昭和医学会雑誌
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69 巻, 6 号
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最終講義
原著
  • ―昭和大学病院16年間の疫学調査からの報告―
    佐藤 伸弘, 門松 香一, 保阪 善昭
    2009 年 69 巻 6 号 p. 481-489
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    今回われわれは顔面骨骨折の中でも眼窩下神経に障害を及ぼす可能性が大きく,全顔面骨骨折中20~40%と比較的発生率の高い頬骨骨折を研究対象とし,過去16年間で当院を受診した頬骨骨折患者で神経障害残存をきたした症例とその骨折のタイプについて研究した.結果に関しては骨片の転位により分類されたKnight & North分類を用いた.頻度,男女比,左右差,手術比率をそれぞれ調査し,過去の当科疫学統計報告と比較して同様の傾向であった.新たな知見として骨折線の眼窩下神経孔通過の有無により分類(通過群:A群,非通過群:B群)を行い,いずれの骨折も有意差なく存在することが判明した.さらに神経障害の出現はA群に有意に多く,その中でも頬骨回旋転位群により多く出現していることが判明した.また,神経障害改善率はA・B群間では有意差を認めず,それぞれ転位を伴わない骨折の場合は高率であったが,骨片が転位するか粉砕するような場合,改善率が低下することが判明した.加えて,神経障害の出現に関しB群では眼窩下神経孔より近位での損傷が予想され,今後神経障害の改善率を向上させるため,精査や手術操作に関しさらなる研究が必要と思われた.
  • ―CKDモデルラットにおける検討―
    森田 亮, 森 雄作, 李 相翔, 平野 勉
    2009 年 69 巻 6 号 p. 490-498
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    Chronic kidney disease(CKD)の治療に,スタチンの腎保護作用が注目されている.スタチンは主作用の血清コレステロール低下と独立して腎保護的に働く多面的作用を有するが,各スタチン間の差は明らかではない点が多い.本邦で開発された強力なコレステロール低下作用を有するピタバスタチンの多面的作用としての腎保護作用を検討した.スタチンはラットではコレステロール低下を示さないため,コレステロール低下作用を介さない腎保護効果の検討が可能である.CKDモデルとして左腎臓2/3と右全腎臓を摘出して5/6腎臓摘出ラットを作成し,スタチン群(ピタバスタチン3mg/kg/day)と非スタチン群に割り振り12週間観察した.非スタチン群とスタチン群で食事摂取,体重,および血清脂質の差を認めなかったが,スタチン群は血清クレアチニン値(1.1±0.8 vs. 1.9±0.7mg/dl),尿蛋白量(175±45 vs. 273±35mg/ml・Cre),尿アルブミン量(968±95 vs. 1483±214μg/ml・Cre)が低値,クレアチニンクリアランス(23±7 vs. 13±4ml/min/g)が高値であった.残腎の組織学的所見ではスタチン群は糸球体硬化指数(2.5±0.4 vs. 3.2±0.4)と間質線維化度(24.3±3.8 vs. 34.8±5.8)の改善を認めた.Quantitative real-time PCR法による検討では非スタチン群で認められたtransforming growth factor-beta (TGF-β)とconnective tissue growth factor (CTGF)の過剰発現がスタチン群では抑制された(TGF-β:1.52±0.33 vs. 2.32±0.56,CTGF:1.32±0.34 vs. 2.16±0.52).組織学的所見と血清クレアチニン値,クレアチニンクリアランス,尿蛋白量,尿アルブミン量は有意な相関を示し(r=0.684~0.913クレアチニンクリアランスのみ負の相関),TGF-β,CTGF mRNAの間にも相関を認めた(r=0.469~0.690).5/6腎臓摘出ラットにおいてピタバスタチンは血清脂質の変動を伴わない腎保護作用を示し,TGF-βとCTGFの過剰発現是正を介した糸球体硬化と間質線維化の抑制による効果であることを示している.
症例報告
  • ―後腹膜脂肪肉腫の一切除例―
    木田 裕之, 出口 義雄, 春日井 尚, 田中 淳一, 工藤 進英, 塩川 章
    2009 年 69 巻 6 号 p. 499-505
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性.腹部膨満を主訴に紹介された.CT検査で右腹腔を占める巨大な腫瘍を指摘された.腫瘍内部は様々なdensityを示したが,主として脂肪濃度を呈していた.右腎臓は腫瘍内部に埋没していた.後腹膜脂肪肉腫と診断し,後腹膜腫瘍摘出術,右副腎部分切除術,右腎臓合併切除を行った.切除標本重量は7.9kgであった.病理組織学検査ではmyxoid liposarcomaと診断された.脂肪肉腫に対する放射線療法・化学療法の効果はまだ十分に検証されておらず,補助療法を行わずに経過観察中である.
  • 加藤 敏次, 佐藤 兼重, 保阪 善昭
    2009 年 69 巻 6 号 p. 506-511
    発行日: 2009/12/28
    公開日: 2011/05/20
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは特異型鞍馬変形と短頭様の形態を呈したSagittal synostosisの症例を経験した.本来,Sagittal synostosisは長頭変形や舟状頭蓋を呈することが多く,稀に鞍馬状変形を呈することが知られている.縫合の前方のみ,後方のみ,あるいは全体に及んでいるかによって頭蓋の形状が異なる事は分かっているがその詳細はほとんど分かっていない.Albrigt and Byrdは14症例のSagittal synostosisについて,癒合部分としていない部分との組織学的研究を行った.その結果各症例ごとに閉鎖部位・開存部位があり,癒合の開始部位は縫合全長の中で一か所のみでありその癒合開始部位は縫合のどこからも始まっていたと報告している.また癒合している範囲は手術(摘出時)年齢が遅くなるとともに広範囲になっていたとしている.すなわち,癒合開始と専門医受診の時期により頭蓋の形態は異なる事が示唆される.
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