多くの工業製品において塗装が施されており,塗膜の乾燥過程を定量的に評価することは製品の品質向上,製造工程管理の点において重要な要素である。また,インクの乾燥過程の評価も印刷業界において同様に重要であり,われわれはこれらの乾燥過程を非接触,定量的に評価可能なディジタルホログラフィ法について研究を行ってきた。ここでは,ディジタルホログラフィック顕微鏡による微小インク滴の乾燥評価について解説する。
水中で,表面が負に帯電する単分散なシリカ微粒子とイオン解離して正電荷を有する高分子電解質を用いて電気的に中和するような組成の水懸濁液を調製し,その懸濁液を入れたサンプル瓶をローラー式回転撹拌機によって回転させると,数百μmでサイズの揃った球状粒子が得られる現象を発見した。この系に,水に分散可能な表面が負に帯電したカーボンブラックなどの黒色物質を少量混入させれば,得られる球状粒子は色鮮やかな構造色を示すようになることもわかった。シリカ,高分子,カーボンなどから,さまざまな色を示す粒子が得られることから,環境に安全な新しい顔料として利用できるかもしれない。
粉体塗料は溶剤が含まれていないため,VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)の大気中への放出がほとんどない塗料である。近年,地球環境の保全や人間の健康安全に対する世界的な要求から,日本国内では有機溶剤を含まない粉体塗料の適用を念頭にした導入事例が多く報告されている。本報では,粉体塗料の特徴や粉体塗料の市場動向を紹介する。
デジタルデータから版やマスクを要せず非接触で直接パターンを描画できるインクジェットの特徴は,エレクトロニクスの製造に新しい可能性をもたらす。導電体,半導体,絶縁体のインクを使い,インクジェットの特徴を活かして,プロトタイプの作成から製品の量産まで,ディスプレイ,有機薄膜トランジスタ,プリント基板への適用が進んでいる。多様なる応用の可能性がある一方で,材料,インク,装置,プロセスなど多くの開発要素があり,研究開発の推進には工夫が必要である。
インクジェットとは微小な液滴を吐出し,メディアに対して着滴させる印刷方式の総称である。現在では,家庭用のプリンターをはじめとした印刷分野以外にも,多岐にわたる産業分野において使用されている技術である。近年,画像堅牢性や色安定性などの点で顔料系のインクジェットインクが注目されている。インクジェット色材用として顔料分散体を用いる場合,安定性を初めとして種々の特性を満たす必要があるが,各種顔料分散体を比較した結果,マイクロカプセル顔料が最も有効と考えられた。マイクロカプセル顔料をインクジェット色材として用いた場合の性能と特徴について紹介する。