酸素検知剤への応用のため,中性および塩基性のメチレンブルー水溶液を紙に含浸し,紙中におけるメチレンブルーの挙動を反射スペクトルで研究した。中性水溶液の場合,紙中のメチレンブルーのスペクトルは乾燥時間とともに単量体の強度が二量体の強度に比べて相対的に強くなった。セルロース細孔に拡散したメチレンブルーが,乾燥していく過程で吸着して分散が進んだものと考えられる。塩基性水溶液は,水酸化物イオンの効果で脱メチル化反応が進み,約1時間でアズールCへ変化するが,紙に含浸すると反応は遅くなり,約1月後にアズールCへ変化した。メチレンブルーを用いて酸素検知剤を作製した。これを脱酸素状態にすると青色が消えた。103日後に開封すると,5分後に青色を示し,スペクトルもメチレンブルーと同じであった。脱酸素状態では,メチレンブルーが還元型のロイコメチレンブルーになることで,脱メチル化反応の進行が抑制されたと考えられる。
溶剤型クリアを水性ベース上に積層して一括焼付けすると,ベース層に含有されるアミンが焼付け中に移動してクリア層の硬化速度に影響するか調べた。硬化速度は,ナイフエッジを支点とし,試料膜と接した状態で振動する剛体振り子の運動から粘弾性を測定する振り子式粘弾性測定装置で評価した。測定原理に基づいて各層の寄与を見積もった結果,上記装置の測定結果は実質的にクリア層のみの硬化挙動をあらわすことがわかった。積層系で硬化速度定数を測定した結果,クリア塗料が酸エポキシ架橋の場合には硬化促進,メラミン架橋の場合には硬化阻害の影響があり,イソシアネート架橋の場合は影響が認められなかった。これらは各クリア塗料にアミンを添加した場合と定性的に同じ結果であった。上記の手法で積層系での硬化速度を定量的に評価できることが明らかになった。
高精彩スクリーンインキシステムはスクリーン印刷でありながら,100 μmの細線を116 μm以内のダレ幅で印刷できる高精度かつ印刷安定性に優れたシステムである。
当該システムはインキと印刷資機材(メッシュ技術・製版技術・印刷機技術)と印刷技術の3要素により成り立ち,ドットなどの微細なパターン以外に面パターンなどを含む多様な画像形成が一つのインキで実現できる。高精彩インキは高粘度高チキソ性であり,刷版のパターンを忠実に再現し,ダレ広がらないことが特徴である。
本稿では高精彩インキの特徴と高精彩スクリーンインキシステムにより実現した印刷事例を紹介する。
軟包装用水性フレキソ印刷の市場の現況とその広がりを背景として,印刷インキの面から各種軟包装材への同方式の適性・長所や短所について論じる。また同印刷インキを構成する諸成分について現在一般的に使用される物を中心に選択の種類や特徴・適性などについて紹介し,軟包装水性フレキソ印刷で見られる一般的な印刷トラブルを印刷インキの面から要素を解析する。
近年の国内印刷市場は,スマートフォンなどの普及によるメディアの多様化により縮小傾向にある。その中,紫外線を照射して瞬時に乾燥し,強靭な耐性の特徴をもつUV硬化型インキは,さまざまな用途で拡大している。さらに省電力化やCO2削減などの環境対応への取り組みとして,紫外線発光ダイオード(LED-UV)やオゾンレス型UVランプとこれらの光源で硬化するインキ(LED硬化型インキ,UV硬化型高感度インキ)を組み合わせたシステムの拡大が進み,情報系を中心とした薄紙領域においては,従来の油性からの置換が盛んに行われるようになってきた。昨年行われたDrupa2016においても,LED-UV,高感度UVがオフセット印刷の主流になる兆しを示してきている。本稿では,高感度UVインキの基礎知識とその特徴とともに今後の展望について述べる。
塗料・塗装から発生するVOCについて法規制およびVOCの排出抑制手法について概説し,塗料業界におけるVOC削減の取組について紹介した。塗料からのVOC排出推計量は,基準年度である平成12年度の535千トンに対し,平成27年度は270千トンであり,49.5%削減している。とは言え塗料・塗装は依然として最大のVOC発生源の一つであり,今後とも低減の取組を継続していく必要がある。