プルシアンブルーは18世紀から用いられてきた青色顔料である。プルシアンブルーは多孔質な結晶構造をもち,放射性セシウムイオン吸着材,色変化素子,二次電池電極材料などさまざまな用途への応用が検討されている。本解説では近年明らかになったプルシアンブルーの優れたアンモニア吸着能を豚舎での悪臭除去実証試験の例を交えて紹介する。
半導体材料としてのダイヤモンド結晶の現状と今後の展望について述べる。おもに,単結晶ダイヤモンドの真の物性値を活かした産業応用の実現に必要となる,ウェハ供給体制の確立における現状の技術的課題についてまとめた。
金属有機化合物の光・熱反応により新しい蛍光体材料やフレキシブルな蛍光体膜を開発した。蓄光材料としては,高耐水性で高輝度赤色発光材料やLED励起で高輝度発光する蓄光材料を開発し,また,光MOD(metal organic deposition)法を用いることで,高輝度の白色蛍光体膜や蓄光膜をフレキシブル基板上に実現した。蛍光体膜は,バインダーレスのため,高輝度発光と高温,高湿において高い耐久性を示した。
海洋は二酸化炭素の大きな貯蔵庫であり,その吸収能の監視は地球温暖化の将来予測に欠かせない。吸収した二酸化炭素により海洋が酸性化し,生態系に影響を及ぼすことも懸念されている。また近年,二酸化炭素回収貯留(CCS)など,海域を利用した事業が検討されており,海洋の炭酸系諸量のモニタリング需要が高まっている。とくにpHは今後測定が盛んになることが予想され,比色分析による高精度な定量法は国際標準化も行われているが,測定に必要な高純度色素試薬や標準物質の普及状況については課題がある。
ここでは,「皆さんの研究室は爆発とは無縁であるか?」という視点に立ち,知られている発火・爆発事例について解説した。化学系でなくても理系の研究室であれば,何かしらのリスクが潜んでいることを認識していただきたい。また,こういうリスクに対処するための対策について簡単に紹介した。
ペロブスカイト太陽電池の高性能化に向けて,高分子p型半導体をホール輸送層として用いたセルの作製評価を行った。ジチオフェン-ベンゼンコポリマーを用いた場合には,酸素およびトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのp型ドーピング効果を明らかにした。ドナー-アクセプター型コポリマーを用いた場合には,ペロブスカイト/ホール輸送層界面にパッシベーション層を導入することで界面再結合が抑制され,セルの性能向上を示すことを明らかにした。
近年,規格外の野菜や伐採樹木の葉など植物の廃棄が年々増え続け,地球環境問題になっている。いずれも,可燃ごみとして処理され,その結果,環境負荷を増大させる原因になるからである。一方,環境負荷を減少させるために,太陽光や風力,地熱などだけでなく,新たな再生可能エネルギーが強く望まれている。これらを同時に解決するために,筆者らは,廃棄植物の光合成を活用して酸素とエネルギーを生成し,かつ,植物本来の緑色を活かして,建築の内外に美しい空間を創出する「光合成建築」を提案してきた。本稿では,「光合成建築」に関するメカニズムと実施例,構想例を紹介する。