乳化剤(界面活性剤など)をいっさい使用せずに調製された乳化剤フリードデカン/水(DD/W)エマルションの分散安定性に及ぼす水溶性物質(塩化ナトリウム,尿素,ホルムアミド,エタノール,グリセリン)の影響について検討した。塩化ナトリウム,ホルムアミドを水相へ添加すると,乳化剤フリーDD/Wエマルションが不安定化することが明らかとなった。一方で,尿素,グリセリンを水相へ添加しても,乳化剤フリーDD/Wエマルションの分散安定性に影響しないことがわかった。さらに,エタノールを水相へ添加すると,乳化剤フリーDD/Wエマルションの分散安定性が向上することが明らかとなった。
通常の照明下においては,光は皮膚内部に透過し,皮膚表面下で散乱される。皮膚における表面下散乱は,素肌らしさや透明感をもたらす重要な光学的性質であるが,一般にファンデーションを塗布すれば,表面下散乱は減少し,肌らしい質感が失われていく。われわれは,皮膚における表面下散乱が波長によって異なることに注目し,皮膚における表面下散乱の減少を抑制する二種類のファンデーションを開発した。本稿では,その背景およびそのための色材設計について解説する。
プラスチックの静電気に由来する問題を回避するために,プラスチック表面の導電化やプラスチック自体の導電化など種々の方法が選択されている。その中で低分子型帯電防止剤や高分子型帯電防止剤などの帯電防止剤を用いる方法の種類や特性について述べる。とくに当社が開発・上市したポリオレフィンへの相溶性に優れる高分子型帯電防止剤「ペレクトロンPVL」を具体例として用い,高分子型帯電防止剤の特徴を紹介する。
環境や人への安全性が重んじられる中,安全で安価な非退色性の色素が求められている。本総説では,光の波長サイズの微細構造と黒色物質の利用によって,鮮やかな構造色を示す材料の調製方法について解説する。
日米欧やアジアの主要地域では化粧品に配合できる色素のリストを法律で定めている。許可リスト制という共通のコンセプトをもちながらも,タール色素のみを許可リストの対象としている日本や,バッチ認可制という独自のシステムを採用している米国など,それぞれの地域の規制には特徴がある。グローバルに化粧品や化粧品用色素を販売する場合には,各国の規制の違いに留意することが重要である。今後技術の進化にともない新しい色素が開発された際,安全性の十分な担保をしたうえでできるだけ早期に上市できることは,化粧品・色素メーカーだけでなく消費者にとってもメリットがある。新しい色素が各国の許可リストにできるだけ早く追加され,グローバルで使用できるようなしくみの確立が期待される。