色材協会誌
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96 巻, 4 号
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特別インタビュー 色材や界面制御に関する今後の動向
  • 柴田 雅史, 依田 恵子
    2023 年 96 巻 4 号 p. 127-130
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル フリー

    近年,新型コロナウイルス(COVID-19)や環境対応(脱炭素化,エネルギー問題)など地球規模で世の中が目まぐるしく変化しています。これらは経済のみならずわれわれの生活様式にまで多大な影響を与えています。同様に色材や界面制御に関する研究においても,この大きな社会変化への対応が求められています。そこで本誌では,小特集企画として「色材や界面制御に関する今後の動向」と題し,当分野において最先端で活躍される方々にインタビューを行い,今後の研究動向や社会動向などに関するお考えを不定期の連載形式で紹介しています。

    今回は第2回としまして,東京工科大学の柴田雅史教授にインタビューを行いました。柴田先生は界面化学と化粧品科学がご専門で,天然素材を活用した化粧品材料開発および製剤化技術のご研究を精力的に行われています。また,企業にお勤めの頃から長年にわたり色材協会の発展にご尽力いただいており,現在は理事および編集委員会顧問を務められています。インタビューでは,先生のご研究分野における社会情勢の変化による影響や実学を重視した人材育成についてお伺いしました。

解説
  • リチャーズ ゲーリー ジェームズ, 青木 啓太, 秋林 大貴, タンボーリ マジド, ヒル ジョナサン, 堀 顕子
    2023 年 96 巻 4 号 p. 131-136
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル 認証あり

    1,4-ピラジンが直列に連結したピラジナセンは,アセンの類縁化合物であり,CH単位が窒素で置換されている。

    ここでは,最近開発されたピラジナセン化合物について,とくにその光物性に注目しながら議論する。

    本研究では,REDOX特性がそれぞれのピラジナセンの縮合環の数に依存すること,還元型ピラジナセンが50%を超える高い蛍光量子収率を示すこと,ピラジナセン鎖の拡張や脱プロトン化によっても近赤外領域の発光が可能になることを見いだした。

総説
  • 磯部 敏宏
    2023 年 96 巻 4 号 p. 137-140
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル 認証あり

    負の熱膨張率を有する材料(負熱膨張材料)は,複合化することで,材料の熱膨張率を制御できることから,盛んに研究されている。Zr2SP2O12は,負熱膨張材料の二つの主メカニズムを相転移タイプ(373から453 K)とフレームワークタイプ(303から373 Kと453から773 K)の両方を有するユニークな材料である。広い温度域で比較的低い熱膨張率を有することから,当該分野で有望な材料と期待される。本稿では,Zr2SP2O12の収縮メカニズムを解説するとともに,Zrサイトの元素置換による熱膨張率の制御について紹介した。

  • 齋藤 典生
    2023 年 96 巻 4 号 p. 141-146
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル 認証あり

    ハロゲン化金属ペロブスカイトナノ結晶は,その優れた光電子特性から次世代の半導体材料として多くの期待を集める一方,水や極性溶媒への安定性が低く,安定性を向上させるための表面処理が必要である。われわれのグループは,カチオン性オリゴメリック型配位子(ジェミニ型:12-n-12またはトリメリック型:12-n-12-n-12)に着目し,これらの配位子を用いたCsPbBr3ナノ結晶の表面処理について検討を行った。作製したCsPbBr3ナノ結晶の分散特性は配位子のスペーサー長に依存しており,動的光散乱測定の結果,ヘキシル基以上のスペーサー長(n≥6)を有するジェミニ型12-n-12配位子が優れた分散特性を示すことがわかった。12-n-12で表面処理したCsPbBr3ナノ結晶は,臭化ジドデシルジメチルアンモニウム(DDAB)と同様な高い発光量子収率を示し,かつ既存の配位子と比較して優れた耐水性を示すことを見いだした。さらに,硬X線光電子分光法(HAXPES)を用いて,オリゴメリック型配位子で表面処理したCsPbBr3ナノ結晶の表面化学状態を明らかにした。

  • 梅山 大樹
    2023 年 96 巻 4 号 p. 147-151
    発行日: 2023/04/20
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル 認証あり

    有機・無機複合物質において,有機分子の多様性は電子物性制御に直結する重要な要素である。有機・無機複合ペロブスカイトでは,二次元構造では無機シート間に幅広いサイズの脂肪族および芳香族分子を包摂できるのに対し,三次元構造では分子が占有できる立方八面体ケージのサイズが小さいため,用いることのできる分子が限られている。拡張三次元ペロブスカイト類似体は,三次元ペロブスカイトにおけるこのような分子多様性の制限を緩和する新しい構造モチーフである。ペロブスカイト類似体では二つの金属ハライド八面体が辺共有した二量体が単位構造となっており,分子が占有できる空隙がペロブスカイト構造よりも拡張されている。 この結果,三次元無機格子中に複合化できる分子の自由度が向上し,無機格子が作るエネルギーバンド中に光学活性な分子軌道を導入することが可能となる。このような無機バンドと分子軌道の相互作用が興味深い光電子特性をもたらす。

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