アルミニウムイソプロポキシドの加水分解によって, 透明な厚さ0.03~0.10mmの板状の純アルミナ (a) を合成した。このものと, 金属アルミニウムから得たアルミナ (b) との構造と物性を, X線回折, 熱分析, 比表面積測定などの方法により研究した。 (a) および (b) は結晶度の非常に低いpseudo-boehmite構造であり, 熱処理によってη, δ, θそして最後にα相へと転移する。これらの物質のOH伸縮振動吸収帯の形は互いに違う。 (b) は3,790, 3,730, 3,690cm
-1に吸収極大をもつが, (a) はこの波数領域で吸収極大はなく, 3,650cm
-1に低波数側がゆるやかに減少する極大がある。重水を用いるH-D交換反応によると, (a) は水分子の侵入できない少しなかった。このことから, 試料aのOH基は少なくとも2種類あり, かなりの部分は重水分子が侵入できない微細孔内にかなりの量のOH基を含有しているとみられる。また, アルミニウムエトキシドを原料とするアルミナ (c) のOH吸収帯は (a) のそれと同様であった。ゆえに (a), (c) と (b) とのOH吸収帯のちがいは, 異なる原料による表面または多孔構造のちがいにもとづくものと考えられる。
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