本州四国連絡高速道路の海峡部長大橋の外面塗装には重防食塗装系を採用し,その面積は約400万m2と膨大である。海峡部橋梁の塗装の維持管理は長期的な視点に立ち,現場における塗替塗装は塗膜消耗に着目した劣化予測により上塗りおよび中塗りを適時に塗り替える予防保全を基本として実施するとともに,塗替費用を抑えることのできる塗装材料,塗装仕様の開発を行っている。本稿では,塗装の維持管理の考え方,維持管理方法および重防食塗装用の新しい塗料,塗装仕様の開発について報告する。
コンクリート構造物の劣化を抑制し,健全性を維持するためには,外部からの劣化因子(たとえば,二酸化炭素,塩化物イオン,水,酸素)の侵入を阻止,抑制することが有効であり,その手段の一つとして保護塗装が用いられる。コンクリート構造物の劣化機構により表面保護塗装への要求性能は異なる。適用にあたっては,劣化機構に合わせた材料選定が必要である。
「画像ベースインフラ構造物点検」は,点検対象を高精細に撮影し,その撮影画像に写る変状を解析し,近接目視相当の点検を行うものである。従来の点検手法である近接目視と比べ,この点検手法は現場での作業時間は少なく,危険な高所作業もなく,点検結果の質は数段高い。われわれはこの手法による点検の実施を支援すべく,当社独自のAI技術を用いて画像からひび割れやエフロレッセンスなどの変状を検知するサービスを提供している。今後,変状検知以外にもAIを活用できるようになれば,さらに点検は高度化されるものと考えられる。
インフラ劣化,老朽化による事故を未然に防ぎ,維持管理メンテナンス費用の削減には,予防措置への変換が重要となる。コンクリート大型構造物点検においては,外部からの点検手段が主であり,内部劣化に関しては構造物を傷める破壊検査がおもになっていたが,近年電磁波レーダーやエックス線といった新たな計測技術が台頭している。中性子線はコンクリートや鋼材に対する透過能が高くまた,水や塩分などの劣化要因の検出感度が高い。現場で劣化可視化評価可能な中性子線による非破壊計測技術,すなわち床版内部空隙や滞水を路面から可視化可能な二次元イメージングおよび,橋梁内部塩分定量分析可能とする中性子塩分計測を中心として紹介する。
重防食塗料の塗り替え塗装の課題とその対策塗料として,環境負荷低減,VOC削減,火災安全対策としての水性塗料,素地調整の問題,さび残存面への塗装,下地処理軽減としてのさび面素地調整補助剤を取り上げ,解説を行った。