酸化チタン顔料は、TiO
2組成をもった最も大量かつ広範囲に利用されている白色顔料であり, 実用的には, 塗料, インキ, プラスチックス, 紙等に使われている。
酸化チタン顔料の物性の評価は, 個々の粒子ではなく粉体全体として評価することが多く, これまでに公表されている特許や報文もこの傾向が強い。
従って, ここでは個々の結晶粒子に着目し, その組成と結晶構造, 表面の特性等を測定, 解析し, 最終的に顔料物性との相関性を考察した。
試料としては硫酸法によって作成したアナターゼ型酸化チタンを使用し, 種々の物性を測定, 解析した結果, 次の知見を得た。
酸化チタンの単一粒子は, 全般に非常に単結晶に近い粒子から構成されており, 表面の数層はアモルファスであるが, その下は整然とした酸化チタンの結晶構造を形成している。また不純物として原料から混入してくるNbは, 焼成時に粒子の表面に偏析し, 含有するNbの量が0.15wt%以上になると顕著に現れるが, このNbは焼成時にAlを添加する事により結晶内部に安定して固定する事ができる。
このAlの粒子結晶中へのドープによるNbの表面への偏析抑制効果は, Nbの量が0.15wt%より少ない場合は, 顕在化しないが, 顔料の実用特性である耐熱性と耐光性を向上させる効果がある事が認められた。
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