色材協会誌
Online ISSN : 1883-2199
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97 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
―小特集 東北からはじまる色材研究のフロンティア―
解説
  • 落合 文吾
    2024 年 97 巻 3 号 p. 70-72
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    ポリマー合成と二酸化炭素の反応による固定化を同時に行う系である,グリシジルメタクリレート(GMA)の二酸化炭素によるカーボネート化とラジカル重合の同時進行系を紹介する。GMAはアクリル系モノマーの一種であり,ラジカル重合によってポリマーを与える。側鎖のエポキシ基は,さまざまな変換の起点となり,二酸化炭素との反応では五員環カーボネートとなる。GMAのラジカル重合を,二酸化炭素中にて,ラジカル重合開始剤とアルカリ金属ハロゲン化物などのカーボネート化触媒存在下で行うと,重合と二酸化炭素の固定化がともに進行し,五員環カーボネート構造をもつポリメタクリレートが得られる。本系は,二つの反応を同時に行うことで,エネルギーコストの低下と,プロセスの短縮を実現した。溶媒や添加剤などを選択することで,対応するポリマー微粒子を得ることもできる。

  • 吉田 一也
    2024 年 97 巻 3 号 p. 73-76
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    トンボなどの透明な翅(はね)の表面には,微細な構造が存在し,それは光の反射防止性などの多くの機能を備えている。クサカゲロウの翅においても類似の微細な構造が存在し,それはさまざまな機能をもっていると予想されている。しかし,クサカゲロウの翅の光学特性については,ほとんど研究されてこなかった。本稿では,クサカゲロウの翅の表面構造とそれに関連する光学特性についての研究を紹介する。とくに,透過率測定の結果と時間領域差分(FDTD)法の結果を中心に紹介する。本稿で紹介する研究成果はおもに基礎的な動機により行われ,得られたものであるが,広く色材研究に貢献することを期待したい。

  • 小関 良卓, 笠井 均
    2024 年 97 巻 3 号 p. 77-80
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    治療薬を患部のみに集積させ,効果を発揮させるドラッグデリバリーシステム(DDS)の発展は,とくに抗がん剤のように強い副作用が発現する治療薬の開発において重要である。本解説では,抗がん活性物質SN-38をモデル化合物として,有機ナノ粒子の作製手法である再沈法を駆使した単一分子のみで構成されるナノ薬剤の作製手法の確立,ナノ薬剤からの薬物放出を制御するための分子設計,さらに,細胞実験・動物実験による薬理活性評価に関する研究事例を解説する。

  • 鷺坂 将伸
    2024 年 97 巻 3 号 p. 81-85
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    低表面エネルギーを作り出すためにさまざまな用途でフッ素系界面活性剤が利用されてきたが,生体蓄積性やその他の生体・環境へのリスクが懸念され,使用が制限されている。本解説では,フッ素系界面活性剤の代替として期待される低表面エネルギー炭化水素系界面活性剤“ヘッジホッグ界面活性剤”の開発について,分子設計,界面物性およびそれらの応用について紹介する。

解説
  • 川上 淳
    2024 年 97 巻 3 号 p. 86-90
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル 認証あり

    本州最北端の青森県にある国立大学の弘前大学では,2000年から植物の藍から抽出されるトリプタンスリンに関する研究がスタートし,アトピー性皮膚炎の原因菌であるマラセチア・フルフル菌に対して高い抗菌性を示すことや,接触性皮膚炎に対して抑止効果があることなどを報告してきた。その研究の過程で,いくつかのトリプタンスリン誘導体を合成し,抗菌性に対する構造活性相関を調べていたところ,トリプタンスリンの2-位にアミノ基を導入した2-アミノトリプタスリンが強い蛍光を示すことを偶然見つけ,蛍光色素としての研究が新たにスタートした。本稿では,これまで弘前大学で行われてきた,蛍光性トリプタンスリンの研究について紹介する。

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