骨折治癒過程において影響を及ぼす因子は数多くあるが, その中で, 骨膜性仮骨形成における骨膜の果たす役割, および力学的影響については, 骨折治癒過程における時期的な問題も含め解明されていない点も多い.今回, 我々は, 骨膜の役割および骨膜性仮骨形成過程における機械的刺激との関係を明らかにする目的にて, 骨折治癒過程における初期の仮骨形成の実験を行い, 経時的に組織形態学的比較検討した.白色家兎.雄 (平均体重約3kg) の脛骨に線鋸にて横骨折を作成し, プレート固定を行い, 1) 骨膜欠損群, 2) 骨膜温存・非侵襲群, 3) 骨膜温存・剥離侵襲群の3群に分類した.また各群において, 各々皮質骨間の動きのみられない固定性の良好な群 (R群) と, 固定性の劣る群 (NR群) に分類し検討した.NR群では, その中で組織断裂のみられない程度の動揺性のみられるものを, micromovement群 (Mi群) , 組織断裂が生じる程度の動揺性の大きいものをmacromovement群 (Ma群) とした.組織断裂が生じているか, 否かの判断は困難であるが, 顕微鏡下にて皮質骨間の接触で分類した.対照として麻酔下にて徒手的に骨折を作成し, ギプス固定を行い, 同様の検討を行ったものを4) ギプス固定群とした.その結果として, (1) 仮骨形成は骨膜を除去したものに比し, 温存したものが優位であった. (2) Micromovementにより機械的刺激の加わっているものは, R群に比し仮骨形成は促進されていた.その内訳は2) 群において, R群の2週で4例中3例にgranulation中心であったのに比し, Mi群で3例中2例でenchondral ossificationの始まりを認め, また, より進行している像も見られた.3週においても, Mi群で4例中3例にwoven bone形成が認められたのに対し, R群では全例認められなかった. (3) 剥離侵襲刺激を施行した3) 群は, 仮骨形成が先行していた. (4) ギプス固定群は機械的刺激, 侵襲刺激が適度に加わり仮骨形成は促進されていた. (5) 何れの群においても, 骨形成過程はwoven boneまでで, 骨成熟という面での促進は生じていなかった.結論として, 骨折治癒過程には仮骨形成と骨成熟が必要であり, 仮骨形成は, micromovement内の機械的刺激, 侵襲刺激等, 多種多様の骨膜刺激で促進されるが, 骨成熟は生じておらず, 骨成熟には, 別の因子 (軸圧負荷) が重要であると考えられる.
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