人工栄養飼育ラット新生仔に日齢5より6日間, Phenobarbital (PB) 60mg/kg/day, Valproicacid (VPA) 200mg/kg/dayの投与または電気刺激痙攣 (ECS) 負荷を行ない, その後の脳各部分 (大脳, 脳幹, 小脳) の湿重量発育を調べるとともに, 小脳発育については生化学的に検討し以下の結果を得た. (1) Phenobarbital投与の影響について: PBを投与された日齢11のラット新生仔では, 脳各部分 (大脳, 小脳, 脳幹部) の湿重量, 小脳の総DNA量, 総RNA量や総蛋白質量などはいずれも低下し, PB投与による脳DNA合成障害と蛋白合成障害を認めた.その後日齢21でも小脳の湿重量, 総蛋白量, 総DNA量や総RNA量などはいずれも非投与群より低く, 十分なcatch up発育を示さなかった. (2) Valproic acid投与の影響について: VPAを投与された日齢11のラット新生仔では, 脳各部分の湿重量, 小脳総DNA量, 総RNA量や総蛋白質量などはいずれも低下し, VPA投与による脳DNA合成障害と蛋白合成障害を認めた.その後日齢21でも非投与群に比べ, 小脳の総蛋白量を除いて, 脳各部分の湿重量, 総DNA量, 総RNA量などいずれも低かった. (3) 電気刺激痙攣の影響について: 日齢11ラットの脳各部分の湿重量では, 負荷による影響はなかった.しかし, 小脳の総DNA量と総RNA量に有意な低下がみられ, 負荷による一時的な脳細胞増殖障害を認めた.日齢21では, 脳各部分の湿重量, 小脳の総DNA量, 総RNA量, 総蛋白量はいずれもcatch up発育を示した.ラット新生仔期のPB, VPA投与による脳組織損傷は, 日齢21でも十分にcatch upしないことから, 永続性なものであると考えられた.しかし, 電気刺激痙攣では, 負荷後一時的に脳細胞増殖障害を認めたがその後catch upを示した.“脳神経細胞は再生しない”ことを合わせて考えると, 加齢によるcatch upは神経細胞の回復と増殖を示しているものでなく, グリア細胞, 血管内皮細胞などの増殖による結果とも推測され, 胸組織損傷は, 少なからずその後に残ると考えられた.
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