高齢化社会において, 排尿障害を訴え泌尿器科外来を受診する患者数が年々増加傾向を示し, その中でも, 前立腺肥大症がかなりの数を占めている.近年, 前立腺疾患に対する画像診断には, 超音波, CT, MRIなどが用いられているが, 現在のところ超音波が最も信頼のおけるものといわれている.この機器を用い, 以前我々は61例の剖検例を用い, 肥大した前立腺の組織型と超音波画像とを比較し, Glandular typeとHypoechoic pattern, Fibromyomatous typeとHyperechoic pattern, Mixed typeとIsoechoic patternとで各typeともsensitivityが70%以上の読影が可能であった.しかし, 今までに臨床例での検討はほとんど行われておらず, 臨床症状と組織型との関係についての報告もほとんどなされていない.今回, この結果をもとに52例の臨床症例に同様の検索を試みた.G-typeとHypoechoic patternでsensitivity 65.0%, specificity 84.4%, F-typeとHyperechoic patternでsensitivity 16.7%, specificity 76.9%, M-typeとIsoechoic patternでsensiitivity 76.9%, specificity 53.8%との結果を得た. G-type, M-typeに関してはsensitivityが70%前後の結果を得たのに対し, F-typeではsensitivityが16.7%と低値を示したが, ほとんどがMtypeとの読影上の困難がめだち, この原因として, 病理所見から慢性およびビ慢性のリンパ球や形質細胞の浸潤, 前立腺上皮の内腔への増生などが認められ, 今後の検討が必要であると思われた.また, 52例の臨床症状をsymptom scoreとして数値化し, 組織型および前立腺重量との比較検討を行ったところ, G-typeとF-type, F-typeとM-type, M-typeとG-typeとも有意差は認められず, また, symptom scoreと前立腺重量との比較検討においても, 両者間での相関関係が認められず, 以前からいわれている様に, 症状と大きさは比例しないと云う事以外に組織型と症状とも比例しないことが判明した.
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