ステアリン酸,フラーレン-ステアリン酸混合系,硫酸化フラーレンのLB薄膜を作製した。これらアニオン性分子とハイブリッド膜を作製するために,カチオン性高分子のうち,剛性をもつCNC-Cationicと柔性をもつPDMDAACを組み合わせた。膜厚測定では,水層に高分子を加えることで基板表面の平滑性が失われることがわかった。一方,硫酸化フラーレンを用いた場合には,フラーレン骨格同士で二次元の集合が生じるとともに,硫酸基部分は均一に基板に吸着していることが予想された。電気化学測定において,ITO基板の表面反応に由来する光電流密度の増加が確認できた。この増加は,未転写のITO基板の場合と比較して硫酸化フラーレン/Milli-Q水では約30倍,ステアリン酸/CNCでは約3倍であり,電子移動の促進におけるこれらの物質の優位性が示された。一方で,硫酸化フラーレン/CNCでは約10倍に留まる。フラーレンの電子受容性を活かすためには,その分散の仕方や積層の順序が重要となることが明らかとなった。
ホヤ殻や木粉などのバイオマス原料を化学的に精製し,ナノ解繊処理を施すことで,高結晶性のセルロースナノ繊維(ナノセルロース)が製造される。表面にカルボキシ基を導入したナノセルロースを成膜して自立ペーパーを作り,金属塩化物の水溶液に浸漬すると,ペーパー中に金属イオンを導入することができる。この金属イオン導入ペーパーの熱拡散率を低湿度環境中で測定したところ,イオン半径や電気陰性度に依存して変化することを見いだした。本稿では,最近明らかになってきたナノセルロース製ペーパー材料の伝熱特性について概説し,イオン導入による熱拡散性制御について紹介する。
自動車新車用塗料は,環境への対応から水性塗料化が進んできているが,塗装ブースの温湿度管理を緩くできる溶剤型塗料もまだ使用されている。その溶剤型塗料について,おもにベース塗料を中心にして,塗料設計とその求められる機能についての概論を紹介する。
Kawasakiは長年モーターサイクルに採用する塗装色に関してこだわりが強く,他社に比べても多彩な塗装色を保有し生産を行ってきた。今日では自動車メーカーでも量産車に採用しているキャンディ塗装を長年にわたり塗装し続けてきた。2014年にはプレミアムモデルであるNinja H2/H2Rの専用色として真の金属感を追求し銀鏡塗装を採用した。この塗色はモーターサイクルの塗膜性能および外観要件を満たすように開発し量産化したものである。本稿では銀鏡塗装の開発から量産化までの取り組み内容を紹介する。
現在主流であるp型単結晶裏面不動態(PERC)太陽電池に置き換わる技術として,n型単結晶Siウエハを用いた各種太陽電池の研究開発が進展している。一方で,結晶Si太陽電池の変換効率は商用サイズウエハにおいても理論限界効率に迫りつつある。さらなる変換効率向上には異なるバンドギャップの太陽電池を組み合わせた多接合化の技術開発が必要である。最近では,ペロブスカイト太陽電池と組み合わせたペロブスカイト/結晶Siタンデム太陽電池が注目されている。変換効率の向上に加え,信頼性の向上による生涯発電量最大化が太陽光発電のいっそうの普及拡大に必要不可欠である。太陽電池モジュールの発電性能の低下要因と信頼性向上のために必要なモジュール技術についても言及する。