印刷インキの印刷用紙への浸透はインキセットとも関連し, 印刷適性上重要な問題である。また, 浸透現象自体は種々の物理的および物理化学的問題が関与して, 複雑ではあるが科学的な解析が可能である。
本研究では, 印刷された紙の裏面の反射率から浸透深さを求める画像解析システムを用い, インキ浸透現象を検討した。
印刷用紙としてはフッ素系耐油剤を内添加工した吸油度の異なった手漉紙が用いられた。
印刷インキの浸透現象は全体としてLucas-Washburnの式が適用できることが示された。
浸透深さは紙の地合の影響で場所によって異なり, 浸透深さのバラツキは時間につれて大きくなる。この傾向は耐油剤濃度0.1%前後で最も顕著であることが観察された。
耐油剤無添加のサンプルではプリントスルーの現象が現れたが, 耐油剤の添加によってインキ浸透は抑制された。耐油剤添加とともに浸透速度は遅く, 浸透深さはより浅い位置で平衡値に達したが, この現象をパーコレーション理論の立場から検討した。
一方, 印圧下でのインキ浸透現象はOlsson-Pihlの式で説明され, 実験結果からも耐油剤の量に関係なく瞬間のインキ充填効果がインキ浸透に圧倒的な影響を及ぼすことが示された。
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