カドミウム系顔料の一品種であるところのCdSに関して, 焼成ふん囲気の色調におよぼす影響を検討した。
試料としては高純度CdS (99.999%) を使用し, これを種々の条件で加熱処理した。
これら処理試料に対して結晶多形, 格子定数, 粒子径ならびに分光反射率曲線などを測定した。
以上の結果, CdSを加熱処理するふん囲気として酸素が存在するときは, 分光曲線の吸収端の立上りこう配が大きくなるとともに色調は他の試料に比較して著しく鮮明となることが示された。また, ふん囲気が窒素, 減圧さらにイオウの場合は, 立上りこう配が小さくなり, 色調も暗赤色化していくことが見いだされた。六方度と粒子径の増加はイオウふん囲気の場合に著しく促進された。
したがって, 原理の解明はできなかったが, CdSの鮮明な色調のものを得るためには酸素の存在がきわめて有効であることが見いだされた。
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