ラッカー用のニトロセルロースと酢酸エステルからなるクリヤラッカーに,ポリオキシエチレングリコールエステル,リン酸エステルあるいはフタール酸エステル等の可塑剤を各々別に加えて,添加した可塑剤量とラッカー粘度の変化率との関係を求めた。
比較的高粘度のニトロセルロースを用いたラッカーにポリエチレングリコールージー(2-エチル)ヘキソエート(PEGH)を約10%添加したラッカーは粘度変化率が約0.5%程増加した。ラッカーの粘度は可塑剤の粘度より相当高く作ってあるから,一般的に言って可塑剤の添加によって粘度は減少すべきである。
この現象を他の方面から確かめるために水面上に1ミクロン以下の薄膜を形成し,それが重りによって破断するまでのくぼみを測定した。前記の異常粘度を示したラッカーでは可塑剤の添加によってくぼみは逆に減少した。
また細かいガラス粉末を一様に付着して不透明としたガラス板上に上記の各ラッカーで薄膜を作ると,高粘度ニトロセルロースとPEGHからなるラッカーで作った薄膜には光沢のあるハン点が数多く見られた。このラッカーを1MCの超音波で処理し,ふただびガラス板上に同様の薄膜を作ると前にあらわれた光沢ハン点は消失する。さらに処理ラッカーを放置しておきふたたび薄膜を作ると光沢ハン点が見られるようになる。ラッカーの粘度も放置によって0.7%程下り放置によってもとにもどる。
この現象は重合度にも関係し,低粘度コントセルロースを用いるとこれらの異常現象は認められないか,又は非常に小さくなる。
これらの実験結果から粘度の異常性はニトロセルロース分子の集合体あるいはミセルと可塑剤の相互作用によるミクロの凝集体がラッカー溶液中に出来た結果生じたものであると推論した。
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