銅 (II) イオン, 亜鉛 (II) イオン, あるいはニッケル (II) イオソの添加 (5.0×10
-3M) により, 0.4M水酸化カルシウム懸濁液と二酸化硫黒との反応系 (0℃) から生成する準安定相である亜硫酸カルシウム四水和物結晶の赤外吸収スペクトルを測定した。安定相である亜硫酸カルシウム半水和物結晶では3,380cm
-1に結晶水のO-H伸縮振動による比較的小さい吸収があるのに対して, 四水和物の場合は3,000~3,900cm
-1に結晶水によるきわめて大きい吸収が認められた。半水和物では亜硫酸イオンによるS-O (S=O) の吸収が930cm
-1だけに認められるのに対して, 四水和物では930cm
-1と980cm
-1に認められることが明らかにされ, 四水和物結晶と半水和物結晶のS原子とO原子の周辺の結合状態に相違があることが暗示された。
赤外吸収スペクトルの測定に用いたものと同じ条件で合成した四水和物結晶について, DTA, TG, DSCを使用してその熱特性を検討した。四水和物から半水和物への変化が始まる温度に関して, 添加した金属イオンの種類によって差があることがDTA-TG曲線およびDSC曲線によって確認された。すなわち, 銅 (II) イオンの添加により生成した四水和物が熱的にもっとも安定であり, 次が亜鉛 (II) イオンの添加によるもの, 次がニッケル (II) イオンの添加によるものであることが明らかにされた。また, 四水和物から半水和物への変化に要する熱量はいずれの場合も四水和物1molあたりおよそ17kJであった。
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