昭和医学会雑誌
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49 巻, 6 号
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  • 九島 巳樹, 斉藤 多紀子, 佐川 文明
    1989 年 49 巻 6 号 p. 521-527
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    乳癌の細胞学的診断の基準となる, 乳管上皮および乳癌細胞の細胞学的特徴をより精細に検討することを目的として, 乳癌および非癌乳腺疾患の手術材料を電子顕微鏡 (以下, 電顕と略) 的に観察した.そして乳管上皮および乳癌細胞を各々, 明細胞型の細胞 (明細胞型乳管上皮細胞と明細胞型癌細胞) , 暗細胞型の細胞 (暗細胞型乳管上皮細胞と暗細胞型癌細胞) , 中間型の細胞 (中間型乳管上皮細胞と中間型癌細胞) の3種類に分類した.この分類に従って手術材料と同一症例の乳腺穿刺吸引細胞の光学顕微鏡 (以下, 光顕と略) 的所見と比較検討し, さらに核小体の大きさの診断的価値を知るために, 電顕写真上で, 画像解析装置を用いて, 核小体の計測を行った.以上の結果, 前述の3種類の細胞は乳癌の組織型や非癌乳腺疾患の種類によって症例毎に含まれる比率が異なっていた.すなわち, 明細胞型の細胞が過半数を占める明細胞優勢型の細胞像を示すものは線維腺腫や乳頭腺管癌および充実腺管癌の一部に認められ, 暗細胞型の細胞を25%以上含む (明・) 中間・暗細胞混合型や暗細胞型の細胞が過半数を占める暗細胞優勢型の細胞像を示す症例はすべて乳癌であった.電顕写真上での核小体の計測では核小体の面積および最大径において, 乳癌症例は非癌乳腺疾患症例よりも高値を示すものが多く, 特に核小体面積の平均値で2.5μ2以上, 核小体最大径の平均値で2.5μ以上の症例はすべて乳癌であった.以上, 暗細胞型の細胞を比較的多く (25%以上) 有し, あるいは大型の核小体 (面積平均2.5μ2以上, 最大径平均2.5μ以上) を持つ症例は乳癌の細胞学的診断が可能と考えた.しかし, 症例ごと, あるいは同一症例の中でも個々の核によって, 核小体の大きさにはばらつきがあり, 大部分の核小体が面積, 最大径共に非癌乳腺疾患症例よりむしろ低値を示す乳癌症例も存在することが明らかになった.このような症例には前述の明細胞型の細胞を多く含み, 暗細胞型の細胞は少なく, 穿刺吸引細胞像においては非癌乳腺疾患との鑑別は困難なものがあるため, 組織学的診断が必要と考えた.
  • 圓谷 徹彦, 小林 健嗣, 新保 秀光, 朴 正佑, 赤木 太郎, 戸塚 大輔, 柴田 孝則, 斉藤 研一, 内田 潤, 北沢 孝三, 伊藤 ...
    1989 年 49 巻 6 号 p. 528-536
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回の研究の目的はIgA腎症の臨床ならびに病理学的所見が腎生検を施行した時点で正常範囲内のクレアチニン値 (0.7~1.4mg/dl) と相関するか否かについて検索することである.IgA腎症の88症例 (男性44例, 女性44例) 中男性33例と女性44例がクレアチニン値正常であり, 男性11例が1.5mg/dl以上を示した.正常範囲内のクレアチニン値は収縮期血圧, 総コレステロール, 尿酸, クレアチニンクリアランス, PSP値と相関を示したが, 拡張期血圧, IgA, C3, C4値とは相関を示さなかった.腎切片上の病変領域の定量分析により正常範囲内のクレアチニン値は糸球体の半月体面積や尿細管間質病変の拡がりと相関していたが, ボウマン嚢, 糸球体係蹄, メサンギウム領域の拡がりとは相関を示さなかった.このようにクレアチニン値が正常範囲内でも予後を推測するに有効であることが示された.
  • 小室 好一
    1989 年 49 巻 6 号 p. 537-546
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    体幹組織構成の年齢的変化を明らかにするために, 日本人成人100名 (男50, 女50) のCT写真を体幹5断面高で撮影し, 部位別, 性別, 年齢別1ご検討した.CT写真撮影はErdheim格子線に準じて, E5 (胸骨中点高) , E6 (剣状突起高) , E7 (上腹部高) , E8 (臍高) , E10 (下腹部高) について行い, 構成分としては, 脂肪層, 骨筋層, 体腔の断面積を測定, 総断面積に対する比を算出し, 比較検討した.結果: 1.各断面の総断面の総断面積は男性では各年代ともE5が最も大, E6がこれにつぎ, E8が最も小で, すべての断面において30歳代以降加齢的減少の傾向が認められた.女性でも部位別の総断面積の大きさの順位は同様であったが, E10はE6に近い値を示し, 年齢的には40歳代に増加, 50歳代に最高に達し, 60歳代で急減する傾向が見られた.2.各組成比の年齢的消長を見ると, 脂肪層比は男性では30歳代以降加齡減少の傾向を示し, 女性では30歳代から50歳代の間ではほぼ等しく, 60歳代から加齢減少の傾向を示した.各年代ともE8が最も高く, 女性が男性よりも高かった.骨筋層比は一般に男性は60歳代から減少, 70歳代が最小となる傾向が見られたが, 女性では年齢差はほとんど見られなかった.体腔比は男女とも40歳代から加齢増加の傾向を不していた.3.各断面構成の年齢的消長を見ると, E5, E6, E7では男女各年代とも体腔比が最蔭高く, 骨筋層比がこれに次ぎ, 脂肪層比が最も低かった.E8では男性は全年代を通して骨筋層比が最も高く, 体腔比がこれに次ぎ, 脂肪層比が最も低かった.これに対して女性では30歳代から50歳では脂月々層比が, その後は骨筋層比がそれぞれ最も高かった.E10では男女とも骨筋層比が最も高かったが, 男性では40歳代から体腔比が, 女性では30歳代から脂肪層比が, 70歳代には体腔比がそれぞれ骨筋層比に次いでいた.4.各断面における各組成の男女差を見ると, 脂肪層比は各断面において各年代とも女性が男性よりも優り, 骨筋層比はE5, E8, E10では各年代とも著明に, E6では僅かに, E7では60歳代迄それぞれ男性が女性よりも優り, 体腔比はE5では各年代とも, E6とE7では40歳代から男性が女性よりも優り, E8, E10では各年代とも男女差は認められなかった.
  • 河村 直子, 三辺 武幸, 岡本 途也
    1989 年 49 巻 6 号 p. 547-554
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    中・高度難聴者には軽度の聴力低下でも影響は大きく, なかでも小児にとっては大きな障害となる.小児の感音難聴の中には難聴が進行するものが見られ, ステロイドを投与することにより改善するものがある.しかし, ステロイド療法を施行し聴力が改善した症例で, ステロイド投与中止後聴力がふたたび悪化した症例が見られた.この現象はステロイド投与を中止したことによる聴力の再悪化ではないかと考え, ステロイド療法施行時に内因性血中コルチゾール値をパラメーターとして測定し, 検討した.正常小児49例の血中コルチゾール値をGamma Coat Cortisolを用いたRIA法で測定したところ, 平均値は7.8±3.2μg/dlであった.これを小児血中コルチゾール値の正常値とした.小児感音難聴増悪症例15例に聴力検査と血中コルチゾール値の測定を施行しながらステロイド療法を行なった.15例中2例はステロイド投与中止後聴力がふたたび悪化した症例で, 血中コルチゾール値を測定しながら再度ステロイドを投与した.血中コルチゾール値が1.0μg/dl以上に回復してからステロイド投与を中止したところ, 聴力の再悪化は見られなかった.15例中13例は, 初回より血中コルチゾール値を指標としてステロイド療法を行なった.血中コルチゾール値は, ステロイド投与後一週間以内に13例中12例が1.0μg/dl以下となった.ステロイドを減量していくと, ある時点で血中コルチゾール値が回復してきており, 血中コルチゾール値が1.0μg/dl以上に回復してからステロイド投与を中止したところ, 聴力の再悪化は見られなかった.以上より, 感音難聴増悪症例には, ステロイドホルモン投与が有効な症例があり, 内因性コルチゾールの低下は難聴の再増悪に影響するので, 血中コルチゾール値の測定によってステロイドの投与を中止する時期を決定することができることがわかった.ゆえに, ステロイド療法のパラメーターとして, 血中コルチゾール値を測定することは有用だと言える.
  • 大原 秀治, 太田 秀一, 田代 浩二, 三田 〓
    1989 年 49 巻 6 号 p. 555-563
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    長い間, いろいろなin vitroの細胞培養系においてウシ胎児血清 (FCS) は培養細胞の維持に不可欠のものとされており, 種々の培養系で用いられてきている.最近免疫応答の実験系で, 培養液に対するこのFCSの添加により結果の解釈に困難の生ずることが報告され, またT細胞の増殖を誘導する可能性が示唆されるようになった.そのためか, serum-free mediumを用いる研究者達が増えてきている.そこでわれわれはFCSの細胞増殖と抗体産生に及ぼす影響を種々の条件下において検討し, 以下の結果を得た.
    (1) まず最初に, ICR系マウス脾細胞のDNAに対するラジオアイソトープ (3H-thymidine) の取り込みを調べた.この細胞は無処置およびSRBC (ヒッジ赤血球) で免疫後6日目のマウスから得た.どちらの実験系でもFCS2.5-40%の添加によりdose-dependentな細胞増殖がみられた. (2) 次にこのような細胞増殖は通常用いられるFCS濃度 (5-20%) によりB細胞とT細胞 (C57Bl/6系マウス) でも誘導されることが見出された.
    (3) 抗体産生に及ぼすFCS (5-20%) の影響は培養2日目にPFC assayで調べた.SRBCで免疫後4日目のICR系マウスから得た脾細胞とB細胞を用いた.いずれも抗SRBC (IgM) 抗体産生細胞の増加が認められた.
    (4) しかし免疫後6日目のB細胞では, IgG抗体産生細胞に増加がみられたのみであった.この結果はFCSに対する感受性が細胞の種類あるいは分化段階によって異なっている可能性を示唆している.
    (5) SRBCで免疫後4日目の脾およびT細胞 (ICR系マウス) にFCSを添加し, 培養上清を得た. SRBC-primed B細胞 (4日目) にこの培養上清を加えたとき, 抗SRBC抗体 (IgM) 産生細胞の増加がみられた.液性因子の介在している可能性がある.
  • 芝木 国雄, 大田 桂一, 深貝 隆志, 柴崎 裕, 杉村 芳文, 檜垣 昌夫, 今村 一男
    1989 年 49 巻 6 号 p. 564-572
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍の診断に血中腫瘍マーカーが有用であるか否かにつき検討を行った.対象は1978年から1988年までに当科を受診した初発膀胱癌患者で, 組織学的に深達度が明らかな93例で, その内訳はpTa12例, pT150例, pT213例, pT310例, pT48例である.また同時期に受診した前立腺肥大症患者22名を対照として比較検討した.検討項目はcarcinoembryonic antigen (CEA) , ferritin, β2-microglobulin (β2Mg) , α-fetoprotein (AFP) , immunosuppressive acid protein (IAP) , tissue polypeptide antigen (TPA) の6項目である.その結果ferritin, AFPは前立腺肥大症群および膀胱癌の各深達度間に差を認めず, 腫瘍マーカーにはなりにくいと考えられた.CEAは前立腺肥大症群とpTa, pT4との間に有意差を認め, 診断効率から1.0ng/mlをcut off値とすると敏感度, 正診率は今回検討した項目中最も高かった.β2Mgは前立腺肥大症, pTa~pT3の各群とpT4との間に有意差を認めた.またβ2Mgは腎機能と相関することから, 血清クレアチニンとの相関を求めたが, 閉塞性腎障害を来たしやすいpT4においては相関を認めず, 腎機能による影響はうけていなかったと考えられた.IAPは前立腺肥大症群とpT2~pT4, pT4と前立腺肥大症群, pTa, pT1との間に有意差を認め, 深達度を増すごとに高値となる傾向がうかがえた.TPAは前立腺肥大症群とpT4の間に有意差を認めた.以上より今回の検討から膀胱腫瘍における治療前の血中腫瘍マーカーについて以下の結論を得た. (1) CEAのcut off値を1.0ng/mlとすると敏感度, 正診率が最も高く1.0ng/mlを越える場合には膀胱腫瘍も念頭におく必要がある. (2) IAPが異常値であればhigh stageの可能性が考えられる. (3) β2Mg, TPAが異常高値を示した場合にはpT4の可能性が考えられる.
  • 赤池 洋
    1989 年 49 巻 6 号 p. 573-581
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    音の方向感検査は, 中枢性難聴を診断する上での重要な一方法である.そこで, 脳出血, 脳梗塞などの脳血管障害による一側大脳半球障害者を対象に, 新しい方向感検査装置TD-01を用いて方向感検査を行った.検査方法には, 従来行われている手動法, 自記法に加え, 自記法の手法を変更した自記法変法を用いて行った.本器は, 任意の音源について無ひずみのまま最小2μsecより最大2msecまでの時間差を任意に作り出すことができ, 時間差は2, μsec単位で増減することができる.被検者のスイッチ操作によって, 音像の移動方向が瞬時に反転するとともに, 両耳間時間差の軌跡が自動的に記録される.すなわち, 本機器により動的な方向感検査が可能である.われわれが考案した自記法変法は, 従来の自記法に比較して患者側の操作を単純化することにより, より正確な判定が可能になった.対象は症状のはっきりした片麻痺患者で第1期27例, 第2期27例に分けて検査を行った.同時に, 正常人に同様の検査を行い比較を行った.評価法としては, グラフにおける振幅の平均値と標準偏差値をもって方向感の指標とした.結果は, 正常人に比較して左片麻痺群で有意差を認め, 右片麻痺群とは有意差を認めなかった.また, 自記法と自記法変法との相関をみると, 左片麻痺群ではやや高い相関を認めたが, 右片麻痺群では相関を認めなかった.以上より, 対象とした片麻痺症例の方向感機能の判定には自記法変法が非常に有用であり, 左片麻痺群に方向感の悪化する例が多いことにより, 方向感の右大脳半球優位性が示唆された.
  • 岩波 正英, 池田 忠明, 広瀬 忠次, 浜井 直人, 緑川 武正, 生田目 公夫, 仲吉 昭夫, 鈴木 快輔
    1989 年 49 巻 6 号 p. 582-586
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡的止血目的に開発されたクリッピング法はクリップの改良, 手技の確立によって上部消化管出血に対し臨床応用がなされ良好な成績が得られている.近年, 本法は止血法のみならず術前口側浸潤範囲が問題となる胃上部早期癌に対して, 術中切離線決定のためのマーキングとして用いられつつある.今回, われわれは使用されるクリップとしてK型クリップは反転での操作にやや難があることにより, J型クリップを選択してマーキングを施行した.しかし, その欠点として組織把持の不確実性が存在するため, 連立クリップにより確実性をはかった.症例1, 2ともにクリップの脱落はみられず, 術中胃切除線の決定において両症例とも漿膜面よりの触知が可能であった.2症例の経験により, 胃切除線決定のためのマーキング法として有用であったので, 症例を呈示するとともに若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 矢島 愛治, 大田 桂一, 深貝 隆志, 鳥居 毅, 小川 肇
    1989 年 49 巻 6 号 p. 587-591
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    55歳の男性で, 肉眼的血尿を伴う右下腹部痛を主訴に, 1987年9, 月5日, 近医を受診.X線検査にて, 右尿管結石と診断され, 自然排石があった.しかし, その後の点滴静注腎盂造影で右水腎症が残存していたため, 同年10月7日, 精査目的で当科入院.下大静脈造影と経皮的腎盂造影を併用し下大静脈後尿管と診断した.尿管端々吻合術, および尿管内ステントカテーテル挿入を行った.1年8カ月後の経静脈性腎盂造影では, 尿管狭窄, 結石等の所見はなく, 腎杯, 尿管の拡張も認められなかった.本症例を報告するとともに, 本邦における本疾患284例について考察した.
  • 呉 順美, 竹内 治男, 梅田 知幸, 青木 明, 水野 幸一, 宮下 卓夫, 八田 善夫, 副島 和彦
    1989 年 49 巻 6 号 p. 592-596
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    血中AFPが異常高値を示した胃癌症例を経験したので, 臨床病理学的検討を加え報告した.本症例におけるAFPは, 免疫組織学的検査で胃原発巣およびその転移巣の癌細胞内に証明され, 肝をはじめとする他の健常組織には認められなかった.また剖検組織を用い組織内含有量を検討すると, 癌組織は健常組織に比し明らかに高値を示した.さらにAFPのレクチン親和性を免疫電気泳動法を用い分析すると, 肝細胞癌のパターンとは異なり, 転移性肝癌のパターンを示した.以上より本症例におけるAFPは, 胃原発巣およびその転移巣の癌細胞に由来するものであり, 本症例はいわゆるAFP産生胃癌の一例と考えられた.
  • ―いわゆる“Running away” Behaviorと関連して―
    梶田 修明, 石田 浩純, 高橋 正典, 延山 雅彦, 井上 道雄
    1989 年 49 巻 6 号 p. 597-601
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例68歳女性, 発病初期より緘黙状態を呈し言語的疎通性が全く困難であったPick病の1例である.Pick病は従来より, その主たる病巣部位により側頭・前頭型, 側頭型, 前頭型に3分類されている.本例の臨床特徴としては前頭葉症状とされる発動性減退, 緘黙, 立ち去り行動が挙げられ, 側頭葉症状とされるPick病第1期に目立つ欲動的脱制止, 第II期の滞続言語は認められなかった.更に頭部X線CT, MRI, 123I-IMPSPECTの放射線学的画像所見に於ても, その病変部位は前頭葉が中心であり本例が前頭型Pick病と診断され得ると考えられた.本邦においては前頭型Pick病は稀であるといわれ, さらに発病初期より緘黙状態を呈した例も少なく, 前述した立ち去り行動“Running-away”Behaviorの発現機序に関する文献的考察も混え報告した.
  • 廣本 雅之, 太田 秀男, 津嶋 秀史, 千葉 芳久, 横川 京児, 星野 光典, 賀嶋 俊隆, 久保田 和義, 小池 正
    1989 年 49 巻 6 号 p. 602-605
    発行日: 1989/12/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    長期透析患者に発生した腎癌の1例を経験したので報告する.症例は, 49歳男性.8年5カ月におよぶ血液透析の既往を持つ.不明熱精査目的にて当科入院となり腹部エコー, CT等により左腎腫瘍と診断, 左腎摘出術を行った.摘出左腎は腎門部を中心とした多発性, 充実性腫瘍が膨脹性に発育しており, 乳頭型, 顆粒細胞亜型, 異型度2で, pT3, pV1b, pN1, pM0と診断された.非腫瘍部では, 多数の嚢胞形成を認め, acquired cystic disease of the kidney (以下ACDK) と考えられた.長期透析患者における腎悪性腫瘍の合併率は高く, また, 高率にACDKの合併を認めることより, 腎癌とACDKとの関連が問題であると考えられた.
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