末期腎不全患者における免疫不全状態を検討するため末梢血リンパ球サブセット, サイトカイン発現レベルを測定した.対象は, 保存期慢性腎不全患者 (ND群) 14名, 血液透析導入1年後の同一患者 (HD群) 14名, 年齢を一致させた健常者 (NC群) 16名である.方法は, 末梢血リンパ球を分離し, Flow cytometryを用いてCD3, CD19, CD4, CD8, CD56, CD28, CD80を解析した.また, 末梢血単核球からRNAを抽出しIFNγ, IL-4, IL-10, IL-12の発現をreal-time RT-PCR法にて検討した.その結果, 1) 末梢血リンパ球数CD3
+T細胞数, CD19
-B細胞数CD4
-T細胞数はND群, HD群で有意に低下していた.2) 3群間の各細胞比率に有意差は認めなかった.3) HD群はND群と比較して, CD28
+T細胞比率は有意に上昇, CD80
-B細胞比率は有意に低下していた.HD群, NC群間に有意差は認めなかった.4) IFN-γmRNAは3群間に有意差なし, HD群でIL-4mRNAは有意に低下, IL-10mRNA, IL-12mRNAは有意に上昇, 特にIL-10mRNAの上昇は顕著であった.以上のように我々は透析導入1年後の免疫機能を同一患者で評価することで, より明確に透析導入前後の免疫不全状態を比較検討し得た.その結果, 保存期慢性腎不全患者においてはT細胞数, B細胞数双方の減少を伴ったリンパ球減少症と共刺激反応の障害を認めた.血液透析により, それらの障害はある程度改善されるが, 新たにサイトカインの異常をきたし, 保存期とは異なった免疫異常をきたすことが考えられた.
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