昭和医学会雑誌
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56 巻, 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • ―特に膵臓の病理を中心にして―
    神田 實喜男
    1996 年 56 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 花川 一郎, 久光 正
    1996 年 56 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    痛みの機序の解明や治療は我々にとって重要な命題である.これまでは生理学を中心とした分野で, 急性痛のうちの特に侵害受容性疼痛に対する基礎研究から神経伝達路に関連した研究が進歩してきたが, 最近は慢性痛の動物モデルによる研究が盛んになってきた.今回, 我々は慢性痛の動物モデルの現状と慢性痛に関する最近の知見を紹介する.今後このようなモデルを使用した実験から神経痛に関する新たな発見や有効な治療法の開発が急速に進歩すると思われる.それらの結果が臨床的研究に大きく貢献することが期待される.
  • 金 正民, 劉 滬隆, 小橋川 啓, 坂本 英雄, 渡辺 政信, 吉田 英機, 三浦 南虎, 戸部 敞, 冨田 基郎
    1996 年 56 巻 2 号 p. 133-139
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1993年10月から1994年6月までの間, 当教室不妊外来を受診した男性不妊症患者88例を対象として, 「Sandwich ELISA」法により血清中および精漿中clusterin濃度を測定, 比較検討するとともに射精後精漿中濃度の経時的変化およびその原因について検討を行い, 以下の結果を得た.1) 血清中clusterin濃度はnormozoospermia (N群) , oligozoospermia (O群) , idiopathic azoospermia (IA群) , obstructeda zoospermia (OA群) の各群間での比較では有意差が認められなかた.2) 射精後, 精漿中clusterin濃度は時間経過とともに低下し, 精子の有無に関わらず全症例および各群でもいずれも有意な経時的低下を示した.しかし, N, O, IA, OA各群間での濃度の経時的変化の比較検討では有意差が認められなかった.3) 全症例における精漿中clusterin濃度は射精後30分では5.9倍, 1時間では3.5倍, 2時間では2.5倍と血清中濃度よりかなり高い濃度を示した.4) 精漿中におけるclusterin濃度とIgG濃度の経時的変化の比較では有意差が認められなかった.以上の結果より, ヒト精漿中clusterin濃度の経時的低下の理由は補体成分とのcomplex形成によることも考えられるが, clusterin自体の分解あるいは他の物質とのcomplex形成の可能性も否定できず, その機序については今後の検討が必要である.
  • 脇田 正実
    1996 年 56 巻 2 号 p. 140-152
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    大腿骨頸部前捻角計測には種々なる方法があるが, 大腿骨頸部前捻の角度 (以下前捻角と略す) すなわち, 骨頭頸部を含めた大腿骨近位端の捻転を正確に計測するには, 大腿骨軸に垂直に投影された像を計測する方法がその定義からも最も正確な方法といえる.軸写撮影法は, 大腿骨骨幹軸方向にX線を投影してえられた像をもって計測する方法である.この方法は, 昭和大学藤が丘病院放射線科技師長鍵田により開発されたものであり, 患児を測定台に腰掛けさせ大腿骨軸に対し, 中枢を高くして撮影を行い, 大腿骨近位部は希土類増感紙にて増感され, 膝顆部はフィルムの前後に黒紙を重ねてフィルムが増感されないようにして中枢と末稍が同時に読影可能とした方法である.各種存在する現行の撮影法の中では唯一膝顆部を投影する方法で, 前捻角の基準となる膝窩部後方に接線を引くことができる.この接線と骨頭中心と大腿骨近位骨幹部中央を結んだ直線 (頸部軸) とのなす角にて前捻角計測を行う.したがって本方法により前捻角を正確に計測するためには撮影に際し大腿骨近位骨幹部の骨髄腔が, 正確に大腿骨近位骨幹軸方向に一致してX線投影されることが絶対的条件である.著者はこの点について小児33例40大腿骨の側面X線写真を用いて, その大腿骨前彎と全長を計測し, X線が大腿骨近位骨幹軸に入射される角度について検討を行い最適な撮影条件を設定した.その結果管球焦点被写体距離を1mとし大腿骨骨幹軸の近位端を10°高く傾けて撮影したとき, 大腿骨近位骨幹部の骨盤腔が, 正確に大腿骨近位骨幹軸方向に一致してX線投影されることが確かめられた.この時10度, 中枢を高くして撮影しており, このための補正を行い, さらに理論的補正値と実測値について実際に成人大腿骨について撮影し補正表の確認を行った.これにより基礎的に理論的正当性を確認ができた.臨床的応用として実際に本方法により前捻角計測をおこなった症例は, 62例であり, 同時に測定した甲斐法, およびRippstein法による計測法との比較検討を行った.大腿骨軸写撮影法の臨床応用に際しそのX線被爆量について, 男児および女児について, 推定計測を行った.
  • 鈴木 啓之
    1996 年 56 巻 2 号 p. 153-167
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    各種裂型の口唇口蓋裂群に対し, 耳介付着線・鼻梁線・耳介長軸の成す角度を計測した.研究対象は片側唇裂702例, 片側口唇口蓋裂30例, 両側唇裂・両側口唇口蓋裂19例であり, 計測時年齢は乳児から成人までを含む.結果: 1) 耳介付着線と鼻梁線の成す角度については, 片側唇裂では思春期以降男子で角度が減少し女子では増加した.正常顎発育とは反対の成長パターンをとる.片側唇裂口蓋裂では, 15歳以降もっとも同角が小さく, 従来からの顎発育研究と類似している.両側唇裂では, 同角は片側唇裂につぐ大きさで正常群よりは小さい.両側唇裂口蓋裂ではさらに小さいが, 片側唇裂口蓋裂より大きく, 従来からの顎発育研究と類似している.2) 耳介付着線と耳介長軸の成す角度は, 正常群の約8度より唇裂合併群が10~12度で常に大きい.これは白人唇裂患者の耳形態と一致し, 唇裂患者での耳形態の特徴である.以上から口唇口蓋裂症例では, 耳介付着線と鼻梁線の成す角度は正常群と異なり, 裂型による顎発育の特徴を示していると考えられた.また, 耳介付着線と耳介長軸の成す角度が正常より大きいが, これは唇裂症例の耳介形態の特徴である.
  • ―その形成と形態および好みについて―
    黄 聖勲
    1996 年 56 巻 2 号 p. 168-174
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    外来相談患者の61%以上を占めている二重瞼手術希望患者に接するたびに彼らが二重瞼についてどう考えているのか, 20代韓国女性の二重瞼形成の実態および美容形成手術に対する認識と好みについて調べた結果, 次の通りであった. (1) ソウルと地方都市1ヵ所の20代女性732名を対象にして二重瞼の形成と形態そして嗜好度について調査を行った. (2) 20代韓国女性の二重瞼形成率は53.8%で, 日本の20代女性の重瞼率69.2%より低かった. (3) 重瞼の形態は, 二重瞼になっている者の60.4%が「末広型」であり, 「平行型」の二重瞼は36%に該当し, 20代までは「末広型」の多い日本人の重瞼形態と同様な様相であった. (4) 既に手術を受けた者の94.1%が形成外科で手術していた. (5) 自分で形成手術を希望したものは37%に過ぎなかったが, 将来自分の子供の二重瞼手術を受けさせても良いと考えるものは72.5%であった. (6) 客観的に好みとする重瞼の形態は, 重瞼幅のせまい「平行型」であった.
  • 吉田 太
    1996 年 56 巻 2 号 p. 175-182
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    臨床において爪を再建するにあたって, 指末節部分あるいは末節骨の大きさに対し, どれだけの大きさの爪が形態的に適当であるかということは重要である.本研究では日本人32名 (男性23名, 女性9名, 年齢14~72歳, 平均40.0歳, 全員右利き) を対象に, 左右各指において爪の露出部分 (eponychium遠位端からhyponychium遠位端まで) , 指末節部 (遠位掌側指皮線から指尖端まで) , X線上での指末節骨の3者につき, 各々の長径と横径を測定比較することによって, 形態学的にどのような関係があるかを検討した.その結果, 爪に関しては母指が長さ, 幅ともに (特に幅において) 発達し, また, 右利きが多いため, 大体において右側の方が発達しているものと推察される.また末節骨の形態から, 成人では骨の発達に左右差はなく, 骨以外の組織が右側で発達していったと考えられる.また, 左右各指について爪と指末節部, 爪と指末節骨の間の長径, 横径における比率を算出し, 一般的な基準を作成した.爪の再建を要する時は, この基準をもとに検討するのが望ましいと考える.形態学的には, 母指では骨や軟部組織に対し爪が小さい傾向にあり, 全体としてがっしりとした印象を受け, 右手の示指, 中指では爪をよく使用して引っ掻くという動作上, 爪の長さにおいて母指よりも発達していると考えられる.
  • 巽 雅彦
    1996 年 56 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    精神分裂病患者にみられる免疫機能の変化については種々の報告がある.本研究では長期服薬中の慢性分裂病患者の免疫機能を健常対照群と比較し, さらに精神症状や抗精神病薬の服用量及び服薬期間などとの関係を検討した.対象は1) K精神病院に1年間以上入院中, 2) 年齢が20~59歳, 3) 現在, 免疫機能に影響を与える疾患に罹患していないという条件を満たす精神分裂病41症例 (男19例, 女22例, 年齢46.2±7.9歳 (M±SD) ) である.対照は精神および身体疾患に罹患していない者13名 (男6名, 女7名, 年齢40.3±14.8歳 (M±SD) ) である.分裂病患者および健常対照者に対しては, 本研究の目的を説明し同意を得た.分裂病患者群および健常対照群について, 白血球数, リンパ球数, 血清免疫グロブリン (IgG, IgM, IgA) を, リンパ球SubpopulationとしてCD3 (T cell) , CD4 (helper T ce11) , CD8 (suppressor T ce11) , CD20 (B ce11) , CD25 (IL-2受容体陽性細胞) , CD57 (NK cell) を測定した.精神症状評価にはPANSS (Positive and Negative Syndrome Scale) を用い, 分裂病症状の目立つ群を1群とし, 分裂病症状の目立たない群を2群とした.抗精神病薬の服用量はhaloperido1に換算し評価した.結果としては, 精神分裂病患者では健常者に比べてCD3, CD4, CD4/CD8比が低値を示した.分裂病患者において服薬期間, haloperidol血中濃度と免疫機能との問に有意の相関は認めなかった.抗精神病薬の経口服用量のhaloperidol換算量はIgGと有意な負の相関を認め, またCD8とは正の相関を認めた.分裂病症状により分類した場合は, リンパ球数においては2群は1群, 健常者より有意に高かった.CD3, CD25において, 1群は2群, 健常者より有意に低下していた.CD8において, 2群は1群よりも有意に高かったが, 両群とも健常者と有意な差を認めなかった, 以上の結果から抗精神病薬による免疫機能への影響も考慮する必要があるが, 精神分裂病患者ではT細胞系の免疫機能が低下している可能性があると考えられる.その原因としてIL-2を含めたサイトカインの関与なども検討される必要がある.
  • ―加齢変化の検討―
    原 順子, 清水 靖夫
    1996 年 56 巻 2 号 p. 190-200
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    日本人女性における下顎と頸部のなす角度については, 本研究に先だって清水1) が20歳代の女性を対象に調査を行い, フランクフルト平面を水平位においた位置と頸部を最大伸展位においた位置において調査を行っている.本研究においては, 計測方法を清水と同じくし, 調査対象を15~64歳まで拡大し, 角度の計測に加えて頸部の形態のタイプ分けを行い, その加齢変化について検討した.タイプ分けはTypeIを二重顎でないもので, くびれがはっきりしたもの, Type IIを二重顎でないもので, くびれがはっきりしないもの, Type IIIを二重顎を呈するもので, くびれのはっきりしたもの, Type IVを二重顎を呈するもので, くびれのはっきりしないものとした.267人の計測の結果, 下顎と頸部のなす角度の, フランクフルト平面を水平位としたものと, 頸部を最大伸展位としたものの角度と年齢の間には相関関係はなく, タイプ分けではTypeIが165人, Type皿が38人, Type皿が25人, TypeIVが39人であり, 35~39歳群を境に, 形態の美しいTypeIが急激に減少し, この年代が頸部の加齢変化の起こる境界線であることが示唆された.また, タイプ別のそれぞれの角度はいずれもType III<TypeI<Typer V<Type IIとなり, Type Iと他のTypeとの間には有意差があった.二重顎のあるType IIIが形態的に美しいType Iよりも角度が小さくなり, 加齢とともに下顎と頸部のなす角度が大きくなるという説は誤りであり, 頸部の加齢変化を検討する際には, 計測値にたよるのではなく, 形態で評価するべきであるという知見を得た.
  • 大野 拓也
    1996 年 56 巻 2 号 p. 201-212
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨折治癒過程において影響を及ぼす因子は数多くあるが, その中で, 骨膜性仮骨形成における骨膜の果たす役割, および力学的影響については, 骨折治癒過程における時期的な問題も含め解明されていない点も多い.今回, 我々は, 骨膜の役割および骨膜性仮骨形成過程における機械的刺激との関係を明らかにする目的にて, 骨折治癒過程における初期の仮骨形成の実験を行い, 経時的に組織形態学的比較検討した.白色家兎.雄 (平均体重約3kg) の脛骨に線鋸にて横骨折を作成し, プレート固定を行い, 1) 骨膜欠損群, 2) 骨膜温存・非侵襲群, 3) 骨膜温存・剥離侵襲群の3群に分類した.また各群において, 各々皮質骨間の動きのみられない固定性の良好な群 (R群) と, 固定性の劣る群 (NR群) に分類し検討した.NR群では, その中で組織断裂のみられない程度の動揺性のみられるものを, micromovement群 (Mi群) , 組織断裂が生じる程度の動揺性の大きいものをmacromovement群 (Ma群) とした.組織断裂が生じているか, 否かの判断は困難であるが, 顕微鏡下にて皮質骨間の接触で分類した.対照として麻酔下にて徒手的に骨折を作成し, ギプス固定を行い, 同様の検討を行ったものを4) ギプス固定群とした.その結果として, (1) 仮骨形成は骨膜を除去したものに比し, 温存したものが優位であった. (2) Micromovementにより機械的刺激の加わっているものは, R群に比し仮骨形成は促進されていた.その内訳は2) 群において, R群の2週で4例中3例にgranulation中心であったのに比し, Mi群で3例中2例でenchondral ossificationの始まりを認め, また, より進行している像も見られた.3週においても, Mi群で4例中3例にwoven bone形成が認められたのに対し, R群では全例認められなかった. (3) 剥離侵襲刺激を施行した3) 群は, 仮骨形成が先行していた. (4) ギプス固定群は機械的刺激, 侵襲刺激が適度に加わり仮骨形成は促進されていた. (5) 何れの群においても, 骨形成過程はwoven boneまでで, 骨成熟という面での促進は生じていなかった.結論として, 骨折治癒過程には仮骨形成と骨成熟が必要であり, 仮骨形成は, micromovement内の機械的刺激, 侵襲刺激等, 多種多様の骨膜刺激で促進されるが, 骨成熟は生じておらず, 骨成熟には, 別の因子 (軸圧負荷) が重要であると考えられる.
  • 川俣 光, 桑沢 二郎, 花川 一郎, 松本 清, 有賀 徹
    1996 年 56 巻 2 号 p. 213-218
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    大量の鼻出血で発症した外傷性海綿静脈洞部内頸動脈瘤の1例を経験し治療し得たので, 若干の文献的考察を加えて報告する.症例は22歳男性.自転車事故で鼻出血と意識障害を呈し搬送された.来院時, 意識昏迷で前頭蓋底骨折と左側頭部急性硬膜外血腫を認めた.脳神経麻痺, 運動麻痺等はなく, 保存的に軽快し2週間で退院した.退院翌日, 大量の鼻出血で再入院.外傷性脳動脈瘤を疑い, 2回目の脳血管撮影にて左海綿静脈洞部内頸動脈瘤を認めた.眼動脈中枢側でIC-trapPingおよびEC/IC bypass (STA-MCA double anastomoses) を施行し, 術後は左鼻側視野欠損を認めたが他の症状なく独歩退院した, 鼻出血を呈する外傷性内頸動脈瘤は, ほとんどの症例で脳神経症状を呈しており, 本例は随伴する脳神経症状が全くなく稀と考えられた.
  • ―機種による画像の比較―
    花川 一郎, 池田 尚人, 岩田 隆信, 松本 清
    1996 年 56 巻 2 号 p. 219-224
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1994年の1年間に他院にて施行されたMRAで脳動脈瘤や脳動脈狭窄, 脳動静脈奇形を疑われて当院に紹介された4例を提示する.当院にてMRAを施行し, 機種による画像の違いと実際の脳血管造影の所見と比較し検討したところ, 4症例中3例は疑陽性例であった.MRAは今後脳血管造影の変わりを果たすことが期待されている.しかし, 現時点においては, 疑陽性或いは偽陰性となる症例が存在し, 脳血管撮影を必要とすることが多い.機種自体のレベルが大事であるがすべての病院が一定のレベルの機種を使用していないのが現状である.今後脳ドックのありかたとしてある種の基準が必要であると思われた.
  • 安藤 進, 李 雨元, 村上 雅彦, 相田 貞継, 普光江 嘉広, 清水 善徳, 草野 満夫
    1996 年 56 巻 2 号 p. 225-228
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    腐蝕性上部消化管炎は急性期の局所的処置, 全身管理が重要であるが, 晩期合併症である食道狭窄もまた重要な問題である.今回我々は受傷早期に内視鏡検査を施行し, 損傷部位, 重症度の把握をすることで晩期合併症の発現予測をし, 治療方針決定に大変有用であった.症例は38歳女性.自殺目的にて強力トイレルック (NaOH4%) を約250m1服用し約30分後当院救急外来へ搬送された.来院時意識清明で理学的所見に問題はなかったが, 吐物に粘膜様物を認めた.胃洗浄, 粘膜保護剤, H2受容体拮抗剤投与を開始した.内視鏡的には, 食道から十二指腸下行脚までびらん, 潰瘍が多発しており, 特に上切歯列より20cmの食道壁は深い潰瘍を形成, 粘膜橋を認めRosenowらのいう第3度食道損傷と診断した.ステロイド療法を併用し保存的に様子観察したところ, 約8週間後食道透視にて狭窄所見認めず外来にての経過観察となった.退院後4週 (服用後12週) にて, 食物つかえ感出現したため, 食道透視, 食道内視鏡施行したところ気管分岐部直下食道に狭窄 (内腔約9mm) を認めたためセレスチンダイレーターチューブによる拡張術を計9回施行したところ狭窄は解除された.約4年経過したが, 経過は良好である.腐蝕性上部消化管炎における受傷早期の内視鏡検査は晩期合併症である食道狭窄発現予測に有用であり, 狭窄出現時の速やかな拡張術施行により良好な結果が得られたと思われた.
  • 千葉 俊哉, 正慶 修, 松川 正明, 栗原 稔, 熊谷 一秀, 清水 浩二, 河井 博明, 諸星 利男
    1996 年 56 巻 2 号 p. 229-233
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は56歳男性.黄疸, 発熱を主訴に来院.入院時臨床検査成績では総ビリルビン及び胆道系酵素の上昇を認めた.US (Abdominal ultrasonography) で総胆管の軽度拡張を認めたので, 診断, 減黄目的でERCP (Endoscopic retrograde cholangiopancreatography) を試みたが胆管造影は得られず, PTGBD (Percutaneous transhepatic gallbladder drainage) を施行した.PTGBDチューブからの造影では総胆管内に大きさ12mmの結石と総胆管下部にほぼ内腔を占める隆起性病変を認め, また, 下部総胆管十二指腸瘻を形成していた.十二指腸鏡下に瘻孔より総胆管の隆起性病変を生検し, papillary adenomaの診断を得た.癌の合併が否定できなかったため膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では総胆管下部に乳頭状の腫瘍とその十二指腸側に瘻孔を認めた.結石は大きさ11mmのビリルビン結石であった.腫瘍の組織はadenocarcinoma in adenomaの像を呈しており, 腫瘍のほぼ中心部から十二指腸側では明らかな悪性像がみられ, 肝臓側ではadenomaを示していた.本症例は胆管癌の発生を知るうえで興味深い症例と考えられたので, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 小野村 雅久, 神谷 尚志, 正慶 修, 平塚 伸, 福地 勇人, 嶋田 顕, 保田 国伸, 関川 高志, 小川 英風, 木村 弘子, 中町 ...
    1996 年 56 巻 2 号 p. 234-237
    発行日: 1996/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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