無機顔料に代替可能な物性をもつ有機顔料の開発を目的として, 新規な赤色系フタロン顔料の合成について検討した。フタロン系顔料についてはその代表であるキノブタロン顔料が, すでにカドミウム黄代替顔料の一つとして広く研究されてきた。著者らは, キノフタロンのキナルジン成分に, 1-アミノアントラキノン誘導体とアセトンから容易に合成できる2-メチルピリジノアントロンを用いると, キノフタロンと類似の構造をもつ新規なフタロン系色素が合成できることを見いだした。しかも, その色調が従来のキノフタロンにみられる黄橙色から, この場合には赤色系まで移動することがわかった。そこで発色構造を検討した結果, インジゴ型の発色系をとることがわかつた。この顔料は, 物性面では耐光性に劣るが, キノフタロンの場合と同様にして, 11位に分子内相互作用が可能な置換基を導入すると大幅な耐光性の向上が得られた。以上の結果から, この新規な赤色系フタロン顔料は, 今後, 赤色系有機顔料の基本骨格の一つになりうるとの知見を得た。
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