熱可塑性フッ素樹脂/メチルメタクリレート樹脂系塗膜の光劣化機構および耐候性評価方法を検討するため, ESR装置を用いて生じるラジカル種とラジカルスピン数を求めた。光照射下で室温にて生じたラジカルは, g値, 超微細構造から-CH
2C(CH
3)(COOCH
3) と同定した。熱可塑性フッ素樹脂とメチルメタクリレート樹脂との比率を変化させた塗膜から生じるラジカルスピン数を, 標準試薬として, 4-ヒドロキシー2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルを用いて求めた。ラジカルスピン数は塗膜中のメチルメタクリレート樹脂の比率が高いほど多かった。さらにラジカルスピン数は, ESR測定ふん囲気によって異なる挙動を示し, N
2ふん囲気中では, UV照射時間に対してきわめて短時間の内に増加した後, ほぼ一定値に達したのに対して, O
2あるいは空気ふん囲気中では極大値を示した。さらに-196℃のESR測定からは, 水素ラジカルも見いだされた。これらの結果から, 熱可塑性フッ素樹脂/メチルメタクリレート樹脂塗膜の光劣化機構はメチルメタクリレート樹脂の主鎖切断が起こり, 生じたCH
2C(CH
3)(COOCH
3) ラジカルに酸素付加が起こると推定した。塗膜から生じるラジカルスピン数と屋外暴露による光沢保持率とを比較することにより, 含有フッ素樹脂量の多い塗膜ほど生じるラジヵルスピン数は少なく, 光沢保持率は高かった。
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