農業分野に応用可能な蛍光色素として,ベンゾトリアゾール系青色蛍光色素が対応する5-カルボキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールから合成した。この蛍光色素をポリカーボネートに含有させ押出成形機で青紫蛍光フィルムを作製した。その蛍光特性は,蛍光主波長が410 nm,蛍光量子収率74%の高効率な発光を示し,優れた耐光性も示した。この蛍光フィルムは,太陽光の下で紫外光を青紫光に波長変換することができることを分光放射光量計の測定で示した。この青紫蛍光フィルムをトマト栽培に使用することで,トマト果実のリコピン含量が著しく増加することを見いだした。また,このリコピン含量の増加は,果皮表面の色彩測定でも明らかになり,対照区(フィルムの無)の完熟トマトと比較して,色差△a*値で2~6増加することがわかった。
ギ酸を触媒とする3-メルカプトプロピル(トリメトキシ)シランおよびトリメトキシ(ビニル)シランの加水分解重縮合により,それぞれポリ(3-メルカプトプロピルシルセスキオキサン)およびポリ(ビニルシルセスキオキサン)を合成した。これらの高分子化合物はゲル浸透クロマトグラフおよび核磁気共鳴により分析した。ほとんどのギ酸がギ酸メチルに変換されて排出されるため,これらは高い保存安定性を有する。さらに,この過程では大規模な合成が可能であった。シリコンウエハーへのスピンコーティングと,これらの高分子化合物の側鎖をチオール-エン反応することにより,有機-無機ハイブリッドコーティング膜を調製した。その鉛筆硬度は3H~6Hであり,分子量に依存して変化した。
近年,無機骨格と有機骨格を分子レベル~ナノレベルで組み合わせる無機有機ハイブリッド技術はコーティング分野においても耐久性と加工性の両立といった観点から盛んに行われている。本稿では,著者らが開発してきた,ケイ素-酸素結合の繰り返しからなるポリシロキサンを有機樹脂とハイブリッドさせた機能性樹脂について,そのハイブリッド手法と実用展開について,溶剤系樹脂,水性樹脂さらに紫外線硬化型樹脂として紹介する。
色や分子構造を大きく変えることなく,物質の性質を劇的に変える置換基はフッ素である。従来からフッ素は強い分子内電子吸引効果と特異的な分子間相互作用の発現から機能性材料に用いられてきた。ここでは,芳香族フッ素化合物の四重極モーメントに焦点を当て,無極性物質に対しての分子認識機構や固体材料への応用を紹介する。