黒色顔料は,可視光線を吸収することで対象物を黒く着色し,構造部材を遮蔽・隠ぺいするために数多くのアプリケーションで用いられている。しかしながら,一般的に黒色顔料は,可視光遮蔽性に加えてUV遮蔽性も高い場合が多く,光硬化性化合物に配合した際の硬化性の低下が課題となっている。
そこで当社グループでは,高UV透過性を有する新規黒色顔料である,NITRBLACK UBシリーズを開発した。本稿では,その開発経緯とその特性や評価例を中心に紹介する。
電子ディスプレイの黒色部を美しく表現する技術として,可視光全域を強く,かつ,一定強度で吸収する黒色層を含む反射防止コーティングがある。しかし,既知の黒色材料は可視光吸収強度の顕著な波長依存性や表面粗さのため,黒色層として適切でない。そこで,黒色層に応用可能な薄膜材料を新規開発した。TiO2-δ-NbO2系およびTiOxNy系薄膜では,遍歴性電子およびバンド間遷移による可視光吸収が単一相で同時にバランス良く発現し,優れた黒色性が実現された。タッチパネルディスプレイにも応用可能な電気的に絶縁性の黒色薄膜材料としては,Ag-Fe2O3系薄膜を見いだした。これらの黒色膜および黒色絶縁膜を黒色層に用いた反射防止コーティングも作製できており,その製品化を目指している。
可視光線を吸収して黒色を呈するにもかかわらず,温度上昇を引き起こす近赤外線を高反射して,日射吸収率を抑制する新しい黒色遮熱顔料の開発を目指した。研究対象としては,カルシウムとマンガンの複合酸化物を母体とする黒色顔料と,セリウムとバナジウムの複合酸化物を母体とする黒色顔料の合わせて二種類の化合物について検討した。前者においては,Ca2MnO4が高い近赤外光の反射特性を有することがわかり,さらにTiおよびZnを少量固溶させることによって色調と日射反射率を向上させた。一方,後者においてはCeVO4にGdを少量固溶させることによって同様の改善を行った。その結果,いずれの試料についても黒色を呈しつつ,JIS K 5602規格において65%以上の高い日射反射率を達成した。
本稿では,黒髪の色と質感に影響を及ぼす因子を概説し,それらを制御する技術を紹介する。黒髪の色は,毛髪内部に存在するメラニン色素の質と量により制御される。しかし実際の毛髪の見た目の色の印象・質感は,メラニン色素以外の因子によっても大きく変化する。毛髪の内部で光が散乱されると,見た目の髪色が明るく見えることに加え,艶などの質感も異なって見える。さらに毛髪は繊維の集合体であるため,繊維の並び方によっても見え方が大きく変化する。ここでは,黒髪の見た目の印象を整える技術として,染毛技術に加えて,毛髪内部の光散乱の制御技術や,毛髪繊維の並び方を制御する技術について,簡単に紹介する。
日本に静電塗装が紹介されてから60年の節目を迎えるにあたり,工業塗装を取り巻く環境の変化に対応しながら進化してきた静電塗装機器について自動車産業を中心に振り返る。
前編では,各年代に起きたニーズ,とくに直材費削減,仕上がり品質向上に応じて開発されてきたベル型静電塗装機の変遷をたどる。後編では,エネルギー削減,環境負荷低減に応じて開発されてきた変遷の紹介から,さらには,国際的な取り組みである「カーボンニュートラル」や「カーボンネガティブ」を目指す社会活動GX(グリーントランスフォーメーション)に貢献するために今後どのような方向に進んでいくかについて報告する。
世界的なカーボンニュートラルに対する意識の高まりに加えて,エネルギー安全保障の観点からも再生可能エネルギーは注目を集めている。とくにペロブスカイト太陽電池は次世代型太陽電池として軽量フレキシブル,低コスト等の特長に加えて,これまで普及した結晶シリコン太陽電池とは異なるサプライチェーンが期待されることから,異業種からの新規参入が期待されている。さらにペロブスカイト太陽電池の実用化には部材開発の重要性が認識されており,本報では部材や装置メーカ等,ペロブスカイト太陽電池の研究開発の経験がない方々を想定して,ペロブスカイト太陽電池の構造,原理,製造プロセス,技術課題,世界の開発状況について簡潔に説明した。