紫外線硬化塗料の耐候性を向上させることを試みた。一般的に, 塗膜の耐候性を向上させるために, 紫外線吸収剤の添加が行われる。しかし, 紫外線硬化塗料に紫外線吸収剤を添加すると, 硬化に必要な紫外光まで, 紫外線吸収剤が吸収してしまうため, 満足な硬化性が得られないのが現状である。他の手法としてヒンダードアミン系の安定剤を用いる場合があるが, これは, 紫外線吸収能を有していないため, 下地保護機能が劣るという問題点がある。
そこで我々は, 紫外線吸収剤のメカニズムに着目し, 水酸基を保護した新しい紫外線吸収剤の設計を試みた。光脱離型保護基であるキサンテンカルボン酸エステル, o-ニトロベンジルエーテルで水酸基を保護した紫外線吸収剤はその性能が抑制され, 紫外線硬化塗料において, 硬化阻害を引き起こさないことがわかった。また, これらの保護基は紫外線の照射下, 水酸基を再生し, 紫外線吸収剤としての機能を再発現することがわかった。しかしながら, 促進耐候性試験においては, 脱離し塗膜中に残存する保護基の影響で, 塗膜に黄変が観察された。これらのことから, より耐候性の優れた保護基で水酸基を保護することで, 紫外線硬化塗料の硬化を阻害しない新規な紫外線吸収剤が得られる可能性が示された。
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