色材協会誌
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56 巻, 6 号
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  • 顔料の油脂酸化活性のDTAによる評価
    福井 寛, 斎藤 力, 田中 宗男
    1983 年 56 巻 6 号 p. 349-355
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    酸素ガスフローDTAを用いて顔料のひまし油酸化活性を検討した。その結果, ひまし油の酸化挙動によって顔料を次の3つのタイプに分類し酸化活性を順位づけすることができた。
    (1) ひまし油の酸化を促進する顔料含水酸化クロム, 赤色酸化鉄, 黄色酸化鉄, 黒色酸化鉄, 紺青, マンガン紫
    (2) ひまし油の酸化に影響を与えない顔料亜鉛華, カオリン, マイカ, 群青, シリカ
    (3) ひまし油の酸化を抑制する顔料タルク, 二酸化チタン
    ひまし油の酸化を促進させる顔料はクロム, 鉄, マンガンの遷移元素を含む有色顔料であった。これら顔料表面の油脂酸化活性は酸性点・塩基性点とは直接の関連はなく, 別の活性であると考えられる。また, 今回用いた酸素ガスフロー-DTA法は従来の油脂安定試験法AOMの結果とよく一致した。
  • 武井 昇, 吉田 豊彦
    1983 年 56 巻 6 号 p. 356-363
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    クベルカ・ムンク (Kubelka-Munk) 理論では, 不透明な膜の光学的性質は散乱係数Sと吸収係数Kとによって表わされる。白顔料のSの値や, その応用については多数の報告があるけれど, 着色顔料のS, Kについて公表されたデータは多くはない。SもKも, 粒子径, PVC, ビヒクル成分との相互作用などによって変化するもので, その顔料の本質的な固有値ではないが, その波長依存性, 大体の大きさなどは, 塗料やインキの色, 隠ペい力, 透明性などに関しては, 実用的価値の大きい情報である。われわれは代表的な顔料について, K, Sを側定したので, その結果を報告する。
  • 出射 美喜男, 武井 昇, 吉田 豊彦
    1983 年 56 巻 6 号 p. 364-373
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    着色顔料と白色顔料または他の着色顔料とを混合したとき, その色度図上での混色の色度値の軌跡は曲ったり, ループを描いたりすることがある。この事実は古くから知られているが, なぜそうなるかは知られていない。われわれは, 着色顔料のK (吸収係数) とS (散乱係数) の波長依存性の違いによって, 同じ分光反射率分布をもつ顔料でも, 異なった軌跡を描くことを明らかにし, またモデル化したK, S分布をもつ顔料の混合物のシミュレーションによって, 軌跡の形とK, Sの関係を明らかにすることができたので報告する。
  • 松野 昂士, 高柳 弘明, 古畑 公夫, 小石 真純, 小倉 治夫
    1983 年 56 巻 6 号 p. 374-380
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    亜硫酸カルシウム四水和物の単結晶をゲル法を用いて合成した。使用したゲルは寒天ゲルである。水酸化カルシウム懸濁液と亜硫酸水を反応物として, クエン酸ナトリウムを添加剤として用いることにより, 0.2~2.0mmの大きさを有する四水和物単結晶が得られた。単結晶の化学組成の測定値は理論値にきわめて近いものであった。
    四水和物の密度を浮遊法で測定し, 1.88g・cm-3という値を得た。四水和物の単結晶として, 外形の異なる2種の結晶, すなわち, a型とb型が存在することを明らかにした。さらに, このa型, b型が結晶学的には同一物であることを明らかにした。
    四水和物の結晶を六方晶系とみた場合は格子定数はaH=19.390 (10) Å, cH=28。363 (20) Åとなり, 単斜晶系とみた場合はa=19.385 (11) Å, b=11.192 (4) Å, c=11.449 (10) Å, β=124.34 (4) °となった。
  • メタクリル酸メチルの低温放射線乳化重合
    幕内 恵三, 片貝 秋雄, 伊藤 洋, 早川 直宏, 荒木 邦夫
    1983 年 56 巻 6 号 p. 381-388
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸メチルの放射線乳化重合を0~19℃で行った。重合温度, 乳化剤濃度及び線量率によらず, 重合は2段階で進行した。重合率70%前後までの第1段階では, 重合速度は大きく, 分子量は重合率とともに大きくなった。第2段階では, 重合速度は小さく, 分子量は重合率とともに小さくなった。エマルション中におけるメタクリル酸メチルの分布状態をNMRにより求め, 第2段階での分子量低下は, ポリメタクリル酸メチルの放射線による崩壊が, 共存するメタクリル酸メチルによって促進されるためであることを明らかにした。
  • メタクリル酸メチルの高温放射線乳化重合
    幕内 恵三, 片貝 秋雄, 萩原 幸, 荒木 邦夫
    1983 年 56 巻 6 号 p. 389-394
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    メタクリル酸メチルの放射線乳化重合を常温以上の高温で行った。重合速度及び分子量に対する重合温度及び線量率の影響は常温以下の低温乳化重合と同様の傾向を示した。しかし, 高温乳化重合では, 重合初期に大部分のモノマーが重合するため, モノマー存在下でのポリメタクリル酸メチルの放射線崩壊促進作用は明らかでなかった。重合温度が高くなるにともないエマルションの粘度は低下した。これは, 低分子量ポリマーが高温で加水分解され水溶性の酸性物質となるためであった。エマルション皮膜の耐水性は, この酸性物質によって低下することを, ポリアクリル酸エチルエマルショソを用いて明らかにした。
  • TGA法による3種の無機顔料とアマニ油変性アルキド樹脂との相互作用
    高岡 京
    1983 年 56 巻 6 号 p. 395-402
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    無機顔料 (SiO2, PbCrO4, PbO) 上のアマニ油変性アルキド樹脂の熱劣化を熱重量分析 (以下TGAと略す) とIRスペクトルを用いて調べることにより, 顔料と塗料用樹脂の相互作用を検討した。
    SiO2の表面は不活性なので, 樹脂のみのTGA曲線からSiO2上に種々の厚さにコーティングした樹脂のTGA曲線を差し引いたものは, コーティング層の厚さの影響を示す。
    樹脂のみとSiO2上10%樹脂膜 (重量比で樹脂 : 顔料=10 : 90) のTGA曲線の差曲線では, 温度差が50~97。C低い温度で劣化した。
    SiO2上の1%樹脂の膜厚の影響は10%樹脂の場合より22~24%増大した。
    PbCrO4上の10%樹脂膜のTGA曲線とSiO2上の10%樹脂膜のTGA曲線の差曲線はPbCrO4と樹脂の相互作用をあらわす。この相互作用は分解温度が13℃から27℃も低い温度で分解が起こることを示した。
    PbCrO4上1%樹脂膜の相互作用は分解温度を28℃から34℃も低下させた。
    同じ方法でPbOと樹脂との相互作用を解析した結果3段階で分解が起こった。
    PbCrO4上の1%樹脂膜中のエステル基は210℃で'20%分解し, それ以上の温度で激しく分解した。
    PbOと樹脂の相互作用により, 120℃でPbO上の1%樹脂膜のエステル基は分解し, カルボキシルアニオン基が生成した。
  • 塩化ビニル樹脂系塗膜のX線による劣化挙動
    竹島 鋭機, 川野 敏範, 高村 久雄, 阿波 克全
    1983 年 56 巻 6 号 p. 403-411
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    短時間で塩化ビニル樹脂系塗装鋼板の耐久寿命を予測する方法を開発するために, 連続X線照射による塩化ビニル樹脂系塗膜の劣化現象について検討した。その結果, 次のことがわかった。
    (1) 塗膜にX線を照射すると, 表面形状や光沢はほとんど変化しないが黒色化する。このような現象は, デューサイクルウェザーメータ試験ではおこらない。
    (2) デューサイクルウェザーメータ試験とX線照射試験とでは, 塗膜の変色形態可塑剤の浸出および塗膜われの発生形態などの点で著しく異なる。
    (3) 無機系の鉛安定剤は, 塩化ビニル樹脂が分解した際に副生する塩化水素を捕捉する作用を有する点で有機系のすず安定剤とは安定化作用が異なる。
    (4) 塩化ビニル樹脂の脱塩化水素, 鉛系安定剤の分解および塩化鉛の生成に関しては, X線照射試験とデューサイクルウェザーメータ試験との間に相関性があり, X線照射試験による促進効果はきわめて大きい。なお, これらの変化はX線照射エネルギーによって影響され, それぞれ指数関数または2次関数の関係が成立する。
  • X線による塩化ビニル樹脂系塗膜の耐候性の評価
    竹島 鋭機, 川野 敏範, 高村 久雄, 阿波 克全
    1983 年 56 巻 6 号 p. 412-420
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    塩化ビニル樹脂系塗膜の着色顔料として用いられた場合の黄鉛のコーティング処理効果について検討すると共に, X線照射試験が塩化ビニル樹脂の促進劣化試験として応用できるかについて検討した。その結果, 次のことがわかった。
    (1) コーティング処理していないノーコート黄鉛に比べると, 表面をアルミナやシリカでコーティングしたヘビーコート黄鉛のほうが化学的に安定である。そのコーティング効果は, X線照射試験やデューサイクルウェザーメータ試験による塗膜われの発生形態, 変色, 黄鉛の分解および塩化鉛の生成などの観点から評価できる。
    (2) X線照射試験, デューサイクルウェザーメータ試験および屋外暴露試験のいずれの場合でも, 塩化ビニル樹脂の分解は指数関数の関係で経時変化し, これらの間には相関関係が認められる。なお, X線照射試験による塩化ビニル樹脂の分解速度は屋外暴露試験の104倍以上の促進効果があり, きわめて短時間のX線照射試験によってデューサイクルウェザーメータ試験や屋外暴露試験における塩化ビニル樹脂の分解速度を推定することが可能である。
  • アクリル・メラミン系樹脂の硬化挙動に及ぼす低分子量物添加の効果 (2)
    出雲 孝治, 山本 聰
    1983 年 56 巻 6 号 p. 421-425
    発行日: 1983/06/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    熱硬化性樹脂の硬化挙動に及ぼす低分子量物含有の効果を検討するため, 種々の量のジオクチルフタレート (以下, DOPと略す) を含むメラミン硬化アクリル樹脂の動的粘弾性を検討した。その結果,
    1) 適当量のDOP含有は橋カケ点形成速度を速める。
    2) さらに, 硬化樹脂の橋カケ構造を検討することにより, 上記促進作用はDOPが硬化反応機構自体を変化させるものではなく, 可塑化効果に基づく官能基同志の衝突・確率の増加によるものであることが推定でき, 第II報で得られた結論を支持している。
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