色材協会誌
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58 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • カルボン酸ヒドロキシエチルアミド基を含むオリゴソープの合成と性質
    鈴木 茂, 石上 裕
    1985 年 58 巻 11 号 p. 633-639
    発行日: 1985/11/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    マレイン酸・アルキル (C1~C16) ビニルエーテル交互共低重合体 (I) の側鎖に, カルボン酸ヒドロキシエチルアミド基を導入し, 水溶性のオリゴマー型分散剤を合成した。すなわち, Iと15倍モル比の2-アミノエタノールとを155~160℃, 10分間反応させたのち, 過剰の2-アミノエタノールを減圧下に留去した。生成した青色ペーストをN/100塩酸溶液あるいは少量の水で洗い, 減圧乾燥して得られたオリゴソープは, 表面張力低下能が著しく, フタロシアニン顔料 (α-Cu-Pc), カーボンブラックおよび酸化鉄 (α-Fe2O3) に対して大きな分散作用を示した。それらは疎水表面をもったα-Cu-Pcに対して, C16とC12の長鎖アルキル鎖をもつオリゴソープを用いたときが, C1誘導体と比較して著しく優れていた。さらに三種類のオリゴソープのすべては, 親水性のα-Fe2O3に対して良好な分散剤であった。また, カーボンブラックに対するオリゴソープの分散作用は, C16>C1>C12の順に良かった。これらの結果は, オリゴソープのカルボン酸ヒドロキシエチルアミド基あるいはアルキル鎖と顔料表面の性質との間の相互作用に帰ぜられた。
  • 福井 寛, 田中 宗男, 中野 幹清
    1985 年 58 巻 11 号 p. 640-647
    発行日: 1985/11/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    プロピレンオキシドと顔料の反応を50℃の気相法と37℃のアンプル法で検討した。その結果, 顔料によってはプロピレングリコールやポリプロピレングリコールが生成した。
    紺青やカオリンから生成したポリプロピレングリコールの分布は, 4量体を中心にPoisson分布していることが認められた。
    顔料によるポリプロピレングリコールの生成率と, 同じ顔料によるt-かブタノールの脱水率とは良い対応があり, 反応は酸点によるカチオン重合で進行していると推定した。
  • 黒色皮膜の調製
    伊藤 征司郎, 藤田 安彦, 桑原 利秀, 田中 雅美
    1985 年 58 巻 11 号 p. 648-652
    発行日: 1985/11/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を300℃前後に加熱しておき, これにジシクロペンタジエンやピレンなどの有機化合物の蒸気を含む空気あるいは空気と窒素の混合ガスを吹きつけて, 有機化合物を熱分解させ, 皮膜の細孔内で炭素を析出させて固定化し, 黒色のアルミニウム陽極酸化皮膜を得た。
    一般に, 同一の有機化合物を使用しても, 皮膜をあらかじめ染色しておいた場合の方が, 染色しない場合よりも低い温度で黒色になった。黒色の着色皮膜が得られる限界膜厚と限界処理時間は2μmおよび10分間であった。また, 窒素を用いず, 空気だけの方がより低い温度で黒色になった。
    この方法で得られた黒色皮膜は硬質皮膜なみの硬度を持ち, 抜群の耐光性を有していた。
  • 武井 昇, 山沢 昌弘, 中道 敏彦, 吉田 豊彦
    1985 年 58 巻 11 号 p. 653-660
    発行日: 1985/11/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    モノマー組成, 分子量, 濃度の一連に異なるアクリルオリゴマーのメチルペンチルケトソ濃厚溶液の粘度について検討した。
    粘度の温度依存性は分子量が低い範囲ではWLF式で説明されたが, 分子量が大きくなるとWLF式からのずれが大きくなった。しかし, その場合でもWLF式中の定数の1つを適当に選ぶと良く適合することがわかった。
    WLF式により溶液の粘度から計算した溶液のガラス転移温度と溶剤濃度との間には良い直線関係が成立した。
    濃度, 温度各2点ずつ計4点の粘度測定を行うと, オリゴマーの分子量が大きい範囲でも任意の濃度, 任意の温度における溶液の粘度を精度よく推定できることを示した。
  • ESCAによる塗膜表面の極性基の配向と硬化時のふん囲気ガスとの関係の研究
    多留 康矩, 高岡 京
    1985 年 58 巻 11 号 p. 661-667
    発行日: 1985/11/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    アルキド樹脂, アミノアルキド樹脂およびエポキシ-ポリアミド樹脂を極性の異なったガスふん囲気下 (大気中, オクタン蒸気中および水蒸気中) 130℃で5h. 加熱硬化させ, その塗膜表面のESCAスペクトルおよび水との接触角を測定し, 表面における極性基の配向の度合と硬化時のふん囲気ガスとの関係を検討した。
    アルキド樹脂を水蒸気 (極性ふん囲気) 中で硬化させると, 極性基の表面配向は多く, 一方, オクタン蒸気 (無極性ふん囲気) 中硬化では, 表面の極性基が少ない。
    アミノ-アルキド樹脂を水蒸気中で硬化させると, 窒素含有極性基は内部にもぐり込み, オクタン蒸気中で硬化させると逆にこれらの極性基は表面に多く配向する。
    エポキシ-ポリアミド樹脂の場合, アミノアルキド樹脂と同じ傾向が認められるが, 特性基が動きにくく, その変化の度合は小さい。
    このように, 塗膜表面の極性基の割合は硬化時のふん囲気の極性に影響され, その変化の度合は樹脂中の特性基の動きやすさや硬化反応の起りやすさによって異なる。
  • 光音響分光法によるポリエチレン中の表面処理黄鉛の耐熱性の検討
    高岡 京, 多留 康矩, 横山 稔, 本田 宏
    1985 年 58 巻 11 号 p. 663-674
    発行日: 1985/11/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    表面改質黄鉛および黄鉛を0.5%添加したポリエチレンの射出成形パネルの表面層の変色と加工温度との関係を, 光音響分光法で調べた!
    加熱変色は, (CH2)n中の黄鉛の熱還元分解反応 (Cr+6→Cr+3) によるCr2O3の生成が大きい原因の一つと考えられる。
    黄鉛-ポリエチレンパネルの表面のCr2O3生成率は射出成形温度に比例し, 240℃~280℃間では0.355%/℃, 280℃~320℃間では0.183%/℃で, 320℃では24.4%を示した。
    ZrO2-SiO2被覆黄鉛-ポリエチレンパネルでも未処理黄鉛と同じ傾向を示すが, 240℃~280℃間で0.108%/℃, 240℃~280℃間で0.088%/℃で, 黄鉛の表面改質により, Cr2O3生成を約1/3に抑制した。
    表面改質黄鉛間では, Cr2O3生成の抑制効果は, 少差ではあるがZrO2-SiO2>SiO2であった。
    光音響分光測定で, 変調周波数を大きくして試料パネルのより浅い表面層を分析した結果, 大きい変色および化学変化が起っていることがわかった。
  • 坪田 実, 荒瀬 正幸, 富田 久和, 本山 啓二
    1985 年 58 巻 11 号 p. 675-682
    発行日: 1985/11/20
    公開日: 2012/11/20
    ジャーナル フリー
    アミノアルキド樹脂塗料の重ね塗り系において, 上塗りまでの放置時間 (塗り間隔) が短いほど層間はく離が起きやすい。このような現象の原因と対策について知見を得る目的で実験を行った。数種のエナメルを用い, それら塗膜の層間付着性に及ぼす塗り間隔および下塗り塗膜の紫外線照射 (UV) 処理の影響を調べた。また, 層間付着性の要因を解明するため, 下塗り塗膜の経時変化を接触角・IR (ATR) 分析・ESCAにより追跡した。結果をまとめると次のようである。
    (1) アミノアルキド樹脂塗料の2層塗装系では, 一般に, その塗り間隔の増大に伴い層間付着性は向上する。この付着性向上の一要因として, 空気による塗膜の表面酸化が推定できた。
    (2) 層間付着性は300nm以下の短波長域のUV照射により著しく向上した。また, 照射時間にも適切な範囲が存在した。
    (3) UV処理は塗膜表面を酸化し, COOH, OH, C=0, ヒドロペルオキシドなどの基を導入する!これら極性基濃度の増大に伴い塗膜のぬれ性と層間付着性が向上した。
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