長期腹膜透析 (CAPD) 施行時の腹膜生検組織所見上, 腹膜の肥厚, 線維化, 血管数の増加が認められ, 腹膜透過性が充進し, 腹膜機能不全に至る可能性がある.腹膜機能不全と腹膜血管数の関係を考慮した時, 腹膜は血管新生促進又は, 抑制CXCケモカインの影響を受けると想定される.今回, 炎症性サイトカインであるTNF-α又はIFN-γによる刺激にて, 培養ヒト腹膜線維芽細胞 (HPFbs) から産生され, 血管新生促進機能があるELR (+) CXCケモカインとしてGRO-α, IL-8又は, 抑制機能があるELR (-) CXCケモカインとしてMIG, IP-10をELISA法で測定し, 解析した.TNF-α単独刺激では, ELR (+) CXCケモカインを時間, 容量依存性に産生を促進したが, ELRモチーフ (-) ケモカインの産生に関して影響せず, IFN-γの併用刺激時のみ, IFN-γ単独刺激時と比較して, ELRモチーフ (-) ケモカインの産生を, 時間, INF-γ濃度依存性に増大した.IFN-γは, 濃度依存性に, ELRモチーフ (-) ケモカインの産生を促進し, TNF-α刺激時に促進されたELRモチーフ (+) ケモカインの産生を抑制した.腹腔内炎症時.INF-γ, TNF-αを中心とした炎症性サイトカイン刺激にて, HPFbsから産生されるCXCケモカインのELRバランスが変化し, 血管新生を介し, 腹膜に影響を与える可能性があると考えられた.
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