ブチルリチウム (BuLi) またはBuLiとカーボンブラック (CB) との複合体を用い, 窒素中でトルエンを溶媒にして, メタクリル酸メチル (MMA) やメタクリル酸ブチル (BMA) のCB粒子表面へのグラフト重合反応を0℃で調べた。
BuLiによるCB存在下のMMAの重合では, スチレンの系とは異なり, 開始反応がCB表面とBuLiとの反応に優先した。ファーネスブラック (HAF級ブラヅク) の表面を水素化ホウ素ナトリウムで還元すると, もとのCBの系に比べて, 生成するホモポリマーの重合度が小さかった。一方, カラーブラックとBuLiとの複合体を用いてMMAなどのメタクリル酸エステルを重合すると, アクリロニトリルの系とは違って, グラフトポリマーはCB粒子を含んだゲルの生成を伴った。しかし, 複合体の形成に必要な量以上のBuLiが存在する系では, その量の多いほどゲル量が減少し, グラフト率が低下した。このようなことから, CB粒子の表面にMMAやBMAなどがグラフト重合する速度は比較的小さく, BuLiによるそれらモノマーの重合速度に及ぼないこともわかった。なお, ここでは, 得られた実験結果を解析するとともに, ゲルの生成機構を考えた。
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