自動車用鋼板の製造プロセスとして普及しつつある連続焼鈍材について, 鋼板組成との観点から, リン酸亜鉛系化成処理性への影響性を検討した。さらに箱焼鈍法で形成されるセメンタイトFe
3Cの化成処理性におよぼす影響についても検討した。
その結果, 金属添加法を用いる極低炭素鋼の連続焼鈍材の場合には, 金属元素の種類と添加量に応じて, 化成処理性に影響が現れることが確認された。Tiを添加する方法は典型的な焼鈍方法であるが, Ti/C原子濃度比が4程度になると, 化成結晶の形成されない部分が発生する。また, Tiの悪影響を回避するため, Nbを添加しTi/C原子濃度比を1.34とし, かつ (Nb+Ti) /C原子濃度比を2程度に制御したものでは, 化成処理性の向上が企られた。また, 箱焼鈍法ではFe
3Cの分散を伴なうが, 均質にFe
3Cが微細化分散された鋼板では化成処理性が良好であるものの, A
1変態点以上で焼鈍し, Fe
3Cを大きく成長させた鋼板では, 化成処理性が著しく低下する。これは微細Fe
3Cが化成結晶核形成サイトであるものの, それ自体はエッチングを受けにくいことを意味するもので, Fe
3Cを均質に制御分布させることが, 化成処理上重要であると考えられた。
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