抵抗力大と云はれてる都會の學齢期兒童の結核は如何なる状態に蔓延し, 如何なる病型をとり, 如何なる結末になるかを知る事は, 結核豫防對策上最も效果的だと思ひ, 先づ東京市下谷區10校の通學兒童計9866人を資料に昭和14年9月から15年3月迄詳細なる結核綜合檢査を行ひし結果, イ) 全被檢兒童の39.6%が結核感染者にして尋常一年の23.1%より漸次増し, 尋常六年で50.4%高等科になり急に増加して高等二年で男兒は61.8%迄になるが女兒は51.6%なる事は青春期になり, 男兒は家族外感染の多くなる事を裏書する.又學校によつては尋常六年で84.6%の所もあつた.ロ) 結核罹病率も大體感染率に併行しており, 全學童中752名に結核性病變が見られ, その中肺結核, 肋膜炎の重症者「要療養要休養」者を76 (0.8%) , 「要監察要注意」程度の病變者を676 (6.9%) 發見したが學校によつては前者の皆無の所があつた.後者の程度の病變を速に發見し適當なる處置をとる事が重要なる事を知り得た.ハ) レントゲン所見では有病變者752名中277名をフイルム撮影したがその中肺門部病變 (肺門部肺浸潤も含む) が47.7%, 早期肺浸潤が15.9%, 石灰化播種型6.9%, 粟粒結核0.7%, 成人型晩期型が7.6%, 初期石灰化變化群のみのもの0.3%あり, 肺絞理増強44 (19.0%) , 肺野索状陰影増強9 (3.3%) はエピツベルクローゼ及浸出性肺炎型浸潤等の早期型二次性結核と共に學童に多い結核性初期病變として注意を要する.次にニ) 要療養休養兒童の經過を見たが3ケ月乃至10ケ月間後に調査し得られた44名中死亡1人, 入院3人, 自宅臥床中5人の卒業及び逋學中30人, 上級學校入學5人あつた.割合抵抗力強く輕快するものなるを知つたが更に乳幼時から成人に至る迄の發生の途轉經過を觀察する事が必要だと思ふ.現在緒に付いれ學童結核豫防の施設擴充を望む.ホ) 尚赤沈反應, ヘ) ツベルクリン陰性兒童の事に就き附言した.
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