胃癌切除症例40例についてAgNORs染色法を施行し, 癌の悪性度や浸潤度との関連について検討した.染色された核内顆粒 (dot) の染色形態によりA, B, C, Dの4つの型にわけて計測し, 各症例の核1個あたりのAgNORs平均dot数 (AgNORs平均) および各症例のAgNORs全dot数におけるB型, C型のdot数の占める割合 (AgNORs B+C/TOTAL) を算出し, 臨床病理学的に検討した.その結果, AgNORs平均は組織型では分化型癌4.64±0.45であるのに対し, 低分化型癌5.65±1.13, 膠様腺癌6.75±1.47と有意に高値であり (p<0.01) , 壁深達度ではps (-) 例の4.74±0.66に対しps (+) 例は5.81±1.23, INFでは, INFα4.31±0.26, INFβ4.86±0.82に対しINFγ6.33±1.01, 間質結合織量比では中間型の5.02±1.06に対し硬性型は6.24±0.64, 発育様式では表層拡大型4.73±0.54であるのに対し, 中間型が5.21±1.12, 深部拡大型が6.45±0.92とそれぞれ有意差を認め (p<0.01) , 悪性度, 浸潤度が高いほど高値を示す結果となったが, 脈管侵襲, リンパ節転移では有意差を認めなかった.AgNORs B+C/TOTALでも同様の結果を得たが, 壁深達度でps (一) 例17.8%に対し, ps (+) 例27.2%, INFでINFβ17.7%に対し, INFγとそれぞれ有意差を示した (p<0.01, p<0.05) .BrdU Iabeling index値 (BrdU L.I.) では組織型で分化型癌20.4%に対し膠様腺癌が30.2%と有意に高値を示し (p<0.05) , 壁深達度ではps (-) 例15.8%に対し, ps (+) 例22.9%, リンパ節転移ではn (-) 例16.5%に対し, n (+) 例21.5%, INFではINFβ16.9%に対し, INFγ24.6%, 間質結合織量比では中間型18.2%に対し, 硬性型25.0%, 発育様式では表層拡大型16.9%に対し, 深部拡大型25.0%と有意差を認めた (p<0.01, p<0.05) .また, AgNORs平均とBrdU L.I.との関連では相関係数 (r) =0.393と有意な相関性を認めた (p<0.05) が, AgNORs平均とDNA ploidy patternとの関連ではAgNORs平均の平均値がAneuploid群の4.97±0.94に対し, Diploid群は5.33±1.19であり両者に相関性は認めなかった.以上より, AgNORsはそのdot数やdotの形態変化とくにB型およびC型のdot数の割合を計測することで, BrdU L.I.と同様に癌の浸潤度, 悪性度の指標として有用であり, 癌の性質を見る上で重要と思われた.
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