色材協会誌
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85 巻, 3 号
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研究論文
  • 酒井 秀樹, 佐藤 彰, 長濱 正光, 阿部 正彦
    2012 年 85 巻 3 号 p. 98-101
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/07/09
    ジャーナル フリー
    オレフィン系ポリマー(ポリエチレン:PE)に,核物質として多孔質の無機物質を含む超微細粒子(リポソーム;直径約200 nm)を添加してPEフィルムを形成させ,その添加効果を検討した。その結果,CO2を吸収する核物質として多孔質のアルミノケイ酸ナトリウム,PEの結晶核剤としてSodium 2,2'-methylene-bis-(4,6-di-tert-butylphenyl)phosphateを含むリポソーム(CO2吸収剤)をPEに添加したところ,その結晶化度が増加したので,形成したPEフィルムの機械的強度は向上することがわかった。さらに,焼却炉を想定した燃焼実験において,上記のリポソームを含むPEフィルムは,無添加のPEフィルムの場合よりも発生する二酸化炭素の量を約60%削減できることがわかった。
  • 酒井 秀樹, 佐藤 彰, 長濱 正光, 阿部 正彦
    2012 年 85 巻 3 号 p. 102-107
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/07/09
    ジャーナル フリー
    前報1)において,ポリエチレン(PE)にある種の化合物を添加することにより,燃焼時に発生する二酸化炭素の量を半減できることを報告した。本報では,前報と異なる化学物質(酸化亜鉛あるいはデンプン)を添加することを試みた。
    その結果,無機物質として酸化亜鉛を核剤とするナノカプセルポリマー充填剤(酸化亜鉛含有リポソーム)を混練した場合には,無色透明のフィルムのままで400 nm以下の紫外線を半減し,フィルムの強度も通常のPEと同等であった。また,植物由来のデンプンとPEの相溶化剤(12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム)を核剤とするナノカプセルポリマー充填剤を混練したPEフィルムは脆くなることはなく,ある程度の強度を保つことができた。
    前報1)と今回の結果を考え合わせると,PEの品質を向上させるためには,核剤となる物質をそのままポリマー中に分散させるのではなく,リポソーム内に取り込んだ形(ナノカプセルポリマー充填剤)として混練することがきわめて重要であることがわかった。
解説
  • 加納 博文
    2012 年 85 巻 3 号 p. 108-112
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/07/09
    ジャーナル フリー
    いわゆる錯体と同様,遷移金属イオン,有機配位子および陰イオンからなる配位高分子の結晶は,水素結合や芳香族環の間の比較的弱い相互作用の存在により,ガス分子の圧力変化に従って協同的にクラスター形成反応を進行させ,構造変化をともなうガス分子の取り込みや放出を示すことが明らかになっている。この現象は,金属周りの配位構造や結晶の集合状態が変化するため色調も変化し,見た目にも変化を確認できるものであり,層状結晶の層間隔の拡張・収縮にともなうので,ゲートが開いたり閉じたりすることに例えて,ゲート現象と呼んでいる。金属イオン,対陰イオンの組み合わせにより,多様なガス分子に対して,複雑な応答を示すことがわかってきている。
    図-2 ELM-11のガス吸収前の構造
最新化粧品・ヘルスケア講座(第VII講)
最新印刷講座(第V講)
  • 佐野 康
    2012 年 85 巻 3 号 p. 117-121
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/07/09
    ジャーナル フリー
    いかなる印刷も版の品質が向上し,その後インク,ペーストの印刷性能が向上し技術が進歩してきた。スクリーン印刷の版の品質は,スクリーンメッシュにより決定される。
    50年以上前からエレクトロニクス分野で使用されてきたステンレスメッシュは,より線径が細くより高メッシュ,そしてより強度が高くなることでスクリーン版の品質を向上させてきた。
    従来の3倍の強度を有するステンレス線材を40%という開口率で稠密に製網し,高いテンションで紗張りすることでファインライン印刷に適した「無変形スクリーン版」が実現した。「無変形スクリーン版」は,これまでのスクリーン印刷の課題であった「版離れ」と版伸びの問題を解決できた。
    今後,「無変形スクリーン版」に対応した高粘弾性ペーストが数多く開発されることで,高品質なスクリーン印刷を誰でもがエレクトロニクス分野の汎用プロセスとして利用できる環境が整ってくると期待される。
基礎塗装講座(第III講)
  • 森田 信義
    2012 年 85 巻 3 号 p. 122-129
    発行日: 2012/03/20
    公開日: 2012/07/09
    ジャーナル フリー
    スプレー塗装において塗料は,変形と分裂のプロセスを経て細かい粒子となる。エアスプレーでは高速空気流が,エアレススプレーでは大気空気が,エアエアレススプレーでは大気空気に加え噴射空気流が塗料に作用して変形と分裂を促している。塗料はいずれも長い細紐形状に変形したのち分裂して微粒化するが,塗料において液糸が長く伸びるのはおもに塗料の高い粘性による。工業塗装で広く用いられはじめている高意匠性塗料・塗装の課題である塗面に発生するムラは,部分的に塗着粘度が低いことにより発生し,スプレー塗装において良好な塗面を形成するには塗料粒子塗着粘度を塗面全体および局所的に適切な値に管理・制御することが最も重要な事項である。
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