チタンにμmオーダーの厚い極陽酸化皮膜を形成させることを目的として, 主として, リン酸25g/
l溶液, 硫酸35g/
l溶液, およびこれらの混合溶液中で, 直流, 定電圧で陽極酸化処理を行った。
これらの電解浴中で陽極酸化すると, 電解電圧の上昇にともなって火花放電が発生するようになってくるが, そのときの火花発生電圧は, 硫酸単独浴では約115V, リン酸単独浴では約220V, 混合浴では約130Vであった。この火花発生電圧よりも低い電圧で陽極酸化した場合は膜厚の薄い, いわゆる干渉皮膜しか生成しないが, これより高い電圧で陽極酸化すると, アナタース形やルチル形の酸化チタンを成分とする灰色の厚い皮膜が生成した。混合浴を用いた場合がもっとも厚い皮膜が得られ, 300Vで陽極酸化すると, 約8μmの厚さの皮膜が得られた。この厚い皮膜は多孔質で, 孔の発生は火花発生電圧あたりから明確に認められるようになり, 電解電圧の上昇にともなって孔径も増大し, 混合浴を用いて300Vで陽極酸化して得た皮膜には, 直径1μm以下の細孔から数μmの大きなものまで幅広く分布していた。
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