視覚が曖昧なのではなく,むしろ的確な光学情報の処理により最適な情報として利用できるよう知的ともいえる働きをしている。ここでは色覚処理の初期段階である網膜上に起因する現象であると考えられる順応から,記憶や言語認識などの高次過程と考えられるレベルにまで色知覚のメカニズムが機能していることを例示しながら,色にまつわる人間の情報処理の心理メカニズムが複雑で多様性に富む働きをしていることを紹介する。そして色彩という不思議で素晴らしい現象が,われわれの高度に発達した中枢神経系によってもたらされていることをご理解いただくとともに,色彩という領域が心を扱う心理学と脳の働きを扱う脳科学との境界領域として,目覚ましい発展を遂げてきたことをご理解いただければ幸いである。
feedback
Top