色材協会誌
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84 巻, 3 号
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研究論文
  • -光学画像解析による研究の試み-
    下出 祐太郎, 大谷 芳夫, 安永 秀計
    2011 年 84 巻 3 号 p. 81-86
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2011/06/23
    ジャーナル フリー
    漆塗りの熟練職人が見分けている漆物の光学特性を明らかにするため,測色と光沢測定に加えて,天然漆塗平面板が反射した画像の解析を行なった。天然漆塗り試料・合成ペイント塗り試料・フィルムコーティング試料の2つの角度から撮影した光学画像における輝度の分布を取得し,そのヒストグラムの包絡線から輝度変化曲線を抽出した。漆の専門家のみが違いを見分けるような3種の黒色平板試料の分光反射特性や光沢度に明瞭な違いは観測されない。しかし,試料の光反射画像の輝度変化曲線はガウス関数によってフィッティングされ,正規分布を示す光画像の周縁の輝度変化において,天然漆塗り試料は輝度分布曲線の面積が最も狭く,その標準偏差が最も小さい。さらに,試料法線と反射画像取得角間の角度が大きくなると,天然漆塗り試料のみ,その輝度分布曲線の面積と標準偏差が減少する。
  • 水上 雅史, 杉原 理, 山辺 秀敏, 安東 勲雄, 黒川 幸子, 栗原 和枝
    2011 年 84 巻 3 号 p. 87-91
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2011/06/23
    ジャーナル フリー
    異種材料の接合・接着特性を制御する要因を解明できれば,複合材料の高性能化,高機能化にむけて,具体的な設計指針を与えると期待される。本研究では表面力装置による接着力の精密測定と光学顕微鏡による接着面の同時観察により,三種類のNiCr膜(Ni100,Ni90Cr10,Ni60Cr40)とポリイミドフィルム間の接着を空気中への露出時間を変えて評価した。NiCr表面を空気中に露出後1時間以内の接着力の大きさはNi90Cr10>Ni60Cr40>Ni100となったが,Crを含む表面の接着力は露出時間にともない減少し,20時間後ではNi100>Ni90Cr10≒Ni60Cr40となった。一方,窒素雰囲気中では接着力の経時変化が抑制された。従来報告されているようにCrはポリイミドとの接着力の増加に寄与することが確認され,また空気中では容易に酸化されるため露出時間増加にともない接着力は減少することがわかった。
総説
  • 荒川 裕則
    2011 年 84 巻 3 号 p. 92-98
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2011/06/23
    ジャーナル フリー
    色素増感太陽電池(DSC)の研究開発の現状について紹介した。まず,DSCの原理と構造,発電機構,特長について簡単に解説した。5 mm角程度のDSCの世界最高性能として11~12%の変換効率が達成されている。この結果を受けてモジュール化の研究開発が活発に行われ,5 cm角から10 cm角レベルの大きさで9~10%の性能が報告されている。30 cm角から1 mサイズのモジュールの試作もされているが,性能は7%程度である。実用化のための耐久性試験についても検討されており-40~85℃までの温度サイクル試験,85℃で1000時間の耐熱試験,500時間以上の連続光照射試験においても優れた耐久性が示され,実用化に向けた屋外実証試験を行っている企業もある。最後に,変換効率15%を目指したDSCのさらなる高性能化のための研究開発課題についても述べた。
解説
  • 小林 広典, 至田 知代
    2010 年 84 巻 3 号 p. 99-103
    発行日: 2011/02/20
    公開日: 2011/06/23
    ジャーナル フリー
    家電製品の色彩はファッション性を重視した小型家電製品から,インテリアトレンドとの相性を考えた生活家電製品まで幅広いと言える。小型家電製品とは携帯電話やポータブルオーディオといった家電製品を指し,生活家電製品とはテレビやエアコンといった比較的大型の家電製品を指す。家電製品の色彩を調べることは両方の最新のトレンドを知るてがかりになると仮説を立て調査した。家電製品をポータブル家電,AV家電,キッチン家電,クリーン家電の四つのカテゴリに分類し,それぞれの色彩トレンドがわかるようカラーポピュラリティを用いて考察した。カラーポピュラリティとは各カテゴリの調査母数に対してある色彩にあてはまる製品数の割合を計算し分析したもので,これをその色彩を用いて表現したものである。これによって各カテゴリごとのトレンドを把握するだけでなく,四つのカテゴリを比較することで,製品の使用目的の違いによる色彩の傾向を分析することができる。また,ターゲット層の違いによる嗜好色の違いを小型家電製品を3機種挙げて考察したり,家電製品としては新しい意匠を取り上げて考察し,色彩トレンドを多角的に把握できるようまとめた。
最新顔料講座(第VII講)
  • 磯部 薫
    2011 年 84 巻 3 号 p. 104-109
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2011/06/23
    ジャーナル フリー
    顔料用二酸化チタンは亜鉛華,リトポン,鉛白などの白色顔料に比べて屈折率が高く,粒度が細かいので白色度,隠ぺい力,着色力などの光学的性質に優れている。さらに毒性もなく,光や熱に対しても安定であり,また耐薬品性にも優れていることから“白色顔料の王様”と呼ばれ,わが国の全白色顔料の約70%を占めるに至っている。二酸化チタン顔料は,塗料,インキ,プラスチックス,紙,ゴム,化繊,化粧品など幅広い分野で使用されている。今回は,二酸化チタンの歩みとして歴史から基本的な物性を中心に顔料としての特性などを概説し,粒子径の観点から酸化チタンの特性(紫外線吸収能,光散乱能,光触媒活性など)を利用した白色顔料用途以外の機能性材料として新しいカテゴリーを形成する二酸化チタン材料の展開を解説する。
最新塗料講座(第VI講)
  • 大澤 善次郎
    2011 年 84 巻 3 号 p. 110-121
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2011/06/23
    ジャーナル フリー
    塗料・塗膜の構成成分など一般的なことを概説し,劣化の基本的事項,すなわち定義,要因および症状について簡単に述べた。次いで,塗料の主成分である樹脂の劣化機構,および金属化合物・顔料と残留溶剤の影響について説明した。すなわち,樹脂の複雑な劣化機構を,一次構造(高分子鎖)の化学反応および高次構造(分子集合体)の変化の視点から具体的な例を示し説明した。金属化合物・顔料の樹脂の劣化に対する影響は,樹脂の種類・状態・劣化条件および金属の種類や配位子などにより著しく異なり,きわめて複雑である。そこで劣化の促進および抑制作用の観点から説明し,それぞれ具体的な例を示した。また,残留溶剤の影響についても触れた。最後に,塗膜の長寿命化は,樹脂の製造および塗装技術の著しい進歩と高性能の安定剤の開発に負うところが大きいことに触れ,実用化されている塗膜の一例を紹介した。
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