アクリルメラミン塗膜6種を70wt%硫酸に所定時間浸せきし, 硫酸の浸透挙動と架橋切断反応との関係を実験および数値模擬計算によって検討した。塗膜中の硫酸およびメラミン樹脂の分布はS, N元素のEPMA分析で, 硫酸相に抽出されたメラミン樹脂量は紫外吸収分析で, それぞれ求めた。架橋切断の反応量とメラミン樹脂の抽出率 (S
M) との関係は数値模擬計算によって解析した。
硫酸は塗膜組成に特有の速度で浸透した。塗膜中の硫酸は濃度勾配がなく, 際立った境界を示した。S
Mは塗膜種によって異なる速度で増加したが, SM軸切片はすべての塗膜で共通であった。模擬計算から, S
Mは架橋の分解反応量に比例し, S
M軸切片は酸の浸透速度と架橋切断の反応速度定数との比に比例することがわかった。この結果は, アクリルメラミン塗膜への硫酸の浸透がFick型の拡散ではなく, 架橋の切断によって生じることを意味する。
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