スズフタロシアニン (PcSnCl
2;以下Sn-Pcと略記) およびバナジウムフタロシアニン (PcVO;V-Pc) にっいて, Arガスふん囲気下での熱分解の様子を調べた。まずTG, DTAを測定した結果, Sn-Pcの減量域は500~550℃, 600~700℃, V-Pcは570~620℃, 670~780℃でそれぞれ2段型のTGを示した。850℃までの総減量はSn-Pcが48%, V-Pcが46%で, このうち第1減量域の減量はSn-Pcが27%, V-Pcが34%でいずれも昇華による減量が過半を占める。DTAはそれぞれの減量域に対応して吸熱が現われる。
つづいて1,000℃まで温度を変えて加熱処理を行ない, 処理試料の元素分析, 赤外およびX線分析を行なった。またSm-Pc560℃, V-Pc625℃における熱分解生成物の分析を行なった結果, Sn-Pcは500℃と530℃の間で塩素を脱離しPcSmCl
2からPcSmに変る。その後550℃までに結晶構造が完全に崩れ, HCN, C
6H
6, C
6H
5CNが生成する。第2減量域に入ると金属スズの結晶が析出し, 炭化が進行してゆく。
一方, V-Pcは575℃まで安定であるが, その後脱離した酸素によってC-N結合の一部が攻撃されて結晶構造が完全に崩れる。この時CO, N
2, C
6H
6, C
6H
5CNが生成する。この後分解が進むにつれ675℃で炭素様構造が現われ, 800℃からVCの結晶が析出する。
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