1978年1月1日より, 1993年5月31日迄の約15年間に昭和大学藤が丘病院を受診した精神分裂病 (ICD-10) の外来患者で寡発者30名 (延べ99名) を選び, 1年から14年の経過を追跡しながら, 薬物の中断の可能性を探った.対象はICD-10の経過型でF20.X2, X4, X5 (1型と呼称) のもの22名, F20.X3 (2型と呼称) 8名で, 実際の治療過程で減量・中断の方法を検討した.即ち, 調整期間, 維持量期間, 減量期間, 中断期間の4段階に分けて薬が中断できるかを調査した.1.減量中に再発したものは36.4%, 減量中あるいは漸減後中断して再発したものは27.3%, 合計63.7%が再発した.薬の中断が再発に結びついたと考えられたものは47.4%であった.2.1型は維持量の約半分に減量した時に再発しやすく, その期間は約1年であった.3.2型は1型の半分に迄維持量を減量でき, その上1型の2倍の期間再発が起こらず, 1型と2型とは精神薬理学的にも同様の疾患とみるには疑問が生じた.4.中断に成功したものは1型で1名 (4.5%) , 2型で5名 (62.5%) で, 1型は初発・再発に関係なく薬を中断するのが困難で, 指示中断に至ったものは4人 (18%) に過ぎなかった.5.2型は88%が指示中断に至った.6.調査期間中における再発回数との関係では, 2型は再発回数が多いにも拘らず中断でき, やはり慎重に漸減, 中断を試みる価値があると考えられた.7.中断できない3例でも, チオリダジン1日25mgでは不眠, 困惑, 幻覚妄想状態が起こるのに, 50mgだと安定している症例など, 小量の薬用量の差で安定, 不安定になるものであった.8.従って分裂病 (1型, 2型共に) は, 必要最小限の薬用量で維持することが肝要である.9.薬を中断できたものの最後の服薬期間は1型で3年1週, 2型は平均1年4カ月であった.10.血清コルチゾール値が2型で低値であったが, 生物学的指標によって, 再発や薬物中断の是非を予測する方法は今後に課せられた課題と考えられる.
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