チーズはナチュラルチーズとプロセスチーズの二つに分けることができる。ナチュラルチーズとは乳を原料とし,そのタンパク質と脂肪を固形分として集めたものであり,プロセスチーズはそのナチュラルチーズを原料にして作るチーズのことである。ナチュラルチーズの多様性は原料乳の種類,製造条件そして使用する微生物に依存している。ナチュラルチーズの歴史は古いが,それに比べると,その製造における科学的なアプローチが始まったのはそれほど古くはない。本稿ではナチュラルチーズ製造の基本的な工程における科学的なメカニズムについて解説する。
広いパイ面積を有する芳香族分子をさまざまな方法で組み合わせた化合物は,有機太陽電池,有機LEDなど次世代の有機材料として幅広く研究されている。本総説では,これまでにわれわれの研究室で合成した化合物の中でも,アセチレン架橋されたヘテロ芳香族オリゴマー分子を中心に取り上げ,その分子・電子構造と諸物性との関連性について解説する。
中空シリカ粒子とは,内部の空気層とシリカシェルからなる固体-気体コンポジット粒子である。その特異的な構造から従来の中実粒子よりも優れた特性が発現する。その特性を活かすためには,フィルムなどの最終製品中における中空シリカ粒子の分散性の向上が不可欠である。フィルム中に良分散された中空シリカ粒子は,多くの特性を発現し,驚くべき特性の一つとして,汗で滑りにくいコーティング材料としての応用があり,北京オリンピック以降国際オリンピック連盟公式球として使用されている。本稿では,中空シリカ粒子の作製手法から始まり,特性発現に不可欠な分散技術,そして中空シリカ粒子の応用技術について紹介する。
メタリック塗膜の色調は,同一塗料を用いても使用する塗装機や塗装条件によって変動する。これは,塗膜中のメタル片の配向や組成(サイズ,濃度)が変動することに起因する。塗膜中のメタル片は,スプレー時に塗料粒子が被塗装面そのものに衝突することによって被塗装面と平行に配向し,乾燥・焼付け時にはウェット塗膜の粘度が対流などによってメタル片が運動しない水準に上昇したあとのウェット塗膜の収縮によって被塗装面と平行に配向する。また,塗膜のメタル片の組成は,スプレー時における塗料粒子へのメタル片の不均一な分配と被塗装面への塗料粒子の選択的な塗着によって変動する。すなわち,小径の塗料粒子は,メタル片が分配されないか,小さなメタル片しか分配されず,かつ被塗装面に塗着しにくいために変動する。このため,小径の塗料粒子が被塗装面に塗着するようになる,すなわち塗着効率が向上すると,塗膜ではメタル片濃度が低下するとともに小さなメタル片が多くなる。
塗料は多くの工程を経て塗膜となり,「美観」と「保護」を被塗物に付与する。
したがってわれわれは,塗膜が要求品質を満たすことを確認しなくてはならない。そこで,比較的簡便な実用性能評価を用いて定性的に評価している。また,塗料は塗装され,乾燥・硬化過程を経て塗膜となることから,各工程で起こる現象(塗装作業性)を把握して適切に制御できるように配合設計しなければならない。そのためには,物性解析を活用し,各性能を定量化することや各現象を解析することが効果的である。本稿では塗料・塗膜について,実用性能評価方法,そして,物性解析の基礎と活用方法について紹介する。