これまでの内容をまとめると次のようになる。
配合物の個々の品質は配合組成のみによって決まるという仮定をおく
配合物の個々の品質の数値 (特性値) は配合組成の関数で表すことができる。この関数を品質関数とよぶ
品質関数が解析関数であると仮定する。品質関数をテーラー級数展開し, 品質関数の近似多項式を求める
変数 (n成分) の品質関数を, m次までテーラー展開した式を {n, m} 近似多項式という
配合成分の比率の間には非負・和は1という制約条件がある
この制約条件は位相幾何学の単体の構成条件と同一である
{n, m} 近似多項式に, この制約条件を加えると, {n, m} 正準多項式 (単体上の近似多項式) が得られる
正準多項式 (品質関数) は, 単体を定義域とする関数すなわち単体上の関数である
正準多項式は単体の上で直線や曲線又は曲面を描く
単体に格子を導入する
{n, m} 単体格子の点と {n, m} 正準多項式の項 (係数) は1対1に対応し, その個数は (m+n-1m) である
{n, m} 正準多項式の係数は, {n, m} 単体格子点で測定される配合物の特性値の1次式で表される
{n, m} 単体格子点での特性値を測定することにより {n, m} 正準多項式の係数の値をすべて求めることができる
この操作を品質項目毎に実行することにより配合物の個々の品質関数の正準多項式が得られる
この正準多項式は, 配合物の任意の配合組成の特性値を予測する
配合物は, 多数の多様な原料が, 相互作用により形成する統一体として定義することができる。この定義は複雑系というものの定義でもある。従って配合物は, まさに複雑系の格好の例であるが, 配合を, これまで述べたように, 数学的にモデル化し, そこに形成される数学的構造を理解すると, 配合には意外な明快さが存在することがわかる。この明快さは, いくら配合成分が多くなっても変ることはない。あたかも, 地上の風景を山上から見るかの様である。従って配合物は複雑系ではあるが, 手に負えないカオスではない。配合及び配合物を単体に基づいて考察したので, この様な結果が得られたのである。
しかし, これまで述べたことは, 配合の数学的構造のごく一部にすぎない。引き続いてn単体上の関数の解明が行われないとその実体が明らかになったとは言えない。そのような研究は “配合論” とも言うべき分野の出現に今後結びつくかもしれない。
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