昭和医学会雑誌
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52 巻, 6 号
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  • 福地 邦彦, 茂木 孝晴, 陳 戈林, 高木 康, 五味 邦英, 牧野 真理子, 和久田 梨香, 田中 庸子
    1992 年 52 巻 6 号 p. 595-604
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昨年に引き続き, 当院での最近1年間 (1991年7月~1992年6月) の臨床分離菌の動向を集計したので報告する.一般細菌の同定・感受性検査は, Baxter社のAUTOSCAN4で行った.検出菌は前回に引き続きS. atcreus, P. aeruginosaが上位を占めた.また, 検出された菌株の多くが, 常在菌として環境中に存在するものであった.最も多くの検体から検出されたS.aureusは, その53%がMRSAであり, 多くは呼吸器由来の検体から検出された.また, 昨今抗菌剤耐性化が問題となっているP.aeruginosaは, 約16%の菌株が検査を行った13薬剤中9剤以上に耐性を示す多剤耐性菌であった.他の菌種もそれぞれに特徴的な感受性パターンを示しており, 抗菌剤選択には充分注意を要することが改めて確認された.MRSAとP.aeruginosaの混合感染は各々の菌種の感染の30%に認められ, 易感染性患者の管理の困難さがうかがえる.
  • 雨宮 雷太, 藤巻 悦夫, 小口 勝司, 武田 弘志
    1992 年 52 巻 6 号 p. 605-613
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    低出力レーザー (LLL) 照射の鎮痛効果およびその作用発現における中枢モノアミン作働性神経系2役割を考究する目的で, LLL照射の熱侵害刺激 (TN) 誘発疼痛に対する効果, ならびにTNが誘5発する脳, 脊髄内dopamine (DA) , serotonin (5-HT) およびnorepinephrine (NE) の動態変化に及ぼす影響について通電鍼刺激 (EA) と比較検討した.EA処置あるいはLLL照射をラット左後肢の人足三里穴相当部位に持続的的に施すことにより, TNが誘発する疼痛の國値が有意に増加した.TNが惹起する視床下部, 中脳―視床内DA, 3, 4-dihydroxyhpenylacetic acid (DOPAC) およびhomovanillic acid (HVA) 含量の増加は, EA処置により有意に抑制された一方, LLL照射は, DA含量の増加には影響を示さなかったが, DOPACおよびHVA含量の増加をさらに増大させた.また, EA処置は, TNが誘発する視床下部内5-HT含量および中脳―視床, 延髄―橋での5-HT, 5-hydroxyindole-3-acetic acid (5-HIAA) 含量の増加に対して何ら影響を示さなかったが, LLL照射はこれら化合物含量のいずれの増加も有意に抑制した.LLL照射は, TNで生じる中脳―視床の4-hydroxy-3-methoxyphenyl glycol (MHPG) 含量の増加をさらに増大すると共に, 延髄―橋で惹起されるMHPG含量の減少を有意に抑制した.さらに, LLL照射は, 視床下部のMHPG含量を著明に増加することが観察された.また, LLL照射により, TNが惹起する頸髄, 腰髄でのDOPAC含量増加が著明に抑制されると共に, 頸髄, 胸髄, 腰髄のいずれの脊髄部位においてもHVA, および3-MT含量の著明な増加が生じることが認められた.EA処理により, TNは何ら影響を受けなかった頸髄, 胸髄および腰髄における5-HT含量が有意に増加することが認められた.また.これら脊髄部位での5-HIAA含量の有意な増加あるいは増加傾向が観察された.一方, LLL照射は, 頸髄内5-HT含量の増加を惹起したが, 胸髄, 腰髄では, 5-HIAA含量の有意な減少を生じさせた.EA処置は, 頸髄, 胸髄, 腰髄内EN含量の減少とMHPG含量の増加を誘発した.また, LLL照射によっても, 頸髄, 胸髄でのNE含量の有意な減少とMHPG含量の増加, さらには腰髄でのMHPG含量の著明な増加が認められた.以上の所見から, LLL照射は, TN誘発疹痛に対して緩和作用を示し, その作用機序の一部に脳および脊髄におけるNE代謝回転の促進に起因するNE作働性神経系の活性充進, すなわち, 下行性痛覚抑制系の賦活化が関与することが示唆された.
  • 加藤 稔
    1992 年 52 巻 6 号 p. 614-622
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    CR (Computed Radiography) による胸部のエネルギーサブトラクション法の写真は, ノイズの影響を受けて写真の粒状性が悪いことが知られている.ノイズの影響を調べるために, グリッドなしと格子比8: 1, 12: 1, 16: 1のグリッドを使用した写真を撮影した.X線管電圧は110kVとし, 水ファントームとグリッドを用いて散乱線を螢光量計を用いて測定した.胸厚20cmの標準肺はファントームで8.7cmとなる.その部分の散乱線の含有率を測定した.グリッドなしでは59%, グリッドの格子比が増すに従って散乱線は低下する.次に皮膚線量が一定の場合とイメージングプレート (IP) への到達線量が一定の場合について胸厚20cmの被写体の胸部X線写真6枚を撮影した.これらのフイルムを医師, および放射線技師各5名計10名の観察者がBRH変法に基づいて, 写真評価を行った.写真評価の結果はIP到達線量が一定で, グリッド格子比8: 1の組合せが第1位であった.第2位は皮膚線量が一定でグリッドなしの場合であった.IP到達線量が一定でグリッド格子比16: 1のときが第3位であった.散乱線含有率が低いほど画像が見やすくなるわけではなく, 8: 1のグリッドを使用した場合が最も見やすい画像が得られた.
  • 山田 耕一郎, 傳 天真, 宮下 政子, 磯山 恵一
    1992 年 52 巻 6 号 p. 623-630
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和大学藤が丘病院小児科に1980年1月から1989年12月までの10年間に入院し, その後2年以上観察しえた特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) 92例について検討した.男児20例, 女児22例.年齢は3か月~11歳10か月に分布し, 病型は急性型31例, 慢性型6例, 再帰型5例であった.治療法によって分類すると免疫グロブリン大量療法 (IVIG) 群14例 (IVIGのみ5例, ステロイド併用9例) , ステロイド (PSL) 群15例, 対症療法群13例であった.全症例の71.4%に先行疾患がみられ, 上気道炎が最も多かった.IVIG群 (14症例18コース) では投与24時間で血小板数5×104/μ1以上となる例がみられ, 投与5日では18コースの全てが5×104/μl以上となった.しかし, 慢性型・再帰型では投与開始後10日で5×104/μl以下の例がみられた.PSL群 (15症例17コース) では投与後5日以内に血小板数5×104/μl以上が確認されたのは5症例7コースのみであった.対症療法群 (13症例14コース) では治療開始後5日までに血小板数5×104/μl以上となったのは5症例5コースであった.後2者はIVIG群に比べて治療開始初期の血小板増加量は少なかった.慢性型・再帰型の54.5%が2~4年で治癒したが治療法との間に有意な関係は得られなかった.病初期の山血症状と血小板数, 血清IgGと病型には有意な関係は得られなかった.IVIG療法はITPの緊急時の治療として試みるべき方法であるが, 特有な副作用も報告されており適応には注意すべきである.
  • 冨士 幸蔵, 門脇 昭一, 滝沢 弘之, 石田 肇, 吉田 英機
    1992 年 52 巻 6 号 p. 631-637
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    前立腺腫瘍マーカーとして広く用いられている前立腺性酸性ホスファターゼ (PAP) , 前立腺特異抗原 (PA) , γ-セミノプロテイン (γ-SM) は, 共に高い臓器特異性を持つ前立腺上皮由来の糖蛋白である.前立腺肥大症における組織免疫学的検討では, 腺上皮からほぼ均一に, これらのマーカーが分泌されていることが示唆されている.また, 現在のところPAとγ-SMは, 同一の糖蛋自ではないかともいわれている.以上のことから, 各マーカーの血中濃度と腺上皮量とは相関し, その相関性に各マーカー間で大きな差がないのではないかと考えられる.過去に, 各マーカーの血中濃度と腺上皮量との相関を定性的に示唆した報告はみとめられるが, 腺上皮量を定量化し, 血中各マーカー濃度と比較した報告は少なく, また, 各マーカー問による上皮量との相関性の差異についての報告は認められない.そこで我々は, 前立腺肥大症患者67例について, 手術前の経直腸的前立腺超音波検査と摘出標本のmorphometryにより, 前立腺体積, 腺組織体積, 腺上皮体積, 間質体積を定量的に算出し, これら3種のマーカーの末稍血中濃度との関係について検討した.また, 3種のマーカー間における, これらの体積との相関性の相違についても検討を行い, 以下の結果を得た.1.前立腺体積, 腺組織体積, 腺上皮体積とPAP, γ-SMは高い正の相関を示したが, PAではその相関性は低かった.2.間質成分体積とPAP, γ-SMとの間には, 高い正の相関が認められた.3.PAとγ-SMの問に, 前立腺体積や各構成成分体積に対する相関性の差が認められた.以上のことから, 末梢血中マーカー濃度と腺上皮量との問には強い相関があるものの, 問質の影響も否定できないこと, PAとγ-SMの上皮量に対する相関性が異なることが示唆された.
  • 加藤 博久
    1992 年 52 巻 6 号 p. 638-646
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    ラット肝灌流において, 肝を充分に灌流し, かつダメージの最も少ない至適灌流速度を肉眼的, 生化学的, 組織学的に検討した.さらに, Prostaglandin E1 (以後PGと略す) をDonorに経静脈投与し, その効果も検討した.摘出肝を, ハルトマンD液20mlを用い, I群) 0.05, II群) 0.25, III群) 4, IV群) 16ml/gBW/hの速度で灌流したところ, IV群で灌流液の肝逸脱酵素が有意に高く, 組織学的にII, III群で良好な成績を得た (実験1) .I~IV群に対し5μg/mlのPGをA群) 5, B群) 15, C群) 45ng/gBW/10minで静脈内投与したところ, I~III群では生化学的, 組織学的に若干障害が少ない傾向がみられ, rv群では投与量の増加により障害の軽減傾向がみられた (実験2) .移植効果を判定するため, PG (-) 群: PG非投与, PG (+) 群: PGのC群投与について, 摘出肝を0.5ml/gBW/hの速度で灌流し, 最小肝冷却時間及び6時間単純浸漬保存後移植した.生化学的, 組織学的に有意差は認められなかったものの, 生存率の向上が期待できた (実験3) .以上より, 肝灌流における至適灌流速度は0.25~4ml/gBW/hと広い許容範囲であることが認められた.また, PGのDonor投与は, 肝灌流時の障害を軽減し, 生存率の向上をもたらす可能性が示唆された.
  • 延原 弘章, 安西 定
    1992 年 52 巻 6 号 p. 647-657
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    全国市区町村別老人保健事業報告の保健事業別の各種の値を用いて, それらの分布を「町・村」 (2590町村) , 「市」 (644市) , および「特別区・政令指定都市」 (34区市) 別に検討し, その結果に基づいて市区町村レベルの自己評価手法を提案したものである.すなわち, 今回提案した評価表は, 簡便な計算によって算出された値を10%点, 25%点, 50%点, 75%点, 90%点と比較することによって, 地区特性を考慮しつつ, 実施状況に重点をおき各々の保健事業ごとに評価できるようにしたものである.この方法によって, 市区町村の保健事業の評価が日常業務において実施可能となり, その評価結果は保健事業実施計画の基礎資料として有効に活用できるものである.
  • 渡辺 由美, 三浦 宜彦, 安西 将也
    1992 年 52 巻 6 号 p. 658-668
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    老人医療費が年々増高しつつあることから増高要因に関する調査研究業績は漸次, 発表されている.このなかで, 本研究は老人の入院外医療費に影響を及ぼす各種要因を明かにするため, その疾病割合も医療費割合も最も多い循環器系疾患に着目して, 神奈川県下某町 (病院1, 診療所9) の平成3年7.月に請求された70歳以上の入院外の診療報酬明細書 (以下, レセプトという) 1, 790件を分析・検討したものである.分析方法として, 特にレセプトに記載されている傷病名のうちから主傷病と副傷病を選定し, レセプトを主傷病が循環器系患と循環器系疾患以外の2つのグループに分け, さらにこれらのグループをそれぞれ副傷病で循環器系疾患有り, 循環器系疾患以外の疾患有り, 副傷病無しの3つの傷病のTypeに細分して検討した.その結果明かとなったのは, 主に次の通りであった. (1) 某町の1件当り点数は全国に比べて低いものの, 主傷病の循環器系疾患の件数及び総点数の割合は全国と同様に第1位であった. (2) 主傷病の循環器系疾患の55.8%が高血圧性疾患で, 副傷病でも同疾患が最も多かった. (3) 主傷病が循環器系疾患のグループと循環器系疾患以外のグループ別の検討では, 1件当り点数は両グループ間に差が認められなかったが, その要素を1件当り日数と1日当り点数に分けると両グループの医療費構造は大きく異なり, 主傷病が循環器系疾患のグループは通院回数よりも1日当りの単価が高く, 逆に主傷病が循環器系疾患以外のグループは, 1日当りの単価よりもむしろ通院回数が多い医療費構造であった. (4) 傷病のType別の検討では, すべてのTypeで診療行為のなかでも特に再診と投薬料が1日当り点数に影響を与えていた. (5) 1日当り点数に, 性, 年齢階級, 傷病のTypeおよび診療行為などが相互に及ぼす影響を数量化I類を用いて分折した結果では, 診療行為が全体として性, 年齢階級, 傷病のTypeよりも1日当り点数に大きく影響していた.今後, 老人医療費の軽減を図るためには, 循環器系疾患を中心とした健康教育, 健康診査, 重症化防止策等の一層の充実強化が必要であろう.
  • ―第2報―性別及び母親の出産時年齢との関連について
    飯田 直成, 清田 拓子, 門松 香一, 猫田 泰敏
    1992 年 52 巻 6 号 p. 669-677
    発行日: 1992/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    口唇・口蓋裂は, 先天性外表奇形としてわが国に比較的多い疾患であり, その疫学的研究業績は数多い.しかし, その原因については, 未だ不明な点が多く, 特に裂型, 披裂程度に関連する要因についての研究業績は少ない.本研究は, そのうち裂型及び披裂程度と患児の性別, 母親の患児出産時年齢との関連について着目し, 昭和52年8月から平成4年5月までに, 昭和大学付属病院形成外科を未治療で訪れ, かつ近親者に同種異常のない1072症例を対象とし調査検討を行ったものである.分類方法は裂型を, 口唇裂, 口唇口蓋裂, 口蓋裂に, 披裂程度を, 口唇裂, 口唇口蓋裂で完全, 不全, 痕跡に, 口蓋裂で硬軟口蓋裂, 軟口蓋裂, 粘膜下口蓋裂及び垂裂にそれぞれ3群に分けた.披裂部位は, 口唇についてのみ着日し, 右側, 左側, 両側に分けた.また, 母親の山産時年齢は, 29歳以下, 30歳以上の2群に分類した.なお解析方法としてクロス表の検定には, x2検定を用いた.その結果, 裂型には, 性別, 母親の出産時年齢との問に有意な関連が認められ, 口蓋裂で口唇口蓋裂, 口唇裂に比し, 母親が高齢である傾向がみられた.披裂程度には, 左口唇裂, 両側口唇裂, 左口唇口蓋裂において性別が有意に関連し, 女児に披裂程度がより重度である傾向が示された.また, 母親の出産時年齢との問には, 有意な関連は認められなかった.
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