ステンレス鋼は炭素鋼, 亜鉛メッキ鋼等に比べて高分子材料に対する接着性に乏しいことが指摘されている。また, ステンレス鋼の孔食を防ぐうえからも塗膜密着性は重要であり, 非クロム系の無公害なステンレス鋼用の接着・塗装用表面処理技術の確立が求められている。
このような背景から, 本報では1, 3, 5-トリアジン-2, 4, 6-トリチオールモノナトリウム塩 (TTN) 水溶液の電解重合処理を検討し, ステンレス鋼のエポキシ系接着剤に対する接着部の耐湿性が向上することを確認した。また, RA-FTIR, XPSおよびstatic SIMSによりステンレス鋼基板とTTN電解重合処理界面および処理層構造の解析を行い接着部の耐湿性向上メカニズムを調べた。その結果, XPSおよびstatic SIMSにより基板とTTNのチオール基の間に共有結合が形成されていることを確認し, その強い結合性が接着部の耐湿性の向上に寄与していることを示した。
ステンレス鋼表面のTTN電解重合処理皮膜形成と接着メカニズムモデルが提案された。
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