自動車塗装などに用いられる電着塗装技術から着想し,独自のCFRPの製造・成形方法として,電着樹脂含浸法を開発した。炭素繊維を電着液に浸漬し,印加電流を制御することで樹脂を析出含浸する方法である。液中で炭素繊維間に樹脂を含浸するため,従来法と異なり,樹脂の真空吸引や加圧は不要となる。また,電着反応で樹脂と炭素繊維が強固に化学結合すると考えられ,強度特性に優れたCFRPが得られている。また,電着液を用いることにより,非石油由来素材であるセルロースナノファイバーを疎水化処理することなくCFRPと複合化することも可能となった。
ナノサイズの物質が基板からある程度密集して成長した構造をナノアレイと呼び,たとえば,ナノワイヤーが対象の場合はナノワイヤーアレイと呼ばれる。金属酸化物におけるこのような構造は,以前は気相での合成が主であったが,近年,水相における簡便合成法の開発が報告されるようになってきた。本論文では,いくつかの金属酸化物に着目してこれらの水相合成法をまとめるとともに,ナノアレイ構造体のいくつかの応用例について紹介する。
一般に自動車工場の中で「塗装工程」はCO2排出量が最も大きく,そのおもな要因は塗装ブースの空調のエネルギー消費とされている。当社はカーボンニュートラルを見据え,この塗装工程の省エネルギー化を実現する装置を製品化した。この製品の特長と従来とのエネルギー消費試算例を紹介する。
金属イオンと共役系大環状配位子からなる金属フタロシアニン錯体は,90年前に発見され鮮明かつ高い耐光性をもつ堅牢な青色顔料として使用されてきた。金属フタロシアニン錯体は,顔料としてのみならず光・電子機能を有することからさまざまな分子デバイス用材料としても利用されてきた。本稿では,フタロシアニン配位子の精密分子設計・合成による光機能発現および近赤外光の高効率光電変換機能に関し解説を行う。
色素増感太陽電池の電解質を固体材料のみで構成することで,簡便な塗布工程で製造できる固体型色素増感太陽電池を開発した。
適切な電流と抵抗になるようなモジュール設計をすることおよび,モジュール間を接続することにより良好な太陽電池特性を維持した状態で大面積化が可能となった。またリコーの固体型DSSCは,カラフル化とシースルー化の両立が可能であり高い意匠性を付与することができる。上記の特性より,従来の無機系太陽電池では得られない意匠性に富んだ大面積の発電素子を作製することができる。