昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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53 巻, 2 号
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  • 桂 隆志, 小林 和夫, 穂坂 路男, 杉原 佐知子, 笠原 慶太, 高橋 昭三
    1993 年 53 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    免疫した動物に大量の抗原を投与すると, 一過性の細胞性免疫反応の低下が出現する.この現象は脱感作として知られている.本稿では現在不明である脱感作機序について解析を進めた.大量の抗原を投与された免疫マウスでは, 投与3時間後に, 一過性の血清インターロイキン2 (IL-2) 活性がみとめられた.脱感作されたマウスは, 大量抗原投与後1日に抗原非特異的遅延型皮膚反応の抑制を示し, 脱感作抗原特異的抑制は3日後に出現した.脱感作後3時間の内因性IL-2活性を含むマウス血清により, 免疫マウスの遅延型過敏反応の抑制は移入できた.免疫マウスにリコンビナントIL-2を投与すると, 遅延型過敏反応が抗原非特異的に抑制された.以上よりIL-2が遅延型過敏反応の抑制環境に重要な役割を演じていることが判明した.
  • 上田 和光
    1993 年 53 巻 2 号 p. 130-137
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    超音波カラードプラ断層法にて肝腫瘍内血流分析を行い, 各種肝腫瘍の診断を試みた.対象は未治療の肝腫瘍89例で, 内訳は肝細胞癌 (以下HCC) 28例, 転移性肝癌39例, 胆管細胞癌2例, 肝血管腫20例である.超音波カラードプラ断層法にて肝腫瘍内血流をカラー表示し, 同部位でパルスドプラ法によりドプラシフトグラムを記録するとともに血流波形, 血流速度, Resistance Index (R.I.) を計測し分析を加えた.各肝腫瘍の血流検出率はHCC 71.4%, 転移性肝癌59.0%, 肝血管腫5%であった.最高血流速度 (Vmax) はHCC 0.36±0.27m/s, 転移性肝癌0.50±0.28m/sであり, R.I.はHCC 0.68±0.13, 転移性肝癌0.72±0.10であった.血流検出率はHCCが最も高かったが, Vmaxを比較すると腫瘍径5cm以上ではHCCに比し, 転移性肝癌の方が速かった.R.I.に関しては腫瘍径5cm未満ではHCCの方が低かった.本法による肝腫瘍内血行動態の比較検討は各種肝腫瘍の鑑別に有用と思われた.
  • 久保田 和義
    1993 年 53 巻 2 号 p. 138-145
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    橈骨動脈と橈側皮静脈により作成された通常の内シャントを有する慢性血液透析患者71症例に対し, Duplex超音波診断装置を用いて, 上腕動脈, 橈骨動脈, 橈側皮静脈 (シャント静脈) および尺骨動脈の血流測定を行ない臨床的評価を行なった.内シャント作成側の上腕動脈血流量は737.3±445.2ml/minで対側の10倍, 橈骨動脈の血流量は570.8±401.7m1/minで対側の28倍であった.吻合術式〔側々吻合群 (19例) ・側端吻合群 (19例) ・端々吻合群 (33例) 〕による検討では, 側々吻合群の上腕動脈, 橈骨動脈, 橈側皮静脈 (シャント静脈) , 尺骨動脈における血流量は他の2群に比べ増加しており, シャント静脈の血流量は側々吻合群916.2±628.3ml/min, 側端吻合群554.2±344.2ml/min, 端々吻合群430.4±295.7ml/minであった.尺骨動脈血流量は, 側々吻合群・側端吻合群が端々吻合群に比べ増加していた.側々吻合群・側端吻合群では, 橈骨動脈遠位部からシャントに流入する血流が認められ, 尺骨動脈血が手掌動脈弓を介してシャントに流入しており, 橈骨動脈と尺骨動脈の血流量を反映する上腕動脈血流量がシャント血流量にほぼ匹敵していることが証明された.側端吻合群における慢性腎炎群 (11例) と糖尿病性腎症群 (8例) との比較では, 糖尿病性腎症群の橈骨動脈血管径・橈側皮静脈 (シャント静脈) 血管径が慢性腎炎群に比べ低値であったが, 血流量に差は認められず, 良好な内シャントが作成できれば血流量は充分確保できると考えられた.シャント血流量が2000ml/minを越える2症例に心不全が認められ, シャント血流過多による高心拍出量性心不全と診断された.本装置による内シャント血流の測定は, 無侵襲かつ容易であり, シャント血流量不足の予知や, 高心拍出量性心不全の診断に有用であり, 透析患者の長期管理に必要であると考えられた.
  • 沼部 聖
    1993 年 53 巻 2 号 p. 146-155
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    原発単発胃癌271例 (切除241例) における血清CA19-9を臨床病理学的に検討し, また組織内CA19-9を酵素抗体法を用い免疫組織学的に検討した.血清CA19-9陽性67例 (切除47例) では病期進行とともに陽性率・測定値の上昇を認め, 陰性例に比し治癒切除例が少なかった.免疫組織染色においては血清CA19-9陽性例で組織内陽性率が70.2%と有意に高く, 組織型別では低分化型, 局在様式ではcytoplasmic typeが多く, 壁深達度・脈管侵襲・リンパ節転移度・進行度に伴い陽性率が上昇した.血清および組織内CA19-9陽性例においては, 陰性例に比し5年生存率が低く, またcytoplasmic typeでは5年生存率が低い傾向がみられた.以上より, 血清および組織内CA19-9の測定は胃癌の進行度・悪性度・集学的治療方針および予後判定の指標として有用で, 臨床的意義があると思われる.
  • 丸森 健司
    1993 年 53 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胃癌切除症例40例についてAgNORs染色法を施行し, 癌の悪性度や浸潤度との関連について検討した.染色された核内顆粒 (dot) の染色形態によりA, B, C, Dの4つの型にわけて計測し, 各症例の核1個あたりのAgNORs平均dot数 (AgNORs平均) および各症例のAgNORs全dot数におけるB型, C型のdot数の占める割合 (AgNORs B+C/TOTAL) を算出し, 臨床病理学的に検討した.その結果, AgNORs平均は組織型では分化型癌4.64±0.45であるのに対し, 低分化型癌5.65±1.13, 膠様腺癌6.75±1.47と有意に高値であり (p<0.01) , 壁深達度ではps (-) 例の4.74±0.66に対しps (+) 例は5.81±1.23, INFでは, INFα4.31±0.26, INFβ4.86±0.82に対しINFγ6.33±1.01, 間質結合織量比では中間型の5.02±1.06に対し硬性型は6.24±0.64, 発育様式では表層拡大型4.73±0.54であるのに対し, 中間型が5.21±1.12, 深部拡大型が6.45±0.92とそれぞれ有意差を認め (p<0.01) , 悪性度, 浸潤度が高いほど高値を示す結果となったが, 脈管侵襲, リンパ節転移では有意差を認めなかった.AgNORs B+C/TOTALでも同様の結果を得たが, 壁深達度でps (一) 例17.8%に対し, ps (+) 例27.2%, INFでINFβ17.7%に対し, INFγとそれぞれ有意差を示した (p<0.01, p<0.05) .BrdU Iabeling index値 (BrdU L.I.) では組織型で分化型癌20.4%に対し膠様腺癌が30.2%と有意に高値を示し (p<0.05) , 壁深達度ではps (-) 例15.8%に対し, ps (+) 例22.9%, リンパ節転移ではn (-) 例16.5%に対し, n (+) 例21.5%, INFではINFβ16.9%に対し, INFγ24.6%, 間質結合織量比では中間型18.2%に対し, 硬性型25.0%, 発育様式では表層拡大型16.9%に対し, 深部拡大型25.0%と有意差を認めた (p<0.01, p<0.05) .また, AgNORs平均とBrdU L.I.との関連では相関係数 (r) =0.393と有意な相関性を認めた (p<0.05) が, AgNORs平均とDNA ploidy patternとの関連ではAgNORs平均の平均値がAneuploid群の4.97±0.94に対し, Diploid群は5.33±1.19であり両者に相関性は認めなかった.以上より, AgNORsはそのdot数やdotの形態変化とくにB型およびC型のdot数の割合を計測することで, BrdU L.I.と同様に癌の浸潤度, 悪性度の指標として有用であり, 癌の性質を見る上で重要と思われた.
  • ―保存肝のViability評価の指標として―
    川口 哲也
    1993 年 53 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    【目的】肝移植に際し, 移植肝のviabilityを簡易かつ早期に評価する目的で肝組織内pHを測定した.また, 至適保存条件を組織内pHの観点から推察してみた.【動物と方法】動物には2509前後のWistar系雄ラットを使用した.肝摘出はKamadaの方法に準じて行った. (実験I) 1群: 0.05, II群: 0.5, m群: 16 (ml/h/BWg) の各灌流速度における組織内pHを測定した. (実験2) 4℃および常温保存における組織内pHおよび△pH×保存時間を測定し, 7日生存率をもとめた. (実験3) H群: ハルトマンD液, UW群: UW液, HP群: Prostaglandin E1 (以下PG) 添加ハルトマンD液 (1μg/ml) の各保存液について組織内pHを測定し, 6時間保存後の7日生存率をもとめた.【結果】 (実験1) II<III<I群のUCHで組織内pHの低下が大きい傾向がみられた. (実験2) 4℃ではpHの変化はほとんど認められなかったのに対し, 常温では経時的にpHの低下が認められた.常温での」pHは生存率を反映し, 4pH×保存時間 (分) であらわされる値と相関した.これから実験1での80%生存可能な保存時間を推定するとI群172分, II群467分, III群280分であり, II群が長時間保存可能な灌流速度である結果がえられた. (実験3) H群では, 初期より急激な△pHのマイナス側への低下がみられたのに対し, UW群は逆に急激な△pHのプラス側への増加とそれに続く緩徐な減少が認められたが, マイナスにはならなかった.HP群もUW群に近い変化を示した.【結語】単純浸漬肝保存に際し, 肝組織内pHを経時的に測定することは, 簡易かつ早期のviability評価に有用であり, 組織内pHがマイナス側に傾き始めた時点よりの△pH×保存時間 (分) により生存率が予測され, 80%生存率からみた値は4.86であった.また, 至適保存条件としては, 灌流速度は0.5ml/h/BWg, 保存温度としては4℃, 保存液はUW液が最適でありPG添加により肝保護効果が発現されるものと推測された.
  • ―AgNORsを用いて―
    井関 雅一
    1993 年 53 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胃癌患者に対し術前化学療法を行い, 化学療法施行前後でのAgNORsの変動を観察し, 組織学的効果判定と比較検討することにより, AgNORsが化学療法の効果判定に有用であるかどうかを検討した.対象は術前化学療法を行った胃癌症例23例で, 5'-DFUR群17例, CDDP群6例である.化学療法投与により平均AgNORs数は投与前5.75±1.02から投与後3.83±0.97と減少した (p<0.01) .形態別に見ると, A型では化療前0.24±0.23化療後1.21±0.59と有意に増加しており (p<0.01) , B型では化療前1.51±0.80化療後0.33±0.44, D型では化療前3.79±1.41化療後2.25±0.94と有意に減少していた (p<0.01) .深達度別に見ると, PS (-) では, 化療前5.95±1.13化療後粘膜面3.43±0.97化療後先進部3.83±0.38と減少しており, PS (+) でも化療前5.63±0.91化療後粘膜面4.14±0.84化療後先進部3.69±0.53と低下していたが, 減少率では, PS (-) の粘膜面で大きく低下していた (p<0.05) .分化度別に見た場合, 分化型, 低分化型ともに化療後AgNORsは有意に低下しており (p<0.01) , 減少率は組織型に影響されにくいと考えられた.組織学的効果判定ではgrade0が7例, grade Iaが8例, grade Ibが4例, grade IIが4例であった.grade 0の症例でもAgNORs数は, 化療前6.28±1.04化療後粘膜面3.32±0.90先進部3.66±0.50と有意に減少しており (p<0.05) , 特に粘膜面での減少率が大きかった.またgrade Ia以上の症例においても化療前5.54±0.96化療後粘膜面4.05±0.94先進部3.66±0.50と有意に減少しており (p<0.01) , 特に先進部で減少率が大きかった.化学療法別による組織学的効果判定では, 5'-DFUR群ではgrade 0が7例, grade Ia以上が10例であり, CDDP群では6例全例grade Ia以上であった.AgNORsの変化は5'-DFURでは化療後粘膜面での減少率が大きいのに対し, CDDPでは先進部での減少率が大きく, 薬剤の種類, 投与方法により, 効果のあらわれる部位が違っていた.以上術前化学療法によるAgNORsの変化は, 組織学的に変化のみられないものでも化学療法による形態学的変化を反映しており, 効果判定の補助手段となりうると考えられた.
  • 稲葉 昌久, 黒川 宗一, 荏原 徹, 平野 勉, 永野 聖司, 高橋 昭三
    1993 年 53 巻 2 号 p. 176-181
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎症における酸化ストレス (oxidative stress) の状態を検索するために, 81人の糖尿病患者と, 対照として年令を一致させた15人の非糖尿病患者において, 血清アスコルビン酸 (AsA) と血中過酸化脂質 (LPO) を測定し, 蛋白尿の程度や血清クレアチニン, 血清アルブミン, FBSなどのパラメーターとの関連について検討した.患者は, 尿中微量アルブミン検査の結果を踏まえ, normo-, micro-, macroalbuminuria及びnephrosisの4つの群に分けた.AsAは, α, α'-ジピリジル法に従って測定した.ジチオスレイトールを血清とincubateして還元後に測定したものをtotal AsA (TAsA) とし, 別に測定したAsA (L-アスコルビン酸) 値を差し引いてL-デヒドロアスコルビン酸 (DAsA) とした.LPOの測定は, TBA法によった.血清AsA濃度は, 非糖尿病対照群に対し, normoalb群において有意に低下 (P<0.05) し, microalb群, macroalb群, およびnephrosis群では, より有意な減少を示した (各々P<0.001) .DAsA濃度は, 各群に有意差はなかったが, DAsA/TAsA (%) は各群で徐々に増加し, nephrosis群で有意な高値を示した (P<0.05) , 糖尿病患者全体で血清AsA濃度は, 血清アルブミン濃度との間に有意な正相関 (P<0.01) を認めた.またDAsA/TAsAは, 血清クレアチニン濃度と正相関 (P<0.05) を示した.AsA濃度, DAsA/TAsAはともに, HbAlcを含む他のパラメーターとの問に相関を示さなかった.以上より, 血清AsA濃度は糖尿病において, 血糖コントロール状態とは無関係に減少しており, 腎障害の進展に伴い低下し, 酸化ストレスが増大していることが示唆された, LPOは対照群に比し各群で高値を示し, 腎症の進展につれて漸次上昇傾向があったが, AsA濃度やDAsA/TAsAとは相関を示さず, 血清AsA濃度はリボ蛋白や膜脂質の酸化ストレスの状態を, 直接的には反映しないことが推測された.
  • ―家兎加温実験による腫瘍の縮小率について―
    上地 一平, 鈴木 恵史, 新井 一成, 新井 浩士, 小池 正, 小口 勝司
    1993 年 53 巻 2 号 p. 182-188
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    深部腫瘍の選択的な加温法の確立を目的に, 四三酸化鉄微粒子をリボソームの脂質分子膜で覆い, 腫瘍親和性物質であるヘマトポルフィリンを結合させたリボソーム性強磁性体微粒子 (HP-LM) を作製し, 腫瘍栄養血管に経動脈的に投与して高周波誘導加温を行い, 腫瘍内温度および腫瘍の縮小率について検討した.家兎下腿部にVX-2腫瘍細胞を移植し, 腫瘍径3.5cmとなった時点で, 大腿動脈よりHP-LM100mg/kg投与し, 高周波誘導加温装置を用いて, 1回加温時間20分間で週1回計3回づつ, 以下のA~C群を加温した.A群: 1回動注群, B群: 2回動注群, C群: 対照群.AB群はC群に対し, 腫瘍内温度が有意に上昇し, 腫瘍の縮小を認めた.HP-LMは動注することにより, 腫瘍組織に集積し, 高周波誘導加温による断続的加温で腫瘍の縮小が認められ, 有効な加温効果が得られる事が示された.
  • 新井 浩士, 上地 一平, 鈴木 恵史, 福島 元彦, 新井 一成, 小池 正, 小口 勝司
    1993 年 53 巻 2 号 p. 189-195
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    深部腫瘍の選択的加温法の確立を目的に, リボソーム性強磁性体微粒子 (HP-LM) を作製し, 家兎下腿にVX-2腫瘍移植後, 腫瘍栄養血管に動注リザーバーを留置し, 高周波誘導加温におけるHP-LMの有効な投与方法ならびに加温方法について検討した。.本研究では, 投与方法として動注リザーバーを用いることで腫瘍栄養血管を損なうことなくHP-LMを投与することが可能となった.しかし, 投与されたHP-LMは血流により徐々にwashoutされ, これを腫瘍内に残存させることは重要であり, 動注リザーバーを介した頻回投与の必要性が示唆された.また加温方法の検討では, 2週間に1回HP-LMを投与する場合は, 投与されたHP-LMの流出のためか週1回加温では投与直後は一過性に有励な加温が得られるが, より効果的な加温を得るには, 少なくとも週2回加温が有効であることが明らかとなった.本研究から, より効果的投与・加温間隔は2週間に1回HP-LM投与で週2回加温が腫瘍の抗腫瘍効果が高まることが判明した.
  • 清田 拓子, 猫田 泰敏
    1993 年 53 巻 2 号 p. 196-203
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    口蓋裂患者に対する手術目的は単に裂の閉鎖だけではなく, 良好な鼻咽腔閉鎖機能を得るためのもの, すなわち正常な言語獲得を主な目的としている.正常言語獲得の評価指標として, この鼻咽腔閉鎖機能をみているが臨床ではこれに一致度の高い開鼻声を判定にもちいている.口唇口蓋裂患者における言語障害に関連する各要因についてはすでに多くの研究業績があるが, 各要因の交絡の影響についての報告はまだなされていない.本研究では口蓋裂単独例における術後の開鼻声と各要因を層別解析したものである.研究対象は1980年4月から1992年5, 月までの12年間に, 昭和大学形成外科を訪れた口唇口蓋裂患者のうち初回口蓋形成術を受けた口蓋裂単独患者155例について検討した.各要因として個人の属性 (性別, 出生時体重, 口蓋の披裂程度, 手術時年齢) 手術手技及び術後経過所見 (瘻孔の大きさ, Push Backの程度, 軟口蓋の動き) を形成外科外来のカルテより得た.その結果, 開鼻声の有無との関連では, 性別, 出生時体重, 瘻孔の大きさ, では有意な差を認めなかった.また口蓋の披裂程度, 手術時年齢, 手術手技, Push Backの程度, 軟口蓋の動き, では有意な関連を認めた.そこでまず, 披裂程度, 手術時年齢および手術手技の3要因について, 各要因間の関連を考慮して開鼻声のある症例割合を検討してカテゴリーの合併をおこない, 一方の要因を層別変数とし他方の要因と開鼻声の有無との関連について層別解析をおこなった.その結果, 手術時年齢が直接的に開鼻声の有無に関連し, 口蓋の披裂程度, 手術手技は交絡要因とみなせた.次にPush Backの程度, 軟口蓋の動きを層別変数とし, 手術時年齢と開鼻声の有無との関連を検討した結果, Push Backの程度, 軟口蓋の動きのいずれを層別変数とした検討においても手術時年齢は開鼻声の有無と有意に関連することが明らかとなった.以上の結果, 手術時年齢は早期の方が開鼻声ある症例の割合を低くすることがわかり, 顎発育との関連を併せて今後の至適手術時年齢に示唆をあたえるものである.
  • ―ラット摘出心による検討―
    久米 誠人, 横川 秀男, 賀嶋 俊隆, 渡辺 俊明, 山田 眞, 井上 恒一, 高場 利博, 中井 康光
    1993 年 53 巻 2 号 p. 204-210
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    虚血再灌流時の心筋細胞と心毛細血管内皮細胞の超微形態学的変化を検討した.常温下で, 15分, 30分, 60分間大動脈を単純遮断した後, 再灌流した虚血再灌流心の心筋細胞と血管内皮細胞の虚血初期の変化を電子顕微鏡的に観察した.血管内皮細胞も心筋細胞と同様に, 虚血時間が延長するにしたがって細胞変性が進み虚血再灌流障害が段階的に強まることが明らかになった.血管内皮細胞の虚血初期の変化で特徴的なことは, 細胞質中のpinocytotic vesiclesの数の減少と内皮細胞の内腔側自由表面における微絨毛様の細胞質突起の増加であった.細胞質1μm2あたりのpinocytotlc vesiclesの数の平均値は, 34.20 (無虚血対照群) , 22.07 (虚1血15分群) , 10.36 (虚血30分群: ) であり, 虚血により有意に減少した.内皮細胞の内腔の自由面の細胞膜10μm長あたりの微絨毛様の細胞質突起の数の平均値は1.28 (無虚血対照群) , 3.00 (虚.血15分群) , 6.18 (虚血30分群) であり, 虚血による有意な増加がみられた.血管内皮細胞のpinocytotic vesiclesと微絨毛様の細胞質突起の数は, 虚血再灌流障害の有用な指標となり得ると考えられた.
  • 門倉 光隆, 谷尾 昇, 野中 誠, 山本 滋, 山田 真, 舟波 誠, 井上 恒一, 高場 利博, 田沢 公樹, 野口 久, 中島 宏昭, ...
    1993 年 53 巻 2 号 p. 211-215
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    過去5年間に入院治療を行った原発性肺癌158例のうち術前画像診断で腫瘤径が30mm以下 (cT1) の肺癌は37例あり, このうちcTINOMO, c-Stage Iと診断した28例中, pN2あるいはpM1と最終診断された8例を中心にT1進行肺癌の臨床像について検討した.年齢は平均64.3歳で, 発見動機は咳嗽3例, 検診発見5例であった.腫瘤径は15~30, 平均20mmの肺野末稍型肺癌で, 以前に撮影された胸部X線像 (4カ月~2年前) で異常陰影を指摘し得たものは1例のみであった.病理診断は高分化4例, 中, 低分化各2例の何れも腺癌であった.pN2は4例, 肺内転移によるpM1は6例で, うち2例はpN2+pM1であり, これら8例全例にリンパ管侵襲を認めた.腫瘤発見時に小径であっても, 早期に遠隔転移を来す肺癘が存在し得ることを考慮に入れ, 迅速な確定診断を目指して開胸生検も辞さず, 積極的かつ適切な治療法選択が重要と考えられた.
  • 森 有樹秀, 瀧川 宗一郎, 稲垣 克記, 大野 拓也, 種市 靖行, 藤巻 悦夫
    1993 年 53 巻 2 号 p. 216-220
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    手の外科における, チタン製ミニ螺子及びプレートによる内固定の治療経験を報告する.症例は64例 (Herbert screw 44例, Leibinger-System13例, Champy-System7例) であり, 年齢は15歳~55歳, 平均30.8歳であった.これらの内固定材は, 強固な固定と術後早期の可動域訓練が可能な点で優れている.
  • 吉川 裕康, 池内 隆夫, 佐々木 春明, 井口 宏, 甲斐 祥生
    1993 年 53 巻 2 号 p. 221-223
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    75歳, 男性.胃癌精査中に右陰嚢内容の腫大を指摘され当科受診.右精巣腫瘍と診断し右高位精巣摘除術を施行した.組織学的に腫瘍は類表皮嚢胞であった.精巣類表皮嚢胞は稀な疾患で, 自験例は本邦116例目に相当する.良性腫瘍であっても術前に悪性腫瘍が完全に否定できない以上, 精巣摘除術を行ない病理学的検索によって術後の取扱いを決定するべきであると思われる.
  • 小関 博久, 丸山 俊章, 内田 均, 小室 保尚, 神 與市, 藤巻 悦夫
    1993 年 53 巻 2 号 p. 224-227
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチ患者に発生した両側大腿骨頸部のspontaneous fractureの一例を報告した.症例67歳女性.右股関節痛を主訴に来院し, 歩行困難のため入院となる.X線検査では, 初回に見過ごされた骨折が2回目にはGarden III型の骨折として認められた, 人工骨頭置換術を施行したが, その後歩行訓練中に左股関節痛が出現, 右側と同様に2回目のX線検査でGarden III型の骨折が認められたので左側も人工骨頭置換術を施行した.Spontaneous fractureは診断が困難であることが多いが, 初期治療が重要であるため骨萎縮の強い患者が痛みを訴えX線上明らかな変化を認めなくても, 本疾患を念頭において診療にあたるべきである.
  • 流石 恵子, 深沢 千秋, 北川 行夫, 稲垣 昌博, 庄 貞行, 内田 直樹, 倉田 知光, 小林 真一, 嶋田 顕, 西村 有希, 岩瀬 ...
    1993 年 53 巻 2 号 p. 228-234
    発行日: 1993/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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